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高校最後の夏休み
四話
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正木は夏休みに入ってから、とても退屈した日々を送っていた。
偶に、寮で流などと会って話したりもしたが、それでも味気ない日々には変わりなかった。
姫川や柏木に会わない事がこんなにも退屈になるとは正木自身も思っていなかった。
去年はどうやって過ごしていたかな。
去年は姫川とも仲良くなかったし、柏木とも出会っていない。今の生活が充実したことで、正木は去年の夏休みをどう過ごしたか思い出すことが出来なくなっていた。
はぁ、早めに実家に帰るか。
寮の部屋で溜息を吐く。特に此処にいても楽しくない日々に、正木はお盆の前に実家に帰る事にした。
頭にはいつも姫川の顔が浮かぶ。
誰に対しても見せる冷静な顔も、時々笑う顔も、真っ赤な顔も、慌てる顔も鮮明に思い出す事が出来る。
早く会いてぇな。
正木はゴロンと自室のベットで寝転ぶと、日差しが差し込んで明るくなった部屋で、目を閉じる。
暫しの間、姫川の事を頭に思い浮かべながら浅い眠りについた。
正木が実家に帰ってから、数日が過ぎた。両親は正木が突然早く帰って来たことで驚いていたが、笑顔を浮かべて歓迎してくれた。
しかし、両親も共働きのため、正木と関われる時間は然程多くなかった。
実家に帰って両親の顔を久々に見れたことでホッとしたような気分にはなったが、退屈な毎日には変わりなかった。
そんな時、中学時代の友達から連絡が来た。お盆に会う約束はしていたが早めに連絡が来たことに軽く首を傾げる。
理由を聞けば、正木の母が友達の親に正木が早く帰って来たことを話したようだった。
特に予定もなく暇を持て余していた正木は、4~5人でカラオケに行くという友達の誘いを快く了承した。
正木が待ち合わせ場所に行くと既に2人は集まっていた。
正木を見つけると、手を振りながら大声を上げる。
「おぉ、久しぶりだな!元気だったか。」
「元気じゃなかったら来てねぇよ。」
友達の言葉に正木が返す。
「相変わらずだな。ってか、背がまた高くなったんじゃないのか。どんどんでかくなりやがって。ふざけんなよ!」
「お前は変わらずコンパクトだな。いつ会っても変わらないからもう伸びないんじゃない?」
「うるせぇ!伸びてんだよ!お前が急激にデカくなりすぎなの!」
久しぶりの再会とは思えないほどポンポンと会話が弾む。久々に正木は楽しい気分になっていた。
「あいつら来ないな。」
ふと、他の2人が来ない事に不満を漏らす友達に正木が口を開く。
「別に子どもでもないんだし、先にカラオケに行っとけばいいんじゃない?」
「それもそうだな。」
「行こうぜ。」
正木の言葉に2人も頷くと、カラオケに向かって歩き出した。正木もそれに倣って2人に続こうとすると、ふと道向かいのゲームセンターが目に入った。
そしてゲームセンターの前にいる男2人に目が釘付けになる。
暫しその場に立ち止まっていたが、正木は気づいたら、ゲームセンターに向かって走り出していた。
「おい!」
「なんだよ!急に。」
正木の行動に驚いたように声を荒げる友達に
「悪い!急用ができた!」
と言いながら、脇目も振らず走り始めた。
「なんだよ。あいつ・・・」
その場に残された2人の呟きはもう正木の耳には届いていなかった。
偶に、寮で流などと会って話したりもしたが、それでも味気ない日々には変わりなかった。
姫川や柏木に会わない事がこんなにも退屈になるとは正木自身も思っていなかった。
去年はどうやって過ごしていたかな。
去年は姫川とも仲良くなかったし、柏木とも出会っていない。今の生活が充実したことで、正木は去年の夏休みをどう過ごしたか思い出すことが出来なくなっていた。
はぁ、早めに実家に帰るか。
寮の部屋で溜息を吐く。特に此処にいても楽しくない日々に、正木はお盆の前に実家に帰る事にした。
頭にはいつも姫川の顔が浮かぶ。
誰に対しても見せる冷静な顔も、時々笑う顔も、真っ赤な顔も、慌てる顔も鮮明に思い出す事が出来る。
早く会いてぇな。
正木はゴロンと自室のベットで寝転ぶと、日差しが差し込んで明るくなった部屋で、目を閉じる。
暫しの間、姫川の事を頭に思い浮かべながら浅い眠りについた。
正木が実家に帰ってから、数日が過ぎた。両親は正木が突然早く帰って来たことで驚いていたが、笑顔を浮かべて歓迎してくれた。
しかし、両親も共働きのため、正木と関われる時間は然程多くなかった。
実家に帰って両親の顔を久々に見れたことでホッとしたような気分にはなったが、退屈な毎日には変わりなかった。
そんな時、中学時代の友達から連絡が来た。お盆に会う約束はしていたが早めに連絡が来たことに軽く首を傾げる。
理由を聞けば、正木の母が友達の親に正木が早く帰って来たことを話したようだった。
特に予定もなく暇を持て余していた正木は、4~5人でカラオケに行くという友達の誘いを快く了承した。
正木が待ち合わせ場所に行くと既に2人は集まっていた。
正木を見つけると、手を振りながら大声を上げる。
「おぉ、久しぶりだな!元気だったか。」
「元気じゃなかったら来てねぇよ。」
友達の言葉に正木が返す。
「相変わらずだな。ってか、背がまた高くなったんじゃないのか。どんどんでかくなりやがって。ふざけんなよ!」
「お前は変わらずコンパクトだな。いつ会っても変わらないからもう伸びないんじゃない?」
「うるせぇ!伸びてんだよ!お前が急激にデカくなりすぎなの!」
久しぶりの再会とは思えないほどポンポンと会話が弾む。久々に正木は楽しい気分になっていた。
「あいつら来ないな。」
ふと、他の2人が来ない事に不満を漏らす友達に正木が口を開く。
「別に子どもでもないんだし、先にカラオケに行っとけばいいんじゃない?」
「それもそうだな。」
「行こうぜ。」
正木の言葉に2人も頷くと、カラオケに向かって歩き出した。正木もそれに倣って2人に続こうとすると、ふと道向かいのゲームセンターが目に入った。
そしてゲームセンターの前にいる男2人に目が釘付けになる。
暫しその場に立ち止まっていたが、正木は気づいたら、ゲームセンターに向かって走り出していた。
「おい!」
「なんだよ!急に。」
正木の行動に驚いたように声を荒げる友達に
「悪い!急用ができた!」
と言いながら、脇目も振らず走り始めた。
「なんだよ。あいつ・・・」
その場に残された2人の呟きはもう正木の耳には届いていなかった。
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