風紀委員長は××が苦手

乙藤 詩

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混沌を極める2学期

六話

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暫くの沈黙の後、姫川は何か言わなければと苦し紛れに口を開いた。
「お前、トマトが嫌いなのか?この歳になって好き嫌いなんてやめといた方がいいぞ。」
正木の弁当に一つだけ残っているミニトマトを見ながら姫川は言った。
自分でも何を言っているのかと思ったが、姫川は今この状況で思いつく話題がそれしかなかった。
「はぁ?真剣な顔で何を言い出すのかと思えば・・・本当にそのことを言いたかったのか?」
「あぁ。」
姫川の短い答えに正木がガクッと脱力したのが分かった。正木なりに自分を本気で心配してくれていたことに姫川は少し心が痛んだ。
「はぁ、そんな顔で好き嫌いを指摘されたのは初めてだ。トマトは別に嫌いな訳じゃない。好きじゃないだけだ。」
若干呆れながら正木はそう答えると、姫川がクスッと笑った。
「それはどういう言い訳だよ。食べれないんだから嫌いでいいだろ。」
柔らかい顔でそう指摘する姫川を正木は暫し見つめて、そして何かを思いついたようにニヤッと笑った。その笑顔に姫川の顔は一気に引き攣った。
「お前、今よくないことを考えているだろう?」
姫川が言うと、正木は余裕の顔を崩さず姫川に言葉を返す。
「俺はトマトは好きじゃないけど頑張ったら食べれるんだよ。でも、そうだな・・・姫川が協力してくれるならもっと美味しく食べれるかも。」
協力という言葉に姫川の体が反応した。こういう時の正木は碌なことをしないと、姫川は今までの経験で知っていたからだ。
「いい、もう残していいから。」
「まぁ、そう言うなって。」
慌てた姫川の言葉を正木が直ぐに否定した。そして、ミニトマトを口に含むと正木は姫川に近づいてきた。
後退るが直ぐに腕を取られ一気に距離を詰められる。ヒッと姫川の喉が鳴る。
しかし正木はお構いなしに姫川の口を塞いだ。塞ぐ直前に正木はトマトを噛んだのか、口付けた瞬間、トマトの果汁が姫川の口の中にも広がった。
「ふっんんっ!」
初めての感覚にカーッと体が熱くなるのを感じる。なんとか正木を退かそうと肩を押すが、いつ間にか腰にまでしっかり腕が回されていて、逃げ出すことは出来なかった。
舌が絡み合い、潰れたトマトが互いの口内を行き来する。飲み下せない唾液と果汁が姫川の口の端から流れ、顎を伝った。
「やめっ!んんっ・・・はぁ・・・」
口内を好きなように蹂躙され、段々と下半身に熱が集まることに姫川は焦って声を上げようとするが、正木はそれを許さなかった。角度を変え、巧みに舌を使って姫川を翻弄する。
そして唇を離した頃には、姫川は熱に浮かされたような顔で、唇が濡れ惚けていた。
「ははっ、エロい顔。こうやって食べさせてくれるなら、トマトも好きになりそうだ。」
そう姫川の頬を撫でながら言う正木の言葉は姫川には届いていなかった。
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