119 / 140
混沌を極める2学期
十七話
しおりを挟む
正木はあの時、姫川の教室で見た光景を忘れられずにいた。
何度思い出しても苛立ちが募る。
あの男の嫌味なまでの笑顔も。簡単に男に触れられる姫川にも腹が立って仕方なかった。
姫川とはあれから顔を合わせていない。顔を合わせるとまた、嫉妬で姫川に詰め寄ってしまいそうだったからだ。
折角進展した関係を自分の醜い嫉妬心で壊したくは無かった。
そんな気持ちを引き摺ったまま、正木は生徒会室で企画書に目を通していた。何日か続いたこの作業もそろそろ大詰めを迎えていた。
流たちも流石にこの作業は骨が折れるようで、連日疲れたような顔をしていたが、今日は正木の普段と違う様子にチラチラとそちらを窺いながら作業を進めていた。
「どうしたんだよ!恭治、元気がないじゃん!」
全く空気を読まない柏木がそう正木に声を掛ける。
「葵、ちょっと今はそっとしとく方が・・・」
慌てて流がいつものように話しかけようとする柏木を制するが、構わず柏木は話を続けた。
「そんな難しい顔してないで、早くこの作業を終わらようって!」
流石の戸田や津田もそんな柏木の様子に顔を引き攣らせた。伊東も嫌なものを見るような目で柏木を見ている。
「皆、お前に気を遣ってんじゃん。早く機嫌を直せよ。」
機嫌の悪い時の正木は、当たらず触らずが1番だと、生徒会のメンバーはこの数ヶ月の付き合いで知っていた。それなのにそんな正木にいつものように話しかける柏木に正直他のメンバーは気が気ではなかった。
「やめなよ。葵。」
「今は静かにした方がいいって。」
小声で戸田と津田が柏木に話しかけるが、
「なんでだよ!空気が悪いまま作業しても楽しくないじゃん。」
と大声で言い返され、その場で脱力した。
その時正木がふと席を立った。いつ怒鳴り出すのかと皆が一旦身構える。
しかし、
「悪い。外の空気を吸ってくる。」
と言ってそのまま生徒会室から出ていってしまった。
「おい、恭治!」
その後ろ姿に柏木が声をかける。
「おれ、ちょっと恭治のところに行ってくるわ。」
正木が出ていった後を直ぐに追いかけようとする柏木に、戸田が声を掛ける。
「葵、今はやめときなって。正木も1人になりたいからああやって出ていったんだし。」
その言葉に他のメンバーも同意を示すように頷いた。
「何言ってんだよ。俺ら友達だぞ。何か悩んでるなら聞いてやるのが友達だろ!」
そう言うと、柏木も正木の後を追うように部屋を出ていった。
はぁぁぁ・・・
流も戸田も津田も、あまりに空気の読めない柏木に脱力する。
1人、伊東だけがその様子をずっと冷めた眼差しで見ていた。そして
「白々しい奴。」
と小声で呟いた。しかし、その呟きに気付いたものは生徒会室にはいなかった。
何度思い出しても苛立ちが募る。
あの男の嫌味なまでの笑顔も。簡単に男に触れられる姫川にも腹が立って仕方なかった。
姫川とはあれから顔を合わせていない。顔を合わせるとまた、嫉妬で姫川に詰め寄ってしまいそうだったからだ。
折角進展した関係を自分の醜い嫉妬心で壊したくは無かった。
そんな気持ちを引き摺ったまま、正木は生徒会室で企画書に目を通していた。何日か続いたこの作業もそろそろ大詰めを迎えていた。
流たちも流石にこの作業は骨が折れるようで、連日疲れたような顔をしていたが、今日は正木の普段と違う様子にチラチラとそちらを窺いながら作業を進めていた。
「どうしたんだよ!恭治、元気がないじゃん!」
全く空気を読まない柏木がそう正木に声を掛ける。
「葵、ちょっと今はそっとしとく方が・・・」
慌てて流がいつものように話しかけようとする柏木を制するが、構わず柏木は話を続けた。
「そんな難しい顔してないで、早くこの作業を終わらようって!」
流石の戸田や津田もそんな柏木の様子に顔を引き攣らせた。伊東も嫌なものを見るような目で柏木を見ている。
「皆、お前に気を遣ってんじゃん。早く機嫌を直せよ。」
機嫌の悪い時の正木は、当たらず触らずが1番だと、生徒会のメンバーはこの数ヶ月の付き合いで知っていた。それなのにそんな正木にいつものように話しかける柏木に正直他のメンバーは気が気ではなかった。
「やめなよ。葵。」
「今は静かにした方がいいって。」
小声で戸田と津田が柏木に話しかけるが、
「なんでだよ!空気が悪いまま作業しても楽しくないじゃん。」
と大声で言い返され、その場で脱力した。
その時正木がふと席を立った。いつ怒鳴り出すのかと皆が一旦身構える。
しかし、
「悪い。外の空気を吸ってくる。」
と言ってそのまま生徒会室から出ていってしまった。
「おい、恭治!」
その後ろ姿に柏木が声をかける。
「おれ、ちょっと恭治のところに行ってくるわ。」
正木が出ていった後を直ぐに追いかけようとする柏木に、戸田が声を掛ける。
「葵、今はやめときなって。正木も1人になりたいからああやって出ていったんだし。」
その言葉に他のメンバーも同意を示すように頷いた。
「何言ってんだよ。俺ら友達だぞ。何か悩んでるなら聞いてやるのが友達だろ!」
そう言うと、柏木も正木の後を追うように部屋を出ていった。
はぁぁぁ・・・
流も戸田も津田も、あまりに空気の読めない柏木に脱力する。
1人、伊東だけがその様子をずっと冷めた眼差しで見ていた。そして
「白々しい奴。」
と小声で呟いた。しかし、その呟きに気付いたものは生徒会室にはいなかった。
応援ありがとうございます!
11
お気に入りに追加
224
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる