風紀委員長は××が苦手

乙藤 詩

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混沌を極める2学期

三話

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その日の放課後、姫川は風紀委員室に来ていた。
佐々木と話して、今日は柏木の事を他のメンバーにも伝えるつもりでいた。
柏木の事を話してどういう反応をするか、若干の緊張感を抱きながら、自分の席で皆が来るのを待つ。
すると、そこに清木がやってきた。
他のメンバーがいないことを確認すると目を輝かせながら姫川に近寄ってくる。
「お疲れ様です!今朝の校門での姿も厳しい、凛々しい美しい姿で、とても感動しました。ここから先姫川先輩に手取り足取り教えていただけると思うと自分はとても幸せです。」
他のメンバーの前では無表情の清木も姫川と2人きりになると何故か性格が一変する。
俺の周りは変わった奴ばかりだな。
清木の二面性を目の当たりにして、そんな事を考えながら姫川が静かに口を開く。
「手取り足取りはともかく、この数ヶ月で清木には覚えてもらうことが山程ある。俺だけとは言わず他のメンバーからも色々なことを学べ。」
清木は姫川に名前を呼ばれた事に目を輝かせながら首を縦に振る。
その姿に姫川は軽く溜息を吐いた。
「俺といる時と、他の奴がいる時と随分態度が違わないか?」
姫川が疑問に思っている事を口にすると直ぐに清木から答えが返ってきた。
「僕はずっと、姫川先輩を尊敬していたので先輩の前では自分の気持ちを抑えきれませんが、他の人には先輩みたいに威厳を持って接したいと思っています。」
殆どの生徒から嫌われていると思っていた姫川はこんな生徒がいたことに驚きを隠せなかった。しかしそれと同時に自分を尊敬する目の前の男の存在に酷く苦しい気持ちになる。
「俺のことをそんな風に見ない方がいい。こんな態度のせいで、俺のことを嫌う生徒も多い。お前は俺なんか見習わず、三田や佐々木のような人物を目指した方がいいと思うぞ。」
姫川自身も虚勢はって必死で冷徹でいようと努めている。その苦しさを清木にも味わせたくなかった。
カシャッ
その時また清木の携帯から音がした。その行動に姫川はギロっと清木を睨んだ。
「人が真剣に話しているときにどういうつもりだ?」
凶悪な顔で清木に問うが、当の本人は相変わらず目を輝かせたままだった。
「僕のことを心配して言葉を掛けてくれる先輩が尊すぎて遂。すみません。」
特に反省した様子のない清木に姫川は頭を抱えた。
「あの、またたまにこうして写真を撮ってもいいですか?」
「俺がいいと言うと思うのか?」
疲れたように姫川が返せば、
「じゃあ、やっぱり盗撮か。」
と清木が呟いていた。
最早姫川の前で平気で写真を撮っている行為を盗撮とは言わない気がしたが、反論する元気も失せた姫川はそのまま黙っていた。
その時風紀委員室のドアが開いて、佐々木や牧瀬が入ってきた。
清木との会話で一瞬忘れていたが、これから柏木の話を他の風紀のメンバーに話すことを姫川は思い出した。
「悪いが、これから少し大事な話があるんだ。少しだけ外で待っといてもらっていいか?」
姫川が清木に話しかけると、もう能面のような顔に戻っていた。
「はい、分かりました。では30分ほどしたら戻ってきてもいいでしょうか?」
先程までの態度が嘘だったかのように、淡々と話す清木の姿に姫川は若干面食らう。
「あぁ、頼む。」
そう短く返すと、清木は姫川に一礼して出て行った。
それから程なくして、三田や庄司も集まり風紀のメンバーが一同に部屋に集まった。
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