風紀委員長は××が苦手

乙藤 詩

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高校最後の夏休み

七話

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「希一を歩にも紹介したし、私たちはこれから2人でデートするわ。」
まだ会ってあまり時間も経ってないし、写真も撮っていないのに沙羅は早々に解散しようとする。
「ちょっと何でだよ。俺だって希一と会うの久しぶりだし、色々話したかったのに。」
姫川が言うと、
「だって2人で募る話もあるでしょ。此処で正木さんに会ったのも何かの縁だし、2人でゆっくりご飯でも食べたら?」
沙羅はそう言うと正木に目配せをするようにウインクをして見せた。その沙羅の態度に正木も満更じゃ無さそうな顔をする。
「そうですか?ありがとうございます。丁度、休みの間、こいつの顔が見れなくて寂しいと思ってた所です。」
余りにも正直な姫川への思いを口にする正木に希一は先ほどからずっと固まっている。ノーマルの彼には中々この状況を飲み込む事は出来なかった。別にそういったことに対して偏見があるわけでもないが、いざ自分の親友がと思うと心中複雑なようだ。
「お前はそう言うことを誰彼構わず口にするな。ここと、あの学校じゃ色々と考え方も違うんだぞ。」
姫川の学校では、男同士ということもそこまで珍しい事でもないが、世間一般に見るとまだまだ男同士の恋愛はすぐに受け入れて貰える風潮でもなかった。
「お前みたいに恋愛に奥手な奴には、四六時中気持ちを伝えてないと、進展しないだろ。」
その言葉に姫川の顔が赤くなる。
「だから、そういう事を人前で言うなって言ってんだ。」
「じゃあ2人の時なら言ってもいいんだな。」
「そういう話じゃない。」
「はいはい、もうそこまで!じゃあ後は2人で楽しくその会話の続きをしてね。私たちはもう行くから。」
いつまで続くともわからない姫川と正木の会話を沙羅が一方的に終わらせると、未だに放心状態の希一を引っ張って、あっさりその場を後にした。
有無を言わさず、2人きりにされた姫川はこれからどうしようかと考えを巡らせる。
「じゃあ、俺たちも行こうか。」
久しぶりに会った友との再会をこんな形で終わらされたのに、そんなことお構いなしに正木は姫川と行動を共にしようとしていた。
「お前とどこに行くっていうんだ?」
姫川が不服そうに言うと、正木が目を丸くする。
「えっ行かないのか?せっかく沙羅ちゃんもああ言っていたのに。」
一緒に行くのがさも当然のような正木の態度に姫川は苛立ちが募る。
「行くわけないだろ。俺は今日あの2人と会うためにここに来たんだから、それが出来ないなら帰る。」
姫川はそう言うと、踵を返し歩き出す。そんな姫川の態度に流石の正木も慌て、後をついていく。
「おい、待てよ。」
正木は姫川を制止しようとするが、姫川はそのままずんずんと歩いていくのだった。
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