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高校最後の夏休み
二十九話
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牧瀬を学校まで送り届けた姫川は、そのまま他のメンバーが帰って来るのを待とうとした。
祭りも終わりに近づき、駅までの道を歩く人がごった返し始めていた。
「あの、姫川くんはもしかして皆にさっきの事を話すためにここに残ってるの?」
牧瀬が心配そうな顔で姫川に尋ねる。
「あぁ、中途半端に話しただけだからな。あいつらも今頃不安に思ってるだろ。」
その言葉を聞いた牧瀬は意を決したように姫川に言った。
「姫川くんのそういう誠実なところ、とってもかっこいいよ。でも姫川くんはまた家に戻るんだろ?だったらこの人混みがあるうちに家に帰った方がいいよ。庄司くん以外は今日は寮に戻るから僕たちは大丈夫だけど、その、道中とかあいつらに襲われないか心配で・・・」
純粋に自分の事を心配してくれている牧瀬に姫川は温かい気持ちが込み上げる。
「あの、僕でよければ皆にもきちんと説明しとくし、あっ、でも僕じゃ頼りないかもしれないけど。」
あたふたとしながら話す牧瀬に姫川が双眸を細める。
「いや、頼りにしてるよ。ありがとう。じゃあ、悪いけどここは任せてもいいか?」
姫川が自分を頼ってくれたという事実に牧瀬の目が輝く。
「うん。もちろんだよ。庄司くんが来たら、直ぐに家に帰るように言うし、佐々木くん達にも事情をきちんと説明するよ。」
少し胸を張った牧瀬が答える。先程自分が1番怖い目に遭っただろうに、それでも姫川や仲間の安全を考えられる牧瀬を姫川は素直に尊敬した。
「あぁ、助かるよ。でもあまり門の付近でウロウロするなよ。またあいつらに見つかったら大変だ。」
姫川の言葉に一瞬牧瀬の顔が歪む。あの時の怖さを思い出したのだろう。
「本当に1人で大丈夫か?」
姫川が心配して尋ねると、
「うん、大丈夫だよ。僕に任せて。姫川くんも気をつけて家に帰ってね。」
直ぐに笑顔を取り戻した牧瀬が答えた。
姫川は後ろ髪を引かれながらも、牧瀬の気持ちを汲んで家路につくことにした。
牧瀬に後のことを託す。今までの姫川なら考えられない行動であったが、それだけ姫川が風紀委員の仲間を信頼している証でもあった。
姫川は駅に着いたが、人がごった返しておりなかなか電車に乗ることも出来なかった。
その時、携帯が鳴り始めた。画面には佐々木の名前が表示されている。姫川は直ぐに電話に出ると、佐々木の言葉を待った。
「あっ?姫川?無事に帰ってるのか?」
声はいつも通り落ち着いていて、風紀のメンバーに問題が起きてないことが直ぐに分かった。
「あぁ、でも駅が混んでいて、なかなか電車に乗れないんだ。」
ザワザワするホームでいつもより少し大きめの声で佐々木に言う。
「そっか。気をつけて帰れよ。俺たちは皆一応無事に合流できたから。庄司も近くまで親が迎えに来てるんだって。あと、牧瀬から事情も聞いた。でも自分が何で狙われたのかは心当たりがなさそうだった。他の皆も襲った奴が誰なのか気になってる様子だったぞ。なぁ、姫川は本当に何も知らないのか?さっきの電話で何か言いかけただろ?」
「あぁ・・・」
佐々木の言葉を聞いて途端に姫川の歯切れが悪くなる。佐々木は先程の電話の時の姫川の些細な間を見過ごさなかった。その事に姫川は苦い顔をした。なかなか言い出さない姫川に佐々木が痺れをきらした。
「何だよ。俺たちにも言いにくい事なのか?」
その言葉に姫川は渋々口を開く。
「まだ、確証はないんだ。だから、いままでお前達には黙っていたんだが・・・」
