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混沌を極める2学期
四話
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風紀委員室に集まった4人は姫川に呼ばれて、デスクの前に集まっていた。
姫川の重苦しい雰囲気に他の者も皆口を閉ざしていた。
「来て早々集まってもらってすまない。あっという間に2学期が始まってしまったな。歳明治の文化祭は1年を通しても1番大きい行事だ。大変だとは思うが、このメンバーなら乗り越えられると思ってる。だから2学期もよろしく頼む。」
最初に姫川は当たり障りのない事柄から話し始めた。
それを聞いて三田と牧瀬はあからさまにホッとした顔をした。姫川の雰囲気から何か良くない話があると思ったのだろう。しかし、次の姫川の言葉で2人の顔が固まった。
「前置きはこれくらいにして、本題なんだが・・・」
姫川はそう言いなが、チラッと佐々木の方を見た。佐々木は真剣な顔で一度姫川に頷いて見せた。
それを見た姫川が重たくなった口を開いた。
「この前、牧瀬が襲われた祭りの一件はおそらく柏木が関わっている。」
「えっ?」
「へっ?」
「あいつが何を考えているのかはわからないが、1学期の後半から少しずつおかしな行動が目立ってきていた。まだ何も確証がないからお前達には黙っているつもりだったが、祭りで牧瀬が襲われたことでそうもいかなくなった。」
「ちょっと姫川・・・三田と牧瀬が話についていけてないよ。」
佐々木の言葉で姫川が2人を見ると目を丸くしたまま固まっていた。
「えっ?柏木が?えっ?なんで?」
全く状況が掴めておらず同じ言葉を繰り返す三田に対して、牧瀬は自分を抱きしめるように腕を回して少し震えていた。
祭りの日のことを思い出しているのかもしれないと姫川は思った。
庄司だけが何を考えているかわからない顔で静かに話を聞いていた。
「悪い。混乱させるつもりも怖がらせるつもりもなかったんだが。少し唐突すぎたな。」
姫川が2人を心配したように声を掛けた。
「えっ?柏木ってあの柏木だよな?他にいるのか?他の柏木の話?」
未だに見事に混乱している三田に、少し同情しながら姫川が再び口を開く。
「いや、あの転校生の柏木だ。俺も最初は信じられなかったが、あの姿は仮の姿だと思っていい。何が目的かは分からないがその為に自分の本当の顔を隠している。本当はずる賢くて、冷静で底が知れない男だ。」
姫川の言葉に三田がゴクっと唾を呑んだ。牧瀬も顔を青くしている。
「とにかくこれから柏木は生徒会で正木達と共に活動するから必然的に俺たちに関わることも多くなるだろう。あいつらの前で本性を見せることはないと思うが、くれぐれも気をつけてほしい。1人で柏木と対峙したり関わろうとしないでくれ。」
取り敢えず言いたいことは言った姫川が三田達の方を向く。
庄司は相変わらずだったが、残りの2人は呆然とした様子だった。姫川はそんな2人を見て少し顔を曇らせた。
「俺の言うこと、信じれないかもしれないが・・・」
少し寂しそうにも見えるその顔に慌てて2人が言葉を発する。
「違う。姫川の事を信じてないわけじゃないよ。」
「そうだよ。只ちょっと混乱しただけだよ。その、急な話だったから・・・姫川くんが僕たちに嘘を言ったりしないことはちゃんと分かってるから。」
横で庄司も静かに頷いていた。
「そうか・・・ありがとう。」
みんなが自分を疑わず信じてくれた事が姫川には嬉しかった。
この事を話したからといって、柏木のことが解決するわけではなかったが、知ってくれている人間が近くに居ると知れただけでも姫川の気持ちは軽くなった。
姫川の重苦しい雰囲気に他の者も皆口を閉ざしていた。
「来て早々集まってもらってすまない。あっという間に2学期が始まってしまったな。歳明治の文化祭は1年を通しても1番大きい行事だ。大変だとは思うが、このメンバーなら乗り越えられると思ってる。だから2学期もよろしく頼む。」
最初に姫川は当たり障りのない事柄から話し始めた。
それを聞いて三田と牧瀬はあからさまにホッとした顔をした。姫川の雰囲気から何か良くない話があると思ったのだろう。しかし、次の姫川の言葉で2人の顔が固まった。
「前置きはこれくらいにして、本題なんだが・・・」
姫川はそう言いなが、チラッと佐々木の方を見た。佐々木は真剣な顔で一度姫川に頷いて見せた。
それを見た姫川が重たくなった口を開いた。
「この前、牧瀬が襲われた祭りの一件はおそらく柏木が関わっている。」
「えっ?」
「へっ?」
「あいつが何を考えているのかはわからないが、1学期の後半から少しずつおかしな行動が目立ってきていた。まだ何も確証がないからお前達には黙っているつもりだったが、祭りで牧瀬が襲われたことでそうもいかなくなった。」
「ちょっと姫川・・・三田と牧瀬が話についていけてないよ。」
佐々木の言葉で姫川が2人を見ると目を丸くしたまま固まっていた。
「えっ?柏木が?えっ?なんで?」
全く状況が掴めておらず同じ言葉を繰り返す三田に対して、牧瀬は自分を抱きしめるように腕を回して少し震えていた。
祭りの日のことを思い出しているのかもしれないと姫川は思った。
庄司だけが何を考えているかわからない顔で静かに話を聞いていた。
「悪い。混乱させるつもりも怖がらせるつもりもなかったんだが。少し唐突すぎたな。」
姫川が2人を心配したように声を掛けた。
「えっ?柏木ってあの柏木だよな?他にいるのか?他の柏木の話?」
未だに見事に混乱している三田に、少し同情しながら姫川が再び口を開く。
「いや、あの転校生の柏木だ。俺も最初は信じられなかったが、あの姿は仮の姿だと思っていい。何が目的かは分からないがその為に自分の本当の顔を隠している。本当はずる賢くて、冷静で底が知れない男だ。」
姫川の言葉に三田がゴクっと唾を呑んだ。牧瀬も顔を青くしている。
「とにかくこれから柏木は生徒会で正木達と共に活動するから必然的に俺たちに関わることも多くなるだろう。あいつらの前で本性を見せることはないと思うが、くれぐれも気をつけてほしい。1人で柏木と対峙したり関わろうとしないでくれ。」
取り敢えず言いたいことは言った姫川が三田達の方を向く。
庄司は相変わらずだったが、残りの2人は呆然とした様子だった。姫川はそんな2人を見て少し顔を曇らせた。
「俺の言うこと、信じれないかもしれないが・・・」
少し寂しそうにも見えるその顔に慌てて2人が言葉を発する。
「違う。姫川の事を信じてないわけじゃないよ。」
「そうだよ。只ちょっと混乱しただけだよ。その、急な話だったから・・・姫川くんが僕たちに嘘を言ったりしないことはちゃんと分かってるから。」
横で庄司も静かに頷いていた。
「そうか・・・ありがとう。」
みんなが自分を疑わず信じてくれた事が姫川には嬉しかった。
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