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高校最後の夏休み
二十八話
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薫が見つかった事で集合場所に佐々木が戻ってきた。暫く庄司とその場で待っていると、そこに三田と薫もやって来た。
手を繋いでそれなりに会話もしている様子の2人に庄司が軽く目を見開く。今まで庄司以外の人物に殆ど心を開くことのなかった薫が三田と辿々しくも接している姿を見て驚きを隠せなかったからだ。庄司も佐々木も三田のコミュニケーション能力の高さを改めて再認識した。三田と薫が側まで来ると、
「心配かけてごめんなさい。」
と塩らしく頭を下げた。その対応に庄司はまたしても驚く。この短時間で一体薫にどんな心境の変化があったのか庄司には想像も出来なかった。
輪の中に三田と薫が戻って来たところで、佐々木が三田に耳打ちをする。
「どうやって連れ戻して来たんだよ?」
あの頑なそうな薫がこうもあっさり戻って来たことを素直に不思議に思ったからだ。
すると三田は目を瞬かさせた。
「えっ?別に普通に話して、仲良くなっただけだけど?」
「まぁ、それも一つの才能だよな。凄いよお前。」
佐々木の急な褒め言葉に三田は何の事か分からず只々首を傾げるだけだった。
そこから4人は牧瀬と姫川が帰って来るのを待っていたが、いつまで経っても2人が戻ってくることはなかった。
そろそろ花火もクライマックスを迎えている。流石に心配になった佐々木は取り敢えず姫川に連絡を取ることにした。
暫しの間姫川と牧瀬が花火に魅入っていると、姫川の携帯が震え出した。
佐々木と表示された文字を見て、こんなに悠長に花火を見ている場合ではなかったと急いで電話をとる。
「ちょっと、姫川、今どこにいるの?すごい遅いから皆心配してるよ。何かあったのか?」
電話に出るなり、佐々木の心配そうな声が電話口から聞こえた。
「あぁ、ちょっとトラブルに巻き込まれてた。牧瀬も一緒だから、心配しなくていい。」
「えっ?トラブルって?」
佐々木が驚いたような声を出す。
「牧瀬が男達に襲われかけた。今は逃げて人混みにいるから心配ない。」
「はっ?えっ?襲われかけた?えっ?何で?」
佐々木にしては珍しく酷く動揺しているようだった。
「取り敢えず牧瀬にも怪我とかはないから。心配するな。どうやらその男達は最初から俺たちを狙っていたようだ。これから合流して6人でぞろぞろ動くのは危険だろう。このまま各自で解散でもいいか?くれぐれも1人で帰ったりする事がないようお前達も気をつけろよ。」
そう言って電話を切ろうとすると、佐々木が慌てた声を出す。
「ちょっと待って!どういうことか俺たちにもわかるように説明してくれよ。」
佐々木の言い分はもっともだが姫川自身なぜ自分たちが狙われたのか分かっていなかった。
「牧瀬が男達の会話を聞いた感じそうだったというだけで俺も詳しい事はわからない。只•••」
そこで言葉を切ると姫川は柏木の存在を佐々木に伝えるか迷った。しかし、ここで話しても混乱させるだけだと思い、結局言葉を濁す。
「いや、何でもない。でもあっちの意図が読めないからこそ、俺たちは早くここを後にした方がいい。おそらく生徒ではないと思うから、学園に戻ってしまえば安全だ。」
姫川の話を聞いて、まだ納得のいってない様子の佐々木だったが、
「分かった。」
と一言言って電話を切った。
姫川は牧瀬に向き直ると、
「そろそろ、俺たちも行くか。学校まで送ろう。」
と言った。先程まで佐々木との会話を横で聞いていた牧瀬は、1度首を縦に振って、姫川と一緒に歩き出した。
手を繋いでそれなりに会話もしている様子の2人に庄司が軽く目を見開く。今まで庄司以外の人物に殆ど心を開くことのなかった薫が三田と辿々しくも接している姿を見て驚きを隠せなかったからだ。庄司も佐々木も三田のコミュニケーション能力の高さを改めて再認識した。三田と薫が側まで来ると、
「心配かけてごめんなさい。」
と塩らしく頭を下げた。その対応に庄司はまたしても驚く。この短時間で一体薫にどんな心境の変化があったのか庄司には想像も出来なかった。
輪の中に三田と薫が戻って来たところで、佐々木が三田に耳打ちをする。
「どうやって連れ戻して来たんだよ?」
あの頑なそうな薫がこうもあっさり戻って来たことを素直に不思議に思ったからだ。
すると三田は目を瞬かさせた。
「えっ?別に普通に話して、仲良くなっただけだけど?」
「まぁ、それも一つの才能だよな。凄いよお前。」
佐々木の急な褒め言葉に三田は何の事か分からず只々首を傾げるだけだった。
そこから4人は牧瀬と姫川が帰って来るのを待っていたが、いつまで経っても2人が戻ってくることはなかった。
そろそろ花火もクライマックスを迎えている。流石に心配になった佐々木は取り敢えず姫川に連絡を取ることにした。
暫しの間姫川と牧瀬が花火に魅入っていると、姫川の携帯が震え出した。
佐々木と表示された文字を見て、こんなに悠長に花火を見ている場合ではなかったと急いで電話をとる。
「ちょっと、姫川、今どこにいるの?すごい遅いから皆心配してるよ。何かあったのか?」
電話に出るなり、佐々木の心配そうな声が電話口から聞こえた。
「あぁ、ちょっとトラブルに巻き込まれてた。牧瀬も一緒だから、心配しなくていい。」
「えっ?トラブルって?」
佐々木が驚いたような声を出す。
「牧瀬が男達に襲われかけた。今は逃げて人混みにいるから心配ない。」
「はっ?えっ?襲われかけた?えっ?何で?」
佐々木にしては珍しく酷く動揺しているようだった。
「取り敢えず牧瀬にも怪我とかはないから。心配するな。どうやらその男達は最初から俺たちを狙っていたようだ。これから合流して6人でぞろぞろ動くのは危険だろう。このまま各自で解散でもいいか?くれぐれも1人で帰ったりする事がないようお前達も気をつけろよ。」
そう言って電話を切ろうとすると、佐々木が慌てた声を出す。
「ちょっと待って!どういうことか俺たちにもわかるように説明してくれよ。」
佐々木の言い分はもっともだが姫川自身なぜ自分たちが狙われたのか分かっていなかった。
「牧瀬が男達の会話を聞いた感じそうだったというだけで俺も詳しい事はわからない。只•••」
そこで言葉を切ると姫川は柏木の存在を佐々木に伝えるか迷った。しかし、ここで話しても混乱させるだけだと思い、結局言葉を濁す。
「いや、何でもない。でもあっちの意図が読めないからこそ、俺たちは早くここを後にした方がいい。おそらく生徒ではないと思うから、学園に戻ってしまえば安全だ。」
姫川の話を聞いて、まだ納得のいってない様子の佐々木だったが、
「分かった。」
と一言言って電話を切った。
姫川は牧瀬に向き直ると、
「そろそろ、俺たちも行くか。学校まで送ろう。」
と言った。先程まで佐々木との会話を横で聞いていた牧瀬は、1度首を縦に振って、姫川と一緒に歩き出した。
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