風紀委員長は××が苦手

乙藤 詩

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混沌を極める2学期

十話

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姫川は風紀委員室で頭を抱えていた。今は放課後だが、日中の授業も殆ど上の空で、気がつけば昨日の正木との行為を思い出していた。
何であんな事をっ!
後悔が自分の中に押し寄せる。流されてしまったとはいえ、自らが正木のモノを握り達するなどという行為をしてしまった自分を姫川は未だに信じられない。
不思議と嫌悪感はなく、代わりにいつもは見せない正木の眉根を寄せた野生的で魅惑的なその顔に魅入ってしまっていた。
昨日の正木の顔を思い浮かべ、姫川の心臓がドクリッと音を立てた。
それを誤魔化すように姫川は首を左右に振った。
そして今日、何度目かもわからない長いため息を漏らした。
「今までの幸運が全部逃げそうなため息だな。」
佐々木が部屋に入ってきたことに、その声を聞いて初めて気がついた。
「何?また問題事?」
佐々木が姫川に近寄りながら話しかけてくる。
「いや、別に。プライベートな事だ。」
「へぇ、プライベートねぇ。それって正木の事だったりして。」
鋭い佐々木の言葉に姫川の目が驚きに見開かれた。
「なっなっ何を・・・」
焦って意味のある言葉を発せなくなった姫川を見て、佐々木が吹き出す。
「ははっ!わかりやすっ!いつも仏頂面なのに、そんな反応したらそうですって言ってるようなもんだからね。昨日たまたま正木が姫川の部屋に入るのを見たんだよ。まさかとは思ったけどまさかねぇ・・・」
含みのある佐々木の言い方に姫川は目線を下げ、赤くなる顔を見られないようにするだけで必死だった。
「別に好き同士ならいいじゃん。そんなに恥ずかしがらなくても。この学校では珍しいことでもないよ。まぁ相手が正木っていうのには驚いたけど。」
何でもないことの様にいう佐々木を、姫川が恨めしそうな顔で見る。
「別に好き同士っていう関係じゃない。」
そう言うと佐々木は目を丸くした。
「えっ?付き合ってもないのに、そんな恥ずかしがる様なことをしちゃうなんて、姫川って結構穢れてるんだね。」
「穢れてる・・・」
佐々木の言ったことに大きなショックを受けた姫川が呆然と言葉を繰り返した。
今まで中学の友達などに奥手奥手とは言われてきたが、穢れてるなどと言われたのは初めてだった。
あからさまにショックを受けている姫川を見て佐々木は揶揄いすぎたと反省した。
なんとなく今までの姫川の様子からこう言った話題が苦手なのは知っていたが、あまりに過剰に反応する姫川が面白くて遂揶揄ってしまった。
しかし、結果姫川は目の前で佐々木に穢れてると言われて、魂が抜けた様になっている。
「言い過ぎた。悪かったよ。もし正木が無理に姫川に何かしてるんだったら、俺も力になるよ。」
佐々木の言葉に何とか気持ちを立て直した姫川が口を開いた。
「いや、大丈夫だ。これはきちんと自分で答えを出さないといけないことだから。」
正木の事を思い出しているのか、その表情はいつもより優しく見えて、佐々木は苦笑する。
案外姫川も正木のことが好きになってるんじゃないのか。
姫川のその表情を見て佐々木はそう思わずにはいられなかった。




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