風紀委員長は××が苦手

乙藤 詩

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2学期までの1週間

五話

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「結果から言えば、この1週間の柏木の様子に怪しい所はなかったよ。」
思っていた答えと違う佐々木の言葉に姫川が眉を寄せる。
「どう言う事だ?じゃあ俺に話なんてないんじゃないのか?」
自分に何を言おうとしているか判らず少し強い口調で言葉を返す姫川を、まあまあと宥めてから佐々木が続けた。
「だから直接的には怪しい所はなかったんだって。」
「直接的には?」
「ああ、誰かを陥れたり、傷つけたりとかそんなのはなかったよ。でも、あいつの信者が増えてる事はわかった。多分成績で1位を取った事で、今まで興味を示さなかった奴らも柏木の取り巻きになってる。こうなると今まで目を光らせてた、生徒会の親衛隊達も下手に手出し出来なくなるだろうな。」
2学期から柏木は生徒会の活動をする事を他の生徒も勿論知っている。今までは生徒会に絡む只の一生徒にすぎなかったが、それが生徒会に入るとなると、途端に周りからの嫌がらせや、口出しは少なくなる事が予想できた。
「そうなると、あいつは好きな様に動く事ができるわけか。」
段々、頭が痛くなってくる気がして、姫川は無意識に額を押さえた。
「あと、あいつの親衛隊が発足しそうだよ。」
「はっ?」
佐々木の言葉に姫川が目を開いて、間抜けな声を出した。
「2年で柏木と同じクラスの立野翔とかいう奴が発起人だ。まだ、正式には認められていないが、着実にメンバーを増やしてる。」
「親衛隊って•••いくら何でも早すぎやしないか?まだ、生徒会に入ってもいないのに。」
通常親衛隊は3年に上る前、各役員が出揃った所で発足される。それが今となると姫川には嫌な予感しかしなかった。
「取り立てて変な動きはなかったけど、この感じはなんか匂うよね。」
佐々木の言葉が嫌にハッキリ姫川の頭に響いた。
「でも、俺が観察してた感じだと姫川が言うような二面性はなかったけどな。始終何も考えてない馬鹿そうな感じだったけどね。」
姫川は昨日の出来事を思い出しながら忌々しげに佐々木に言った。
「あいつ、つけ回すのをやめさせろって俺に言ってきた。佐々木があいつのこと探ってた事に気づいてたよ。」
姫川の言葉に佐々木が息を呑むのがわかった。
「えっ?そんな素振り一つもなかったけど•••いつそんな話したの?」
佐々木の口ぶりは明らかに動揺しているようだった。生徒の調査や親衛隊の動向チェックは佐々木が得意とする所だった。それをあっさり柏木に見破れた事に驚きを隠せない様子だった。
「昨日、スーパーに行ったらたまたま会って、そこで言われた。あと風紀委員のプライベートな予定をあまり周りに話さない方がいいって。」
「はっ?それって•••」
佐々木の声が心なしか震えている。
「あぁ、祭りで襲ってきた奴らを、けしかけたのはおそらく柏木だという事だ。」
「•••」
佐々木も流石に次の言葉が出てこなかった。真剣な顔で暫し、姫川と視線を合わせるのだった。
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