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高校最後の夏休み
三話
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夏休みに入って2週間が過ぎた。この2週間は特に何をするわけでもなかったが、たまに祖母の代わりに店番をしたり、気の向くままに散歩を楽しんだり、沙羅と会ったりと姫川にとっては充実した毎日だった。
慌ただしい学園生活を送っていただけに、ここでのゆったりした生活が姫川には何より楽しかった。
今日は、とうとう沙羅の彼氏を紹介してもらう日だった。朝に少しだけ沙羅に会い、その後は昼過ぎに現地集合となった。
姫川は若干緊張していたが、当の沙羅はとても落ち着いていて、何だか釈然としなかったが、沙羅の彼氏に会うこと自体は楽しみだった。
昼過ぎに約束の場所に向かう。姫川の地元ではまぁまぁ栄えた場所で待ち合わせをした。
レストランやデパート、ゲームセンターにカラオケなど、大体のことはここに集まれば楽しめた。
少し早く着き過ぎたかな。
家に居ても落ち着かなかった姫川は、結局早めに家を出て此処にきてしまったのだ。
背が高く、髪を下ろしていると、雰囲気も柔らかい姫川は通行人の視線を集めていたが、姫川はそんな事に全く気づかず、沙羅の彼氏に思いを巡らせる。
中学時代、そこそこモテていた沙羅だが、あまり恋愛に興味はなさそうだった。姫川の友達の中にも沙羅の事が好きな奴が居たが、あまり相手にしていない様子だった。
そんな沙羅が選んだ人物。その相手ともうすぐ会えると思うと、自然と胸が弾んだ。
姫川が暫くそこで待っていると、
「ごめん!待った?」
と後ろから沙羅の声がした。
自然にそちらの方に目を向け、姫川は目を見開いた。
「おう歩、久しぶりだな。」
そこに立っていたのは、姫川の中学時代の親友で、正に中学時代、沙羅に一目惚れし恋をしていた人物だった。
「希一、お前なんで?」
驚きの余り、それしか言えない姫川に沙羅が口を開く。
「いやぁ、歩を驚かせようと思って黙ってたんだよね。まさか私が希一と付き合うとは夢にも思っていなかったでしょ?」
姫川はてっきり知らない相手と会うと思っていたので、混乱していた。
早乙女希一は姫川の親友で中学時代は殆どの時間をこの男と過ごした。他にも仲のいい友だちが数人いて、そのグループの1人だった。入学早々、沙羅に一目惚れし、告白すること数十回。一回も頷いてもらえる事なく、卒業したのだがまさかそんな2人が付き合うことになっていたと姫川は夢にも思わなかった。
「いや、あんなにあっさり振られてたのにどうしてこんな事になってんだ?」
とても失礼な事を口にする姫川だが、混乱の余り、その事にさえ気づいてなかった。
「酷い事言うなよ。傷つくだろうが。」
希一の言葉に自分の失言を理解した姫川は
「悪かった。」
と素直に謝った。
「まぁ、情が移っちゃったのかな。断っても、断っても諦めない姿に根負けしちゃったのかも。」
沙羅が2人に割って入るように口を開く。
「でも、今は一緒に居れて楽しいよ。」
そう言って、希一を見て笑う沙羅は何処からどう見ても恋する女の子だった。
それを希一が愛おしそうに見つめ返す。
2人の幸せそうな姿を目の当たりにした姫川は笑みを溢した。
「長年の思いが実って良かったな。希一。おめでとう。」
素直に祝福する姫川に希一が人懐っこい笑みを見せた。そして姫川の頭をクシャクシャと撫でる。
「お前は!本当にいい奴だな。久しぶりに会えて嬉しいよ。」
「おい、やめろ!」
人目も憚らず、スキンシップを図る希一を姫川が必死に止める。それを沙羅が嬉しそうな顔で眺めていた。
慌ただしい学園生活を送っていただけに、ここでのゆったりした生活が姫川には何より楽しかった。
今日は、とうとう沙羅の彼氏を紹介してもらう日だった。朝に少しだけ沙羅に会い、その後は昼過ぎに現地集合となった。
姫川は若干緊張していたが、当の沙羅はとても落ち着いていて、何だか釈然としなかったが、沙羅の彼氏に会うこと自体は楽しみだった。
昼過ぎに約束の場所に向かう。姫川の地元ではまぁまぁ栄えた場所で待ち合わせをした。
レストランやデパート、ゲームセンターにカラオケなど、大体のことはここに集まれば楽しめた。
少し早く着き過ぎたかな。
家に居ても落ち着かなかった姫川は、結局早めに家を出て此処にきてしまったのだ。
背が高く、髪を下ろしていると、雰囲気も柔らかい姫川は通行人の視線を集めていたが、姫川はそんな事に全く気づかず、沙羅の彼氏に思いを巡らせる。
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そんな沙羅が選んだ人物。その相手ともうすぐ会えると思うと、自然と胸が弾んだ。
姫川が暫くそこで待っていると、
「ごめん!待った?」
と後ろから沙羅の声がした。
自然にそちらの方に目を向け、姫川は目を見開いた。
「おう歩、久しぶりだな。」
そこに立っていたのは、姫川の中学時代の親友で、正に中学時代、沙羅に一目惚れし恋をしていた人物だった。
「希一、お前なんで?」
驚きの余り、それしか言えない姫川に沙羅が口を開く。
「いやぁ、歩を驚かせようと思って黙ってたんだよね。まさか私が希一と付き合うとは夢にも思っていなかったでしょ?」
姫川はてっきり知らない相手と会うと思っていたので、混乱していた。
早乙女希一は姫川の親友で中学時代は殆どの時間をこの男と過ごした。他にも仲のいい友だちが数人いて、そのグループの1人だった。入学早々、沙羅に一目惚れし、告白すること数十回。一回も頷いてもらえる事なく、卒業したのだがまさかそんな2人が付き合うことになっていたと姫川は夢にも思わなかった。
「いや、あんなにあっさり振られてたのにどうしてこんな事になってんだ?」
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「酷い事言うなよ。傷つくだろうが。」
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と素直に謝った。
「まぁ、情が移っちゃったのかな。断っても、断っても諦めない姿に根負けしちゃったのかも。」
沙羅が2人に割って入るように口を開く。
「でも、今は一緒に居れて楽しいよ。」
そう言って、希一を見て笑う沙羅は何処からどう見ても恋する女の子だった。
それを希一が愛おしそうに見つめ返す。
2人の幸せそうな姿を目の当たりにした姫川は笑みを溢した。
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素直に祝福する姫川に希一が人懐っこい笑みを見せた。そして姫川の頭をクシャクシャと撫でる。
「お前は!本当にいい奴だな。久しぶりに会えて嬉しいよ。」
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