風紀委員長は××が苦手

乙藤 詩

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高校最後の夏休み

六話

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「お前、何で此処にー」
「そんな事はどうだっていい。そいつは誰だって聞いてんだ。」
何故正木が此処にいるのか、どうして怒っているのか、何一つ理解できない姫川が答えに窮していると、
「お待たせ~。えっ?これはどういう状況?えっ?誰?」
と沙羅が帰ってきて直ぐ困惑した様子で呟いた。
「あぁ、こいつは俺と同じ学校の生徒会長で正木だ。」
姫川がこの状況を取り敢えず落ち着かせる為、2人に正木を紹介する。すると、沙羅が目を輝かせた。
「えぇー!貴方が生徒会長さんなんですね。お話はいつも歩から聞いてます。」
姫川を下の名前で呼ぶ親しげな沙羅に正木が盛大に顔を歪ませる。
「歩の友達ってなんか怒ってるの?」
その正木の表情に希一も恐々姫川に尋ねる。
姫川はこの状況に溜息を漏らした。まさか正木とこんな所で会うなんて、夢にも思っていなかった姫川は中学時代のノリで友達と戯れあっていた自分に少し恥ずかしさを感じた。
「正木。この2人は中学時代の俺の友達だ。こっちが沙羅で、こっちが希一。」
険しい表情のままの正木に姫川が2人を淡々と紹介していく。
「沙羅は幼い頃から家も近くて、幼馴染みたいなもんだ。今日は沙羅の彼氏を紹介してもらう予定だったんだが、それがこいつだったから俺も驚いていたところだ。」
説明を終えて、沙羅と希一が付き合っていると知った正木は態度を幾分か柔らかくした。
「そうだったのか。それは失礼な態度を取ってしまったな。改めまして、俺は正木恭治といいます。姫川とは委員会で関わることが多くて、そこから親しくなりました。今は姫川と何とかお付き合いできないかと、頑張ってアプローチしているところです。ゆくゆくはお二人みたいな関係になれるといいんですけどー」
「おい!何言ってんんだ!」
正木の自己紹介の内容に焦った姫川が急いで正木の言葉を遮ろうとする。
その横で、沙羅は口を手で押さえ、希一はポカンと口を開けている。
「でも驚いたな。うちの学校じゃ殆ど人と関わろうとしていなかった姫川にこんな親しい仲の友達がいたとはな。」
姫川は正木の爆弾発言から立ち直れず、額を手で押さえて項垂れていた。
そんな中、目を輝かせたままの沙羅が正木の言葉に口を開いた。
「元々、歩は友達が多かったんですよ。その中でも希一とは特別仲が良かったんです。でも高校の入学に関しては、歩も色々事情があるので、その為に人とあまり深く関わらないようにしているんです。」
沙羅の言葉に正木が首を捻る。
「色々な事情?」
その事情が気になった正木は沙羅にそれを聞こうとするがその前に、
「お前はペラペラと喋りすぎだ。」
と姫川が沙羅のおでこを小突く。
「痛ーい。」
沙羅が大袈裟に額を押さえて痛がって見せると、
「おい!沙羅に何してんだよ。痛がってるじゃないか!」
と希一が直ぐに沙羅を心配した。
「歩、酷いよ。私は歩の事を知ってくれる人が1人でも居てくれた方が安心かなと思って言っただけなのに。」
絶対に沙羅は俺たちの関係を楽しんでるだろ。
沙羅の魂胆が分かった姫川はやれやれと息と吐き、幼馴染の強かさを恨めしく思うのだった。
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