53 / 200
嵐のような怒涛の1学期
五十二話
しおりを挟む
姫川が校庭裏から逃げるように走って教室に戻っていると、途中の廊下で人とぶつかりかけた。
「おっと。」
驚いた相手が両手を上げながら身を躱す。その声に余りに聞き覚えがあったので、姫川は俯いていた顔をハッとあげた。
「何だ。姫川か。珍しいな。お前が走っているなんて。」
突然の正木の登場に姫川は目を見開いた。クラスメイトと一緒に歩いていた正木は姫川の顔を見ると口を開いた。
「どうした?なんかあったのか?」
先程までの嬉しそうな顔を引っ込めて今度は心配そうに正木は声を出す。
「いや、何でもない。ボーッと飯を食ってたら予想以上に時間が経っていて少し焦っただけだ。」
姫川が柏木の事で動揺したのを悟られないよう、適当に誤魔化す。すると、正木が笑顔で姫川の頬に手を当てる。
「ボーッとしてたって昨日の事を思い出してたのか?」
余りに野生的なその顔を思わず姫川は見つめる。しかし直ぐに言われた言葉を理解して、姫川は顔を赤くした。
「そんな訳あるか。調子に乗るな。」
「そうか?」
姫川の表情の変化に満更でもなさそうに正木が微笑む。隣のクラスメイト達はそんな2人を見て驚きの余り固まっていた。一体昨日この2人に何があったのか、気にせずにはいられなかった。
姫川はそんなつもりはないのに、何となく甘ったらしい空気に居心地の悪さを感じる。正木のクラスメイトにそんな様子を見られていると思うと一刻も早く此処から去ってしまいたかった。
「もうすぐ授業が始まるぞ。」
姫川はそれだけ返すと正木から離れた。
「姫川ってあんな顔もするんだな。」
「お前らは見るんじゃねぇよ。」
クラスメイトと正木のやりとりを背中で聞きながら、姫川は教室へと歩みを進める。正木との一瞬の絡みで、柏木に対する不安な気持ちが消えていたことに姫川は気づいていなかった。
「おっと。」
驚いた相手が両手を上げながら身を躱す。その声に余りに聞き覚えがあったので、姫川は俯いていた顔をハッとあげた。
「何だ。姫川か。珍しいな。お前が走っているなんて。」
突然の正木の登場に姫川は目を見開いた。クラスメイトと一緒に歩いていた正木は姫川の顔を見ると口を開いた。
「どうした?なんかあったのか?」
先程までの嬉しそうな顔を引っ込めて今度は心配そうに正木は声を出す。
「いや、何でもない。ボーッと飯を食ってたら予想以上に時間が経っていて少し焦っただけだ。」
姫川が柏木の事で動揺したのを悟られないよう、適当に誤魔化す。すると、正木が笑顔で姫川の頬に手を当てる。
「ボーッとしてたって昨日の事を思い出してたのか?」
余りに野生的なその顔を思わず姫川は見つめる。しかし直ぐに言われた言葉を理解して、姫川は顔を赤くした。
「そんな訳あるか。調子に乗るな。」
「そうか?」
姫川の表情の変化に満更でもなさそうに正木が微笑む。隣のクラスメイト達はそんな2人を見て驚きの余り固まっていた。一体昨日この2人に何があったのか、気にせずにはいられなかった。
姫川はそんなつもりはないのに、何となく甘ったらしい空気に居心地の悪さを感じる。正木のクラスメイトにそんな様子を見られていると思うと一刻も早く此処から去ってしまいたかった。
「もうすぐ授業が始まるぞ。」
姫川はそれだけ返すと正木から離れた。
「姫川ってあんな顔もするんだな。」
「お前らは見るんじゃねぇよ。」
クラスメイトと正木のやりとりを背中で聞きながら、姫川は教室へと歩みを進める。正木との一瞬の絡みで、柏木に対する不安な気持ちが消えていたことに姫川は気づいていなかった。
57
お気に入りに追加
418
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。
とうふ
BL
題名そのままです。
クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
好きな人がカッコ良すぎて俺はそろそろ天に召されるかもしれない
豆ちよこ
BL
男子校に通う棚橋学斗にはとってもとっても気になる人がいた。同じクラスの葛西宏樹。
とにかく目を惹く葛西は超絶カッコいいんだ!
神様のご褒美か、はたまた気紛れかは知らないけど、隣同士の席になっちゃったからもう大変。ついつい気になってチラチラと見てしまう。
そんな学斗に、葛西もどうやら気付いているようで……。
□チャラ王子攻め
□天然おとぼけ受け
□ほのぼのスクールBL
タイトル前に◆◇のマークが付いてるものは、飛ばし読みしても問題ありません。
◆…葛西視点
◇…てっちゃん視点
pixivで連載中の私のお気に入りCPを、アルファさんのフォントで読みたくてお引越しさせました。
所々修正と大幅な加筆を加えながら、少しづつ公開していこうと思います。転載…、というより筋書きが同じの、新しいお話になってしまったかも。支部はプロット、こちらが本編と捉えて頂けたら良いかと思います。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる