風紀委員長は××が苦手

乙藤 詩

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混沌を極める2学期

十九話

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なんか空気が重くないか?
姫川は生徒会室に座りながらそう思って、チラッと正木の方を見遣る。

あれから数日後、とうとう生徒会のメンバーと一緒に企画書に目を通す作業が始まった。
大体半数ほどに減らした企画書を互いに用意し、話し合いながら、最終的に30から40の企画に絞っていく。
「これは、残そうか迷った企画なんだが、一応風紀の意見も聞いてからにしようと思って残しておいた。」
そう言いながら、正木が用意したスクリーンに企画書を写していく。10人にもなると流石に机を囲んで一枚の企画書に目を通すのは難しく正木が主体となって次々に企画書を紹介した。
生徒会で選別した企画は正木が、風紀で選別した企画は姫川がそれぞれ担当する事になっていた。
正木は淡々とした様子で企画書を紹介していく。その姿は一見いつもと変わらない様に見えるが、しかし姫川の方に目を向けることは決してなかった。
生徒会のメンバーもいつもだと何かと風紀に噛み付いて来るのに、今日はやけに大人しく皆正木の様子を窺っているのがわかった。
柏木だけが、たまに嫌な視線を寄こしているのが姫川の癇に障る。
選考方法は一つ一つの企画にそれぞれの役員が点数を付け、最終的に点数が高かった企画から選ばれていくシステムだった。
ひたすら企画を正木が紹介し、それに点数をつける時間だけが流れている。風紀のメンバーも空気の重さに気がついているのか、たまに正木に目線を向けたり、メンバー同士で目配せをしながら肩を竦めたりしていた。

一度休憩を挟んだ後、作業を再開して終わる頃には外はすっかり暗くなっていた。
「今日はこの辺にするか。残りはまた明日、よろしく頼む。」
それだけ言うと正木は広げていた書類を集め、片付けを始めた。
ふぅぅ。
他の者たちも重い空気の中での作業がやっと終わり知らず知らずのうちに深い息を吐き出していた。
その様子を見て姫川は正木と話す必要があると感じた。何が原因で正木がピリピリしているのかは分からないが、ただでさえ大変な作業なのだ。
そこにこの重い空気が加わる事は今後の作業効率にも影響してくると考えたからだ。
「おい、正木。」
姫川は正木と話すため声を掛けるが、それを無視する様に正木は生徒会室を後にした。
その様子を気まずそうに他のメンバーも見ている。
正木が出て行ったのを追いかける様に柏木が直ぐに部屋を出て行った。
今の俺の声、聞こえてたよな?
姫川はそんなことを考えながら正木の態度に呆然としていた。
「正木と何かあったの?」
横から佐々木が聞いてくる。他のメンバーも心配そうに姫川を見ていた。
しかし、姫川はいくら考えても正木がそうなった原因が分からなかった。その為姫川は
「いや、別にない。」
と答えることしかできなかった。
そんな風紀のやり取りを心配そうに伊東や流が見ていた。



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