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高校最後の夏休み
十四話
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結局、沙羅と正木と姫川と祖母の4人で晩ごはんを食べる事になった。
正木は、さっきレストランでまぁまぁな量を食べていたにも関わらず、姫川の祖母の食事が口に合ったようで箸が進んでいた。
祖母も姫川が寮に入ってから、1人で食事をする事が増えていたため、久々の賑やかな食卓を心から楽しんでいるようだった。そんな祖母の姿を見れて、姫川はそれだけで嬉しい気持ちになった。
話しながら食事をした事で気がつけば思ったより時間が経ってしまっていたようだった。
「えっ?もうこんな時間?片付けして私はそろそろ帰ろうかな。」
話に夢中だった沙羅が何気なく時計に目を遣り、驚いた声を出す。
「いいよ。片付けは俺とばあちゃんでやっとくから。」
姫川も予想以上に時間が経っていたことに驚き、慌てて沙羅を家に帰そうとする。
「いいの?じゃあ、そうさせてもらおうかな。おばあちゃんも片付けまで出来ずすみません。」
沙羅が謝ると、祖母は優しい顔で首を左右に振った。
「いいんだよ。私も久しぶりに沙羅ちゃんと沢山話せて楽しかったよ。おうちの人が心配してはいけないし早くお帰り。」
祖母の言葉に沙羅は軽く頭を下げると急いで帰り支度をはじめる。
「送って行こうか?」
姫川が問うと、
「もう、家直ぐそこなんだら大丈夫だよ。じゃあ正木さんもまたね。会えて良かったです。」
とペコっと頭を下げるとバタバタと自分の家へ帰っていった。
「正木くんも帰りが遅くなっちゃたわね。今から帰るのも大変だし、あなたさえ良ければ泊まっていって。」
沙羅が去った後、そんな提案をする祖母に姫川は焦る。
「ばあちゃん!何言ってんだよ。帰るに決まってんだろ。」
必死に姫川が言うが、
「えっ?じゃあ泊まろっかな。」
と正木本人は満更でもなさそうだった。
「帰れよ!遅いっていってもまだ十分帰れる時間だろ。」
ただでさえ最近は自分への思いを隠そうともせず伝えてくる正木がこの家に泊まると考えただけで、姫川の背中に嫌な汗が伝う。
「歩!そんな言い方お客さんに失礼だろ。」
しかし、祖母に注意され、姫川は仕方なく口を噤む。
「正木くん、ごめんなさいね。こんなお家でよければぜひ泊まっていってください。部屋は歩と一緒でいいかしら?」
祖母の提案に姫川の顔色が悪くなる。
「えぇ、俺たちは仲がいいですからそれで構いません。」
そして極上の笑みを湛え、祖母に返事をする正木を姫川が恨めしく睨むのだった。
正木は、さっきレストランでまぁまぁな量を食べていたにも関わらず、姫川の祖母の食事が口に合ったようで箸が進んでいた。
祖母も姫川が寮に入ってから、1人で食事をする事が増えていたため、久々の賑やかな食卓を心から楽しんでいるようだった。そんな祖母の姿を見れて、姫川はそれだけで嬉しい気持ちになった。
話しながら食事をした事で気がつけば思ったより時間が経ってしまっていたようだった。
「えっ?もうこんな時間?片付けして私はそろそろ帰ろうかな。」
話に夢中だった沙羅が何気なく時計に目を遣り、驚いた声を出す。
「いいよ。片付けは俺とばあちゃんでやっとくから。」
姫川も予想以上に時間が経っていたことに驚き、慌てて沙羅を家に帰そうとする。
「いいの?じゃあ、そうさせてもらおうかな。おばあちゃんも片付けまで出来ずすみません。」
沙羅が謝ると、祖母は優しい顔で首を左右に振った。
「いいんだよ。私も久しぶりに沙羅ちゃんと沢山話せて楽しかったよ。おうちの人が心配してはいけないし早くお帰り。」
祖母の言葉に沙羅は軽く頭を下げると急いで帰り支度をはじめる。
「送って行こうか?」
姫川が問うと、
「もう、家直ぐそこなんだら大丈夫だよ。じゃあ正木さんもまたね。会えて良かったです。」
とペコっと頭を下げるとバタバタと自分の家へ帰っていった。
「正木くんも帰りが遅くなっちゃたわね。今から帰るのも大変だし、あなたさえ良ければ泊まっていって。」
沙羅が去った後、そんな提案をする祖母に姫川は焦る。
「ばあちゃん!何言ってんだよ。帰るに決まってんだろ。」
必死に姫川が言うが、
「えっ?じゃあ泊まろっかな。」
と正木本人は満更でもなさそうだった。
「帰れよ!遅いっていってもまだ十分帰れる時間だろ。」
ただでさえ最近は自分への思いを隠そうともせず伝えてくる正木がこの家に泊まると考えただけで、姫川の背中に嫌な汗が伝う。
「歩!そんな言い方お客さんに失礼だろ。」
しかし、祖母に注意され、姫川は仕方なく口を噤む。
「正木くん、ごめんなさいね。こんなお家でよければぜひ泊まっていってください。部屋は歩と一緒でいいかしら?」
祖母の提案に姫川の顔色が悪くなる。
「えぇ、俺たちは仲がいいですからそれで構いません。」
そして極上の笑みを湛え、祖母に返事をする正木を姫川が恨めしく睨むのだった。
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