風紀委員長は××が苦手

乙藤 詩

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高校最後の夏休み

二十三話

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あれから更に、ヨーヨー釣りや、金魚すくいもして、皆の財布が段々と軽くなっていった。
来た時には明るかった会場も、夢中で遊んでいる内に暗くなっており、より一層屋台の灯りが輝いて見えた。煙や、人々の声で賑わう祭りの会場はとても盛り上がっていた。
「あぁ、いつの間にかこんな時間だ。そろそろ花火を見る場所を決めようか。」
佐々木がそんな提案をしたので、皆がそれに倣おうとした時、
「帰る。」
突然庄司の後ろから声がした。
「はっ?」
庄司は驚いた声を出して後ろを振り返る。
「もう1人で帰る。」
突然そう言って輪から離れようとする薫の腕を庄司が掴む。
「何言ってんだ。今日はお前が無理に来たいって言うから連れて来たんだろ。1人で帰ったら空気も悪くなるし、迷惑だろ。」
庄司の正論に薫の双眸がキッと釣り上がる。
「兄貴は、僕の心配よりこいつらの心配なんだな。僕のこと無視して楽しそうにして。こんな奴ら大っ嫌いだよ!」
酷いことを言われているのに庄司は特に表情を変えることはなかった。
「お前だって、普通にこの人たちに話しかければよかっただろ。自分が輪に入れなかったからって、怒って大嫌いなんて口にするな。」
どこまでも冷静な庄司に薫の顔が歪む。
「兄貴には僕だけだった筈だろ!なんでこいつらと仲良くするんだよ!」
そう言うと今にも泣き出しそうな顔をした薫が反対に掛けだして行った。
「おい、どうするんだよ・・・」
三田が困ったような声を出し、姫川達も薫を呆然と見ていた。
確かにこの数時間、特に話すこともなくずっと庄司の後ろに薫は隠れていた。気を利かせた三田や牧瀬や佐々木が何度か話しかけたがその度に無視されそれ以上の接触を諦めていた。
薫の行動に責任を感じてか
「すまない・・・」
と、庄司が目を伏せて謝った。先ほどまで楽しそうだった庄司の姿を見ていただけに、姫川の胸が痛む。
「お前が謝る必要はないだろ。それより今は薫くんを探すのが先だ。薫くんはここの土地にも慣れてないだろ。万が一迷ったりしたら大変だ。」
山や木々も多いこの地域で下手に歩き回るのは危険だと姫川は思った。
姫川の冷静な判断に暫し呆然としていた皆も無言で頷いた。
「庄司、薫くんの位置情報とかはわかるか?」
姫川が聞くと、庄司はバツが悪そうに答える。
「あいつは俺の位置情報を多分知ってるけど、俺は知らない。」
「そうか・・・だったら庄司は下手に動かないほうがいいな。自分を探していると分かったら、より遠くへ逃げようとしてもおかしくないからな。」
庄司と薫の歪な関係が気になりつつも姫川はまず、目の前で起こった問題を処理しようと頭をフル回転させる。
「庄司は薫くんに連絡をとり続けてくれないか?もしかしたら何かのタイミングで反応が返ってくるかもしれない。」
姫川の言葉に庄司が頷く。それを確認すると姫川は佐々木達に目を向けた。
「俺たちはバラバラに散って薫くんを探そう。もし見つけたらメッセージで知らせてくれ。庄司も薫くんと連絡が取れたら直ぐに俺たちに居場所を知らせるんだぞ。」
委員会の時と同様、姫川はテキパキと皆に指示を出していく。
「わかった。庄司はここに残って、薫くんを見つけた連絡を受けたら俺たちもここに戻ってこよう。」
最後に佐々木がそう言うと、皆庄司だけをその場に残してそれぞれの方向に散っていった。
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