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混沌を極める2学期
十二話
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眠い・・・
学校での休み時間、姫川は猛烈な眠気と戦っていた。
今日で企画書に目を通し始めて5日が経過していた。皆で協議をしながら企画を決めていくので、予想以上に時間がかかっていた。精神的にも肉体的にも辛く、風紀のメンバーも最近ではげっそりとした顔で企画書に目を通していた。
姫川はクーラーの効いた教室で微睡むように、机に伏した。
目を瞑ると途端に姫川は小さく寝息を立て始めた。
姫川が人前で眠ることなど殆どないので、他の生徒が姫川の方をチラチラ見ていた。
暫くすると、姫川は頭を優しく撫でられる感覚で、意識を浮上させた。こんな事を自分にするのは1人しかおらず、姫川はその人物の名を呼びながら、ゆっくりと顔を上げた。
「正木?何か用か?」
しかし顔を上げた先の人物を見て姫川は一瞬で固まった。
「えっ?正木にはこういう事いつもしてもらってるの?」
ニヤニヤと何を考えているのかわからない顔で山田が姫川を見ていた。
「触るな。」
姫川は未だに自分の頭に置いている山田の手を乱暴に払い除けた。
「酷いな。俺の事はそんなに邪険に扱って。」
大して気にしてない様子で山田が言う。それどころか山田を睨みつける姫川を見て笑い始めた。
「くくっ、手負の猫かよ。そんなに警戒心剥き出しにして疲れねぇ?」
「お前が関わってさえこなきゃ疲れもしない。」
「手厳しいな・・・」
そう言うと山田はグッと姫川に顔を近づけた。
「そんなつれないこと言うなよ。俺とお前の仲だろ。」
吐息がかかる程近づいたその距離に姫川が顔を歪ませる。その反応を見て山田が笑い出した。
「ははっ!面白い顔。」
人を馬鹿にした様に笑う山田に姫川の双眸が厳しくなった。
「そんな怖い顔するなって。冗談だよ。」
とても自分と仲良くしようとする態度ではないと思いつつ、姫川がため息を吐いた。
「お前、誰に頼まれてこんな事してるんだよ?」
目を丸くしてとぼけた様な顔をする山田に姫川の苛立ちが募る。
「別に。誰に言われた訳でもないしー。言ったじゃん。お前と仲良くなりたいだけだって。」
そう言って山田が姫川の顔に手を伸ばそうとした。それを見た姫川の体が強張る。その時、次の授業を知らせるチャイムがなった。
「じゃあ、また来るわ。」
山田は一瞬教室のドアの方に目線を向けると、ニヤッと嫌な笑みを浮かべて、直ぐに腕を引っ込めてあっさり自分の席へと戻っていく。
そんな山田の様子を姫川はただ目で追うことしかできなかった。
正木は姫川の教室の近くに来ていた。最近は企画書の選定で殆ど姫川とも顔を合わせられていない正木は少しでも会えないかと、授業の合間に教室まで足を運んでいたのだ。
お目当ての教室を覗くと直ぐに目的の人物を見つけた。
姫川は机に伏して、寝ている様だった。
あいつも疲れてるんだな。
教室で寝こける姫川を可愛いと思いながら声を掛けようとすると、1人の男が姫川に近づいた。
そして姫川の頭を撫で始めた。
その光景に正木は目を瞠る。
驚きと焦りと、少しの苛立ちを感じながらそれでも2人から目を離すことが出来ずにいた。
男が頭を撫でていることに気づいた姫川が顔を上げる。そして直ぐにその男の手を払った。
その事に少しホッとしたが、相変わらず2人の距離は近い。
正木の立ち位置からだと男の顔はよく見えるが、姫川の顔は丁度死角で、どんな顔で話しているのか、何を話しているのかさっぱり分からなかった。
それでも唯ならぬ雰囲気なのはわかる。
周りの生徒も視線を逸らすことが出来ず2人のやり取りを聞いていた。
不意に男の顔が近づき耳元で姫川に話しかけている。
その光景を見て、正木はカッと怒りが込み上げてきた。
風紀のメンバーと自分以外で姫川が親しくしている人物を正木は知らなかった。しかし、正木が見ている2人はただのクラスメイトと呼ぶには距離が近すぎた。
