74 / 177
高校最後の夏休み
十八話
しおりを挟む
ボカっ!
「痛ってー!」
姫川は暫く肩を上下させながらぼーっとしていたが、正木に腹や下肢を綺麗にしてもらっている時に正気を取り戻し、すぐさま正木の頬を拳で殴った。そして冒頭に戻る。
「痛いだろ!なんで殴るんだよ。」
正木が頬を撫でながら抗議するが、姫川は顔を真っ赤にして怒っていた。
「当たり前だろ!なんてことしてくれたんだ!」
「俺だってお前が本当に嫌がったり、抵抗したら止めるつもりだったよ。」
「やめろって言っただろうがっ!」
「でも、体は反応してたじゃん。最後にはノリノリでイってたし・・・」
「!?」
正木の発言にボンッと音がしそうなほど、姫川の顔が朱に染まる。自分の醜態を思い出した衝撃に次の言葉が出てこなかった。
「お前って、好きでもない奴にあんな風になんの?誰にでも反応するってこと?」
正木の問いかけに姫川が苦し紛れに睨みを効かす。
「あんな風にいやらしく触られたら、そうなることだってあるだろ・・・」
自分でも言っていることが恥ずかしいのか姫川の声はどんどん小さくなっていく。
「へー、じゃあお前はキモいデブのおっさんでも、去年お前と同室だった奴でも風紀委員の奴らでも触られたら誰にでも反応するんだな?」
「そんな訳あるか!気持ち悪い。」
少し想像して背中がゾッとする。
その答えを聞いた正木はニヤッと妖しい笑みを浮かべる。
「なんだよ。」
姫川はそんな正木の顔に嫌な予感がした。
「じゃあ、俺の事が好きって事だな。」
正木の言葉に姫川が目を見開く。
「それはー」
直ぐに否定しようとしたが、
「だって他の奴にされるのは気持ち悪いんだろ。だったら俺にされた時は?」
と間髪入れずに正木が言葉を重ねる。
今回姫川が感じたのは恥ずかしさと戸惑い。あとは、性に対する恐怖だ。
以前ならそこに嫌悪感も確かに存在したのに、それがなくなっている事に姫川は気づいてしまった。
姫川はその事実に打ちのめされ、両手で顔を覆う。
「えっ?何?その可愛い反応。」
「うるさい。少し黙っててくれ。」
混乱するそばから正木がいらない事を言ってくるので、姫川は思わずそう返す。
「なぁ。」
正木は姫川に話しかけると顔を隠していた腕を持った。
「今を逃したら、今度はいつお前とこういう話ができるかわからないからな。しっかり考えてくれよ。俺たちの事。」
腕をとり姫川の顔を見る正木。その顔が想像以上に真剣で姫川は自然と目を逸せる。
「き、嫌いじゃないことは認める。認めるから、友達じゃダメなのか?」
「ダメだ。」
間髪入れずに正木が返す。
「そんな言葉で俺の気持ちから逃げようとするなよ。」
そう言われて、姫川は途方に暮れた。
腕をとられたまま、暫くじっとしていたが、観念した姫川が口を開いた。その間も正木は真剣な顔で姫川を見ていた。
「もう少し考えさせてくれないか?俺は、その、恋愛とかそういうものに慣れてないんだ。ただでさえ一杯一杯なのに、その上男同士なんて。俺にはハードルが高すぎて簡単に答えなんか出せないんだよ。お前の事、嫌いじゃないのは分かるが・・・この気持ちがお前の望む感情なのかも分からない。でも中途半端なまま答えは出したくないんだ。」
姫川の今の正直な思いを正木は口を挟む事なく聞いた。そして、姫川が話し終わると、正木は、はぁぁぁぁと大きく溜息をついた。
「真面目だな。もう少し簡単に考えてくれてもいいのに。でも、姫川の気持ちを大事にしたいし•••わかったよ。もう少し待つ事にする。でも、いつまで待てばいい?只、漠然と待ち続けるのはかなりしんどいんだが。」
正木の問いかけに姫川が悩む。
「じゃあ、ふ、冬までには・・・」
「長っ!」
歯切れ悪く答える姫川に正木が大きな声で突っこんだ。
そしてうるさいと姫川から怒られるのだった。
「痛ってー!」
姫川は暫く肩を上下させながらぼーっとしていたが、正木に腹や下肢を綺麗にしてもらっている時に正気を取り戻し、すぐさま正木の頬を拳で殴った。そして冒頭に戻る。
「痛いだろ!なんで殴るんだよ。」
正木が頬を撫でながら抗議するが、姫川は顔を真っ赤にして怒っていた。
「当たり前だろ!なんてことしてくれたんだ!」
「俺だってお前が本当に嫌がったり、抵抗したら止めるつもりだったよ。」
「やめろって言っただろうがっ!」
「でも、体は反応してたじゃん。最後にはノリノリでイってたし・・・」
「!?」
正木の発言にボンッと音がしそうなほど、姫川の顔が朱に染まる。自分の醜態を思い出した衝撃に次の言葉が出てこなかった。
「お前って、好きでもない奴にあんな風になんの?誰にでも反応するってこと?」
正木の問いかけに姫川が苦し紛れに睨みを効かす。
「あんな風にいやらしく触られたら、そうなることだってあるだろ・・・」
自分でも言っていることが恥ずかしいのか姫川の声はどんどん小さくなっていく。