自分の胸の内でずっとしこりのように引っかかっていた事を佐々木に話すことに姫川は緊張を覚えた。
「おそらく、柏木がこの件には関わっていると思う。」
祭りも終わりに近づき、駅までの道を歩く人がごった返し始めていた。
「あの、姫川くんはもしかして皆にさっきの事を話すためにここに残ってるの?」
牧瀬が心配そうな顔で姫川に尋ねる。
「あぁ、中途半端に話しただけだからな。あいつらも今頃不安に思ってるだろ。」
その言葉を聞いた牧瀬は意を決したように姫川に言った。
「姫川くんのそういう誠実なところ、とってもかっこいいよ。でも姫川くんはまた家に戻るんだろ?だったらこの人混みがあるうちに家に帰った方がいいよ。庄司くん以外は今日は寮に戻るから僕たちは大丈夫だけど、その、道中とかあいつらに襲われないか心配で・・・」
純粋に自分の事を心配してくれている牧瀬に姫川は温かい気持ちが込み上げる。
「あの、僕でよければ皆にもきちんと説明しとくし、あっ、でも僕じゃ頼りないかもしれないけど。」
あたふたとしながら話す牧瀬に姫川が双眸を細める。
「いや、頼りにしてるよ。ありがとう。じゃあ、悪いけどここは任せてもいいか?」
姫川が自分を頼ってくれたという事実に牧瀬の目が輝く。
「うん。もちろんだよ。庄司くんが来たら、直ぐに家に帰るように言うし、佐々木くん達にも事情をきちんと説明するよ。」
少し胸を張った牧瀬が答える。先程自分が1番怖い目に遭っただろうに、それでも姫川や仲間の安全を考えられる牧瀬を姫川は素直に尊敬した。
「あぁ、助かるよ。でもあまり門の付近でウロウロするなよ。またあいつらに見つかったら大変だ。」
姫川の言葉に一瞬牧瀬の顔が歪む。あの時の怖さを思い出したのだろう。
「本当に1人で大丈夫か?」
姫川が心配して尋ねると、
「うん、大丈夫だよ。僕に任せて。姫川くんも気をつけて家に帰ってね。」
直ぐに笑顔を取り戻した牧瀬が答えた。
姫川は後ろ髪を引かれながらも、牧瀬の気持ちを汲んで家路につくことにした。
牧瀬に後のことを託す。今までの姫川なら考えられない行動であったが、それだけ姫川が風紀委員の仲間を信頼している証でもあった。
姫川は駅に着いたが、人がごった返しておりなかなか電車に乗ることも出来なかった。
その時、携帯が鳴り始めた。画面には佐々木の名前が表示されている。姫川は直ぐに電話に出ると、佐々木の言葉を待った。
「あっ?姫川?無事に帰ってるのか?」
声はいつも通り落ち着いていて、風紀のメンバーに問題が起きてないことが直ぐに分かった。
「あぁ、でも駅が混んでいて、なかなか電車に乗れないんだ。」
ザワザワするホームでいつもより少し大きめの声で佐々木に言う。
「そっか。気をつけて帰れよ。俺たちは皆一応無事に合流できたから。庄司も近くまで親が迎えに来てるんだって。あと、牧瀬から事情も聞いた。でも自分が何で狙われたのかは心当たりがなさそうだった。他の皆も襲った奴が誰なのか気になってる様子だったぞ。なぁ、姫川は本当に何も知らないのか?さっきの電話で何か言いかけただろ?」
「あぁ・・・」
佐々木の言葉を聞いて途端に姫川の歯切れが悪くなる。佐々木は先程の電話の時の姫川の些細な間を見過ごさなかった。その事に姫川は苦い顔をした。なかなか言い出さない姫川に佐々木が痺れをきらした。
「何だよ。俺たちにも言いにくい事なのか?」
その言葉に姫川は渋々口を開く。
「まだ、確証はないんだ。だから、いままでお前達には黙っていたんだが・・・」
自分の胸の内でずっとしこりのように引っかかっていた事を佐々木に話すことに姫川は緊張を覚えた。
「おそらく、柏木がこの件には関わっていると思う。」
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