風紀委員長は××が苦手

乙藤 詩

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嵐のような怒涛の1学期

五十二話

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姫川が校庭裏から逃げるように走って教室に戻っていると、途中の廊下で人とぶつかりかけた。
「おっと。」
驚いた相手が両手を上げながら身を躱す。その声に余りに聞き覚えがあったので、姫川は俯いていた顔をハッとあげた。
「何だ。姫川か。珍しいな。お前が走っているなんて。」
突然の正木の登場に姫川は目を見開いた。クラスメイトと一緒に歩いていた正木は姫川の顔を見ると口を開いた。
「どうした?なんかあったのか?」
先程までの嬉しそうな顔を引っ込めて今度は心配そうに正木は声を出す。
「いや、何でもない。ボーッと飯を食ってたら予想以上に時間が経っていて少し焦っただけだ。」
姫川が柏木の事で動揺したのを悟られないよう、適当に誤魔化す。すると、正木が笑顔で姫川の頬に手を当てる。
「ボーッとしてたって昨日の事を思い出してたのか?」
余りに野生的なその顔を思わず姫川は見つめる。しかし直ぐに言われた言葉を理解して、姫川は顔を赤くした。
「そんな訳あるか。調子に乗るな。」
「そうか?」
姫川の表情の変化に満更でもなさそうに正木が微笑む。隣のクラスメイト達はそんな2人を見て驚きの余り固まっていた。一体昨日この2人に何があったのか、気にせずにはいられなかった。
姫川はそんなつもりはないのに、何となく甘ったらしい空気に居心地の悪さを感じる。正木のクラスメイトにそんな様子を見られていると思うと一刻も早く此処から去ってしまいたかった。
「もうすぐ授業が始まるぞ。」
姫川はそれだけ返すと正木から離れた。
「姫川ってあんな顔もするんだな。」
「お前らは見るんじゃねぇよ。」
クラスメイトと正木のやりとりを背中で聞きながら、姫川は教室へと歩みを進める。正木との一瞬の絡みで、柏木に対する不安な気持ちが消えていたことに姫川は気づいていなかった。
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