風紀委員長は××が苦手

乙藤 詩

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高校最後の夏休み

二十六話

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庄司と三田の連絡を受けて、姫川は何事もなく無事に薫が見つかったことにホッと胸を撫で下ろした。
そして、庄司の所に合流しようかと考えていると、携帯が鳴り始めた。
画面を確認するとそれは牧瀬からだった。
「もしもし、どうした?」
何の気なしに姫川は電話に出ると、
「姫川くん、助けて・・・」
その緊迫した声に、姫川の心臓が一度ドクンっと跳ねた。
「どうした!?何があった?」
直ぐに姫川が聞き返すと、震えた声で牧瀬が返す。
「知らない男達に追われてるんだ。見つかりそうになって、土をかけて何とか逃げたんだけど・・・いつ見つかるかと思ったら怖くてここから動けない。」
切実な牧瀬の声に姫川は焦りを覚えた。
「あぁ、すぐに行く。今、どこにいる?」
「遊歩道の方に歩いてきたんだけど、その後は必死で逃げたから。大きな木の影に隠れてるんだ。」
姫川は遊歩道には行けるが情報が少なすぎて牧瀬の元に辿り着ける自信が持てなかった。
「何かそっから見えないのか?」
「えっ?・・・うん。木々に覆われてて何も分からない。切り株が沢山あるのと・・・」
その時空に大きな音と共に花火が打ち上げられた。
「あっ、花火が真上に見えるよ。」
花火が真上という事は、火元から近いという事か?
牧瀬の話から遊歩道の少しはずれにある湖に姫川はあたりをつける。
「分かった。すぐ行くから息を潜めて待ってろよ!」
姫川は牧瀬にそう言うと、直ぐに電話を切って猛スピードで走り始めた。

足が恐怖でガクガクと震える。牧瀬はすごく長い時間、隠れている気がしていた。1人だと心細くて気が遠くなりそうだった。
男達に見つかった時はもうお終いかと思ったが、一か八かで土を投げたら、運よく目に入ったのか痛がり始めた。その隙に何とか此処まで逃げてきたが。
「絶対逃さねぇ!」
「後で覚えとけよ!」
と言っていた男達の声が頭にこびり付いて離れなかった。
捕まったらどうなるんだろう・・・
そう考えただけで体が震えた。
薫を探しに四方に散った時、姫川が牧瀬と比較的近い方向に走ってくのを牧瀬は確認していた。その記憶を頼りに姫川に連絡したのだが、いつまで待っても来てくれる気配はなかった。
はぁ、姫川くん、やっぱり僕がいる場所が分からなかったのかな。
神にも祈るつもりで姫川を待ち続ける。
その時、後ろで方でパキッと木が鳴る音がした。そして遠くではあるが、足音がこちらに近づいて来るのが分かった。
牧瀬は両手で口を押さえて必死に息を殺す。
牧瀬を探しているのかその足音は蛇行しながらそれでもゆっくり確実に牧瀬に近づいて来ていた。
ザッザッザッ!
直ぐ近くまで聞こえ始めた足音に牧瀬が強く目を瞑る。
見つかる!
そう思った途端、足音が牧瀬の後ろでピタッと止まった。
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