風紀委員長は××が苦手

高校最後の夏休み

五話

写真が撮りたいと言う沙羅の言葉で、3人はゲームセンターまで来ていた。どうやら沙羅の言う写真とはプリクラのことのようだった。姫川はそういったものがとても苦手だったが、いつも自分の話を聞いてくれる沙羅に感謝もあったので、無下に断れなかった。
希一は沙羅にベタ惚れのようで沙羅の言うことに従う以外の選択肢はないようだ。
3人は早速近くのゲームセンターに向かったが、着いて早々、
「ちょっとお手洗いに行ってくるね。」
と、沙羅がトイレへと向かった。
それから暫く待っているが、なかなか沙羅は帰ってこない。
「女の人はトイレが長いって言うけど、本当だったんだな。」
姫川が呆れたように言うと、
「多分化粧でも直してんじゃない？」
と特に何でもないことのように希一が言う。
「毎回こんなに待つの嫌にならないのか？」
姫川が希一に聞くと、
「いや？別に。寧ろ、俺のために綺麗にしてくれてると思ったらさぁ、なんか嬉しくない？愛おしくない？」
惚気全開の目の前の親友に姫川はまたしても呆れる。
「お前って沙羅の事が本当に好きなんだな。」
姫川の言葉に希一が双眸を細める。
「あぁ、ずっと好きだったんだ。思いが通じて、今でも夢なんじゃないかと思う時があるよ。」
その希一の顔があまりにも優しい顔つきだったので、暫し魅入っていると希一の手が急に姫川の顔に伸びてきた。
「あんまり見るんじゃねぇよ。嫉妬しなくても俺はちゃんとお前の事も好きだからな。」
手で姫川の目を覆いながら、希一が言う。
「はぁ、そうか･･･それは有難いな。」
姫川は希一の手を払い除けながら、溜息混じりに心のこもってない声で返す。
「本当にお前は友達甲斐のない奴だな。」
そう言いながら、希一が姫川の頭を乱暴に撫でる。
「お前っ、いつもそうやって頭を撫でるのやめろよ。」
久々の友との再会に周りの目も気にせず戯れあっていると、
「そいつ誰だ？」
突然姫川の後ろから低い声が聞こえた。
その声に聞き覚えがあった姫川は驚いて振り返る。
「正木･･･。」
少し怒気を孕んで真顔で立っているその人物の顔を見て、姫川が小さく呟いた。