風紀委員長は××が苦手

乙藤 詩

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混沌を極める2学期

十五話

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次の日の昼休み、姫川は瀬戸田を校庭裏に呼び出した。教室から一緒に歩いてきた瀬戸田は、トボトボといった感じでついてきており、やはり以前の様な朗らかさはなかった。
「それで何の用事ですか?」
目的地に着いた途端そう口にする瀬戸田の暗い口調に姫川は顔を顰める。
こんな状態の瀬戸田から話が聞けるのか少し不安を感じた。
しかし、そんな気持ちを瀬戸田に気づかれないよう無表情で姫川は瀬戸田と向き合った。
「始業式前に、瀬戸田の様子がおかしかったから、悪いが少し調べさせてもらった。」
単刀直入にそう言うと瀬戸田が俯いた。
「へぇ、風紀委員ってそういうこともやるんですね。人のプライベートを勝手に調べたりするなんて・・・」
姫川に自分の現状を知られたからか、瀬戸田の声は心なしか震えていた。
「悪い・・・その・・・背中に痣もあったから放っておけなくて。」
素直に姫川が謝ると、瀬戸田が涙の溜まった目で姫川を睨んだ。
「先輩が勝手に見たんでしょ!僕は先輩に知られたくないからあの時逃げたんですよ!」
瀬戸田が声を荒げる姿に姫川の胸が痛んだ。
「1人で抱えるのはしんどくないか?俺に協力できることはないか?」
それでも姫川が穏やかな口調を崩さず声を掛ける。すると、途端に瀬戸田が膝から崩れ落ちるように跪き激しく泣き始めた。
「ふぇっ・・・うぅ・・・」
姫川はそんな瀬戸田の側に行き、ゆっくり体を支えると、近くのベンチに2人で座った。
そして瀬戸田が落ち着くまで静かに待った。
段々と落ち着いてきた瀬戸田は、始めは話しにくそうにしていたがやがてゆっくりと口を開いた。
「たった数回ここで話しただけなのに、どうして僕の事を気にしてくれるんですか?」
そんな事を言われるとは思ってなくて、瀬戸田の言葉に姫川は目を丸くした。
「僕はあまり取り柄もないですし、友達だってそこまで多くない。しかもこんな事になって、クラスの友達は僕を避けるようになりました。誰だって火の粉が自分にとぶのは怖いですからね。きっと逆の立場だったら僕もそうしたと思います。それなのに先輩はお節介なくらい僕の事を心配してくれる。僕と先輩の関係なんて、ここで1、2回話した程度の関係ですよ。」
「あぁ、そうだな。」
瀬戸田の話を静かに姫川は肯定した。
「でも、俺はその1、2回でも友達になれたと思ってたんだが、それは俺の勘違いだったか?」
姫川の言葉に瀬戸田がバッと顔を上げた。先程まで泣いていたからか若干腫れた目で姫川を見つめ返す。
「何があったか教えてくれないか?俺に出来ることがあれば力になりたいんだ。」
そう真摯に言う姫川に瀬戸田の目からまた涙が流れ始めた。
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