風紀委員長は××が苦手

乙藤 詩

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高校最後の夏休み

十六話

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「わかった。」
正木の言葉に姫川は呟くように返事をした。正直こんな事を真剣に言われて、どういう反応をすれば良いのか姫川にはさっぱりわからなかった。
互いに見つめ合ったまま、無言の時間が過ぎる。その空気に耐えきれなくなって、姫川がさっと目を逸らした。
「もう寝るか。」
姫川が正木に背を向け布団に潜り込もうとする。すると、正木の腕が伸びてきて、姫川の腰に回る。
「!?」
姫川は声にならない声をあげると、必死に身を捩ろうとする。
しかしそれを阻むように、正木の腕の力が強くなる。
「おいっ!」
抗議の声を上げるため、正木の方を振り向くと、待ってましたとばかりに姫川の唇にキスをした。
「んんっ!」
顔だけを正木に向けた状態の姫川は大した抵抗も出来ず為すがままだ。只、目を見開きくぐもった声を漏らす。
その内、正木の舌が口腔内に侵入してきた。
その感覚に姫川は目をギュッと瞑る。いつもだったら、怖くて、気持ち悪い筈なのに、正木にそうされているうちに、別の感覚が体を襲う。
何だこれっ?
奥手である姫川は、あまり性にも執着がないが、たまに自分で処理することはあった。しかし他人に勝手に昂らされる感覚には全く免疫がなく、頭が軽くパニックになる。
姫川は抵抗できないのをいいことに、正木の舌はどんどん大胆になっていった。
歯列をなぞられ、口の上側を刺激されると姫川は途端に堪らない気持ちになる。
そして、下半身に違和感を感じ始めて、顔を青くした。
「んんっ!んー!」
長いキスに姫川は声で必死に抗議する。
鼻から息を吸えばいいのにそれさえも忘れて酸欠になりそうになる。
そして姫川の意識がぼーっとしてきた頃、やっと正木が口を離した。
正木から解放された姫川だが、特に抗議の声を上げることも出来ず、息を整えるのに必死だった。
「はぁはぁはぁ・・・」
姫川の荒い息と、赤い顔、濡れた瞳に正木の理性が簡単に崩れる。
ゴクっと一度喉を鳴らすと、正木はゆっくりと姫川の股間に手を伸ばした。
「おぉ、反応してるじゃん。」
その言葉に姫川は逃げたくなった。自分の醜態を正木に見られて恥ずかしさでどうにかなりそうだった。
しかし、一方の正木は今まで自分が触れても決して反応することのなかった姫川の変化に喜びを隠しきれなかった。
「姫川、もしかして俺で感じた?」
耳元で囁く正木の恥ずかしい言葉と甘く低い声に、姫川の体がビクッと震える。
「別に・・・そんなことない・・・」
ここで素直に認めることなど、姫川には到底出来なかった。只、正木にこの行為をやめて欲しくて、今すぐこの場から逃げ出したくて特に何も考えず、否定の言葉を口にする。
しかし、これが正木を煽ることになるなど姫川は考えもしなかった。
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