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高校最後の夏休み
十五話
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「ちょっと近いって。もうちょっとあっちで寝ろよ。」
結局、あの後正木は電話で両親に泊まることを伝えた。正木の両親は特に渋ることもなく二つ返事で泊まることを了承した。
そして今に至る。
もともと狭い姫川の部屋に、2枚の布団を敷いて2人で横になる。姫川の部屋は畳敷の和室になっていて、ベッドなどが無い分、正木との距離の近さが気になってしょうがなかった。
「仕方ないだろ。お前の部屋狭いし。何だよ。そんなに俺の事を意識してるの?」
確かに正木のことをかなり意識している姫川はその言葉に恥ずかしさが芽生える。
「うるさいな。散々俺に好きだ好きだって言っといて、意識しない方がおかしいだろ。」
正木に背中を向けたまま、少し熱の集まった顔に気づかれないよう言葉を返す。しかし正木から言葉は返ってこなかった。そして暫しの沈黙の後、
「すまなかったな。」
突然なんの脈略もなく正木が謝罪の言葉を口にした。
「はっ?何のことだ?」
姫川には身に覚えがなくて、思わず顔を正木に向け聞き返す。
「俺はお前のことをかなり誤解してたみたいだ。」
なるほどそういうことかと姫川は納得する。
「お前、沙羅から何か聞いただろ?」
「いや、別に。只、この家で暮らしてるお前を見て色々思うところがあったんだ。」
沙羅に秘密にしといてと言われた手前、正木は本当のことが言えず、適当に誤魔化す。
「誤魔化すなよ。この家に来た時から、生い立ちや生活環境について疑問に思うことが沢山あっただろうに、お前何にも聞かなかっただろ?それは、俺の事情を沙羅から事前に聞いてたからだろ。」
「・・・」
姫川の鋭い指摘に思わず正木が黙る。
その反応を肯定と受け止めた姫川が、はぁぁぁと深い溜息をついた。
「ったく、あいつはマジで口が軽いな。」
沙羅の口の軽さに呆れていると、
「お前のことを凄く心配してた。学校で色々大変なことや不安な事があるだろうけど、そんな時自分は助けてあげられないって。お前の事、本当に心から思ってるって事だろ?だから、沙羅ちゃんを責めたりするなよ。」
「分かってるよ。あいつがどんな気持ちだったのかくらい。幼い頃からの付き合いだぞ。」
姫川の言葉に正木が少し寂しそうな顔をする。
「そうだよな。姫川たちは幼い頃からお互いの事をよく知っていて、互いに思い合ってる。たとえそこに恋愛感情がないとしても羨ましいよ。それに比べて俺はお前に酷い態度ばかりとってしまった。お前が俺を見下したりする筈もないのに。」
そう言って自嘲気味に笑う正木は今までの姫川への態度や言動を心から後悔しているようだった。
「別にそれはいい。俺だってお前の事よく思っていなかったし、そこはお互いさまだろ。」
姫川はそう言うと今の素直な気持ちを話し始めた。
「俺は、自分の境遇や生い立ちを知られるのが嫌だった。好奇の目で見られたり、蔑まれたり、媚びられたり。そのどれもが煩わしいと思っていた。だから、学校でも必要以上に親しい人を作らないよう過ごしてきたんだ。でも、お前は俺の境遇を聞いても態度も変えずいつも通り接してくれた。正直、嬉しかったよ。本来の俺を受け入れてもらえた気持ちになった。だから、今までの態度や言動がどうであれ、俺はお前と仲良くなれてよかったと思っている。」
いつもなら考えられないくらい素直な言葉に正木は目を見開く。そして、優しく微笑むと、
「それってもしかして告白?」
と、茶化して見せた。
そんな正木を姫川が睨むと、自分で言った言葉が恥ずかしくなったのか少し顔を赤くして、
「やっぱり今の話はなしだ。お前なんかと仲良くするんじゃなかったよ。」
と言った。
すると正木が姫川の手を優しく握ってきた。その行為に姫川がビクッと体を震わす。
「嘘だよ。姫川の気持ちが聞けて嬉しかったよ。まぁ、沙羅ちゃんからお前の境遇を聞いて、確かに最初は驚いたけど、でもそれ以上に尊敬できた。だってそんな過酷な状況で確実に結果を残してきたなんて凄い事だろ?お前に張り合って優越感に浸ってた自分が物凄くちっぽけに思えたよ。だから、これからは1人で頑張らず、俺を頼ってほしい。」