正木はそれ以上その光景を見ていたくなくて、静かにその場を後にした。
しかし、目を離した後も、2人の姿が頭から離れない。そして何より、姫川を前に楽しそうに話すあの男が正木には許せなかった。
学校での休み時間、姫川は猛烈な眠気と戦っていた。
今日で企画書に目を通し始めて5日が経過していた。皆で協議をしながら企画を決めていくので、予想以上に時間がかかっていた。精神的にも肉体的にも辛く、風紀のメンバーも最近ではげっそりとした顔で企画書に目を通していた。
姫川はクーラーの効いた教室で微睡むように、机に伏した。
目を瞑ると途端に姫川は小さく寝息を立て始めた。
姫川が人前で眠ることなど殆どないので、他の生徒が姫川の方をチラチラ見ていた。
暫くすると、姫川は頭を優しく撫でられる感覚で、意識を浮上させた。こんな事を自分にするのは1人しかおらず、姫川はその人物の名を呼びながら、ゆっくりと顔を上げた。
「正木?何か用か?」
しかし顔を上げた先の人物を見て姫川は一瞬で固まった。
「えっ?正木にはこういう事いつもしてもらってるの?」
ニヤニヤと何を考えているのかわからない顔で山田が姫川を見ていた。
「触るな。」
姫川は未だに自分の頭に置いている山田の手を乱暴に払い除けた。
「酷いな。俺の事はそんなに邪険に扱って。」
大して気にしてない様子で山田が言う。それどころか山田を睨みつける姫川を見て笑い始めた。
「くくっ、手負の猫かよ。そんなに警戒心剥き出しにして疲れねぇ?」
「お前が関わってさえこなきゃ疲れもしない。」
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そう言うと山田はグッと姫川に顔を近づけた。
「そんなつれないこと言うなよ。俺とお前の仲だろ。」
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「そんな怖い顔するなって。冗談だよ。」
とても自分と仲良くしようとする態度ではないと思いつつ、姫川がため息を吐いた。
「お前、誰に頼まれてこんな事してるんだよ?」
目を丸くしてとぼけた様な顔をする山田に姫川の苛立ちが募る。
「別に。誰に言われた訳でもないしー。言ったじゃん。お前と仲良くなりたいだけだって。」
そう言って山田が姫川の顔に手を伸ばそうとした。それを見た姫川の体が強張る。その時、次の授業を知らせるチャイムがなった。
「じゃあ、また来るわ。」
山田は一瞬教室のドアの方に目線を向けると、ニヤッと嫌な笑みを浮かべて、直ぐに腕を引っ込めてあっさり自分の席へと戻っていく。
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正木は姫川の教室の近くに来ていた。最近は企画書の選定で殆ど姫川とも顔を合わせられていない正木は少しでも会えないかと、授業の合間に教室まで足を運んでいたのだ。
お目当ての教室を覗くと直ぐに目的の人物を見つけた。
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あいつも疲れてるんだな。
教室で寝こける姫川を可愛いと思いながら声を掛けようとすると、1人の男が姫川に近づいた。
そして姫川の頭を撫で始めた。
その光景に正木は目を瞠る。
驚きと焦りと、少しの苛立ちを感じながらそれでも2人から目を離すことが出来ずにいた。
男が頭を撫でていることに気づいた姫川が顔を上げる。そして直ぐにその男の手を払った。
その事に少しホッとしたが、相変わらず2人の距離は近い。
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正木はそれ以上その光景を見ていたくなくて、静かにその場を後にした。
しかし、目を離した後も、2人の姿が頭から離れない。そして何より、姫川を前に楽しそうに話すあの男が正木には許せなかった。
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