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2学期までの1週間
二話
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姫川は興味がなくなった惣菜達をぼーっと眺めた後、日用品を少し買いスーパーを出る。
さっきの出来事を暫く考えていたこともあり、予想以上にスーパーに滞在してしまっていた。
姫川が外に出ると、入り口の近くに柏木が1人で立っていた。辺りを見回しても正木の姿は見えない。
これ以上1人で関わりたくないと思った姫川は柏木の横を無言で通り過ぎた。その間にも柏木の視線が痛いくらい姫川に突き刺さる。そして、完全に柏木に背を向けた瞬間、
「なぁ、佐々木に言っといてよ。俺の事をつけ回すのはやめてって。」
と言った。
驚いて、姫川が振り返るとこちらをジーッと見つめる柏木と目が合った。
「姫ちゃんだろ?佐々木に俺のことを探らせてるの。もう関わるなって俺言ったよな?」
モジャモジャ頭にビン底眼鏡という可笑しな見た目なのに、柏木からなぜか物凄い圧を感じて姫川が息を呑む。
「そっちがその気なら、俺も反撃しちゃっていいんだよね。」
悪意を隠そうともしなくなった柏木に、姫川は唇を噛み締める。
「お前から吹っかけてきたんだろ。」
絞り出すように姫川が言うと、
「えっ?何のこと?」
と柏木が惚けたような声を出した。その様子に我慢できなくなった姫川が
「祭りで牧瀬が襲われかけたんだ。お前があの男達に何か言ったんだろ!」
と大声で柏木に言い寄った。今にも飛びかからん勢いの姫川を見ても、柏木はケロッとしていた。それどころか楽しそうにニヤニヤと笑い始めた。
「酷いなぁ。俺は何もしてないのに。そうやって疑われるのは気分が良くないよ。」
どこまでも惚ける柏木を射殺さんばかりに姫川が睨みつける。
「まぁ、でも一つ忠告しといてあげるよ。」
そう言うと柏木が姫川に近づいてきた。姫川が驚いて身を引こうとすると、柏木に腕を掴まれる。
「風紀の夏休みの予定とか、何でもかんでもベラベラ周りに喋るのはやめた方がいいと思うよ。そうでなくても姫ちゃん達の事を良く思ってない人間はこの学校にいっぱいいるんだからさ。」
耳元で囁かれるその言葉にゾワッと鳥肌がたつ。
急いで、姫川は距離を取り、柏木の吐息がかかった耳を堪らず手で押さえる。
先程の柏木の口振りから、やはり祭りの件はこの男が関わっていると姫川は核心した。
「風紀の人間にこれ以上手を出したら許さないからな。」
姫川は低い声で柏木にそう言った。柏木は相変わらず気持ち悪い笑みを浮かべている。
「酷いな。俺は姫ちゃんを心配しているだけなのに。」
白々しいその言葉に姫川はチッと舌打ちをした。
その時、
「悪い悪い。肝心のトイレットペーパーを買うのを忘れるなんてな。」
と間抜けな事を言いながら、正木がスーパーから出てきた。
姫川はこれ以上柏木と話していたくなくて、正木に何を言うでもなく直ぐに背を向けて歩き出した。
「また揉めたのか?」
正木が心配そうに柏木に尋ねているのが聞こえる。
それに柏木が
「別に。」
と返していた。
姫川は2人からだいぶ離れた所で堪らずしゃがみ込んだ。柏木と対峙するたびに心が磨耗していく。
クソッ
思うように柏木に言い返せなかった自分も、相手の圧に少し恐怖を感じてしまった自分も情けなくて許せなかった。
しかし、いつまでもそうしている訳にもいかず姫川はゆっくりと立ち上がると、どっと疲れた体を引きずって寮へと戻っていった。
さっきの出来事を暫く考えていたこともあり、予想以上にスーパーに滞在してしまっていた。
姫川が外に出ると、入り口の近くに柏木が1人で立っていた。辺りを見回しても正木の姿は見えない。
これ以上1人で関わりたくないと思った姫川は柏木の横を無言で通り過ぎた。その間にも柏木の視線が痛いくらい姫川に突き刺さる。そして、完全に柏木に背を向けた瞬間、
「なぁ、佐々木に言っといてよ。俺の事をつけ回すのはやめてって。」
と言った。
驚いて、姫川が振り返るとこちらをジーッと見つめる柏木と目が合った。
「姫ちゃんだろ?佐々木に俺のことを探らせてるの。もう関わるなって俺言ったよな?」
モジャモジャ頭にビン底眼鏡という可笑しな見た目なのに、柏木からなぜか物凄い圧を感じて姫川が息を呑む。
「そっちがその気なら、俺も反撃しちゃっていいんだよね。」
悪意を隠そうともしなくなった柏木に、姫川は唇を噛み締める。
「お前から吹っかけてきたんだろ。」
絞り出すように姫川が言うと、
「えっ?何のこと?」
と柏木が惚けたような声を出した。その様子に我慢できなくなった姫川が
「祭りで牧瀬が襲われかけたんだ。お前があの男達に何か言ったんだろ!」
と大声で柏木に言い寄った。今にも飛びかからん勢いの姫川を見ても、柏木はケロッとしていた。それどころか楽しそうにニヤニヤと笑い始めた。
「酷いなぁ。俺は何もしてないのに。そうやって疑われるのは気分が良くないよ。」
どこまでも惚ける柏木を射殺さんばかりに姫川が睨みつける。
「まぁ、でも一つ忠告しといてあげるよ。」
そう言うと柏木が姫川に近づいてきた。姫川が驚いて身を引こうとすると、柏木に腕を掴まれる。
「風紀の夏休みの予定とか、何でもかんでもベラベラ周りに喋るのはやめた方がいいと思うよ。そうでなくても姫ちゃん達の事を良く思ってない人間はこの学校にいっぱいいるんだからさ。」
耳元で囁かれるその言葉にゾワッと鳥肌がたつ。
急いで、姫川は距離を取り、柏木の吐息がかかった耳を堪らず手で押さえる。
先程の柏木の口振りから、やはり祭りの件はこの男が関わっていると姫川は核心した。
「風紀の人間にこれ以上手を出したら許さないからな。」
姫川は低い声で柏木にそう言った。柏木は相変わらず気持ち悪い笑みを浮かべている。
「酷いな。俺は姫ちゃんを心配しているだけなのに。」
白々しいその言葉に姫川はチッと舌打ちをした。
その時、
「悪い悪い。肝心のトイレットペーパーを買うのを忘れるなんてな。」
と間抜けな事を言いながら、正木がスーパーから出てきた。
姫川はこれ以上柏木と話していたくなくて、正木に何を言うでもなく直ぐに背を向けて歩き出した。
「また揉めたのか?」
正木が心配そうに柏木に尋ねているのが聞こえる。
それに柏木が
「別に。」
と返していた。
姫川は2人からだいぶ離れた所で堪らずしゃがみ込んだ。柏木と対峙するたびに心が磨耗していく。
クソッ
思うように柏木に言い返せなかった自分も、相手の圧に少し恐怖を感じてしまった自分も情けなくて許せなかった。
しかし、いつまでもそうしている訳にもいかず姫川はゆっくりと立ち上がると、どっと疲れた体を引きずって寮へと戻っていった。
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