いつになく真剣な正木の表情に、何故か姫川の胸が熱くなった。
結局、あの後正木は電話で両親に泊まることを伝えた。正木の両親は特に渋ることもなく二つ返事で泊まることを了承した。
そして今に至る。
もともと狭い姫川の部屋に、2枚の布団を敷いて2人で横になる。姫川の部屋は畳敷の和室になっていて、ベッドなどが無い分、正木との距離の近さが気になってしょうがなかった。
「仕方ないだろ。お前の部屋狭いし。何だよ。そんなに俺の事を意識してるの?」
確かに正木のことをかなり意識している姫川はその言葉に恥ずかしさが芽生える。
「うるさいな。散々俺に好きだ好きだって言っといて、意識しない方がおかしいだろ。」
正木に背中を向けたまま、少し熱の集まった顔に気づかれないよう言葉を返す。しかし正木から言葉は返ってこなかった。そして暫しの沈黙の後、
「すまなかったな。」
突然なんの脈略もなく正木が謝罪の言葉を口にした。
「はっ?何のことだ?」
姫川には身に覚えがなくて、思わず顔を正木に向け聞き返す。
「俺はお前のことをかなり誤解してたみたいだ。」
なるほどそういうことかと姫川は納得する。
「お前、沙羅から何か聞いただろ?」
「いや、別に。只、この家で暮らしてるお前を見て色々思うところがあったんだ。」
沙羅に秘密にしといてと言われた手前、正木は本当のことが言えず、適当に誤魔化す。
「誤魔化すなよ。この家に来た時から、生い立ちや生活環境について疑問に思うことが沢山あっただろうに、お前何にも聞かなかっただろ?それは、俺の事情を沙羅から事前に聞いてたからだろ。」
「・・・」
姫川の鋭い指摘に思わず正木が黙る。
その反応を肯定と受け止めた姫川が、はぁぁぁと深い溜息をついた。
「ったく、あいつはマジで口が軽いな。」
沙羅の口の軽さに呆れていると、
「お前のことを凄く心配してた。学校で色々大変なことや不安な事があるだろうけど、そんな時自分は助けてあげられないって。お前の事、本当に心から思ってるって事だろ?だから、沙羅ちゃんを責めたりするなよ。」
「分かってるよ。あいつがどんな気持ちだったのかくらい。幼い頃からの付き合いだぞ。」
姫川の言葉に正木が少し寂しそうな顔をする。
「そうだよな。姫川たちは幼い頃からお互いの事をよく知っていて、互いに思い合ってる。たとえそこに恋愛感情がないとしても羨ましいよ。それに比べて俺はお前に酷い態度ばかりとってしまった。お前が俺を見下したりする筈もないのに。」
そう言って自嘲気味に笑う正木は今までの姫川への態度や言動を心から後悔しているようだった。
「別にそれはいい。俺だってお前の事よく思っていなかったし、そこはお互いさまだろ。」
姫川はそう言うと今の素直な気持ちを話し始めた。
「俺は、自分の境遇や生い立ちを知られるのが嫌だった。好奇の目で見られたり、蔑まれたり、媚びられたり。そのどれもが煩わしいと思っていた。だから、学校でも必要以上に親しい人を作らないよう過ごしてきたんだ。でも、お前は俺の境遇を聞いても態度も変えずいつも通り接してくれた。正直、嬉しかったよ。本来の俺を受け入れてもらえた気持ちになった。だから、今までの態度や言動がどうであれ、俺はお前と仲良くなれてよかったと思っている。」
いつもなら考えられないくらい素直な言葉に正木は目を見開く。そして、優しく微笑むと、
「それってもしかして告白?」
と、茶化して見せた。
そんな正木を姫川が睨むと、自分で言った言葉が恥ずかしくなったのか少し顔を赤くして、
「やっぱり今の話はなしだ。お前なんかと仲良くするんじゃなかったよ。」
と言った。
すると正木が姫川の手を優しく握ってきた。その行為に姫川がビクッと体を震わす。
「嘘だよ。姫川の気持ちが聞けて嬉しかったよ。まぁ、沙羅ちゃんからお前の境遇を聞いて、確かに最初は驚いたけど、でもそれ以上に尊敬できた。だってそんな過酷な状況で確実に結果を残してきたなんて凄い事だろ?お前に張り合って優越感に浸ってた自分が物凄くちっぽけに思えたよ。だから、これからは1人で頑張らず、俺を頼ってほしい。」
いつになく真剣な正木の表情に、何故か姫川の胸が熱くなった。
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