「へー、じゃあお前はキモいデブのおっさんでも、去年お前と同室だった奴でも風紀委員の奴らでも触られたら誰にでも反応するんだな?」
「そんな訳あるか!気持ち悪い。」
少し想像して背中がゾッとする。
その答えを聞いた正木はニヤッと妖しい笑みを浮かべる。
「なんだよ。」
姫川はそんな正木の顔に嫌な予感がした。
「じゃあ、俺の事が好きって事だな。」
正木の言葉に姫川が目を見開く。
「それはー」
直ぐに否定しようとしたが、
「だって他の奴にされるのは気持ち悪いんだろ。だったら俺にされた時は?」
と間髪入れずに正木が言葉を重ねる。
今回姫川が感じたのは恥ずかしさと戸惑い。あとは、性に対する恐怖だ。
以前ならそこに嫌悪感も確かに存在したのに、それがなくなっている事に姫川は気づいてしまった。
姫川はその事実に打ちのめされ、両手で顔を覆う。
「えっ?何?その可愛い反応。」
「うるさい。少し黙っててくれ。」
混乱するそばから正木がいらない事を言ってくるので、姫川は思わずそう返す。
「なぁ。」
正木は姫川に話しかけると顔を隠していた腕を持った。
「今を逃したら、今度はいつお前とこういう話ができるかわからないからな。しっかり考えてくれよ。俺たちの事。」
腕をとり姫川の顔を見る正木。その顔が想像以上に真剣で姫川は自然と目を逸せる。
「き、嫌いじゃないことは認める。認めるから、友達じゃダメなのか?」
「ダメだ。」
間髪入れずに正木が返す。
「そんな言葉で俺の気持ちから逃げようとするなよ。」
そう言われて、姫川は途方に暮れた。
腕をとられたまま、暫くじっとしていたが、観念した姫川が口を開いた。その間も正木は真剣な顔で姫川を見ていた。
「もう少し考えさせてくれないか?俺は、その、恋愛とかそういうものに慣れてないんだ。ただでさえ一杯一杯なのに、その上男同士なんて。俺にはハードルが高すぎて簡単に答えなんか出せないんだよ。お前の事、嫌いじゃないのは分かるが・・・この気持ちがお前の望む感情なのかも分からない。でも中途半端なまま答えは出したくないんだ。」
姫川の今の正直な思いを正木は口を挟む事なく聞いた。そして、姫川が話し終わると、正木は、はぁぁぁぁと大きく溜息をついた。
「真面目だな。もう少し簡単に考えてくれてもいいのに。でも、姫川の気持ちを大事にしたいし•••わかったよ。もう少し待つ事にする。でも、いつまで待てばいい?只、漠然と待ち続けるのはかなりしんどいんだが。」
正木の問いかけに姫川が悩む。
「じゃあ、ふ、冬までには・・・」
「長っ!」
歯切れ悪く答える姫川に正木が大きな声で突っこんだ。
そしてうるさいと姫川から怒られるのだった。
26
お気に入りに追加
366
あなたにおすすめの小説
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。
全17話、約6万文字。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
全寮制男子高校生活~生徒会長の恋~
雨雪
BL
行方不明になってた族の総長が王道学園に入学してみた、の生徒会長、紫賀 庵の話。
スピンオフのようなもの。
今のところR15。
*こちらも改稿しながら投稿していきます。
真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~
シキ
BL
全寮制学園モノBL。
倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。
倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……?
真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。
一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。
こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。
今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。
当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。
嫌われものの僕について…
相沢京
BL
平穏な学校生活を送っていたはずなのに、ある日突然全てが壊れていった。何が原因なのかわからなくて気がつけば存在しない扱いになっていた。
だか、ある日事態は急変する
主人公が暗いです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる