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嵐のような怒涛の1学期
四十九話
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姫川は委員会が終わった後、寮のスーパーに寄ると、適当な食材を買い込んだ。本当に変な約束をしてしまったものだと、姫川は溜息を吐いた。
寮の自室に帰ると、食材をしまい直ぐに風呂に入る。今日は柏木とのことがあり、かなり体が疲れていた。この疲れと、柏木に触れられた部分を洗い流したくて、いつもより強めのシャワーを頭から被る。風呂から上がると少しさっぱりして気分が落ち着いた。
一旦柏木のことは頭の隅に追いやり、姫川は早速食事作りに取り掛かった。腰にエプロンを引っ掛け食材を要領よく下準備していく。
姫川は料理をするのが嫌いではない。手の込んだ料理は得意ではなかったが、料理をしている間は小難しい事を考えず、作業に没頭できるので、今日みたいな日には逆に有り難かった。
食材を全て鍋に入れて煮込んでいると、ドアをノックする音が聞こえた。
姫川がドアを開けると目の前の人物に声をかける。
「早かったな。そんなに腹が減ってたのか?」
「いや、お前の顔が早く見たくてな。」
正木が笑って姫川に言葉を返す。姫川はそれを冗談と受け止め無表情で部屋に通す。
「姫川ってエプロンとかもするんだな。」
姫川をマジマジと見ながら嬉しそうに正木が言う。
「どうせ似合ってないとか碌でもない事思ってるんだろ?」
「いや、よく似合ってるよ。なんか、風呂上がりにエプロンって絶妙にエロいよな。」
「・・・。」
正木の言葉に姫川は言葉を失う。こういうことを平気で自分に言う正木の神経がよくわからなかった。
「まだ、ご飯が出来るまでに時間が掛かるから適当に過ごしていてくれ。」
姫川がサラダでも作ろうとすると、ソファーに座っていた正木が立ち上がり側までやって来る。
「飯はまだだって言ってんだろ。」
姫川が言うと、
「何か手伝おうか?ずっと座ってんのも暇だしな。」
と正木が言った。正木の提案に姫川は軽く驚いた。
「まさか正木が手伝うと言うとは思わなかったな。じゃあ、そこのレタスをちぎってもらってもいいか?」
姫川がザルにあげたレタスを指差すと
「任せろ。」
と正木が腕まくりをした。
正木がレタスをちぎり、姫川が食材を煮込んだ鍋にルーを入れてかき混ぜる。たちまち室内がカレーのいい匂いで満たされた。
「おっ?今日はカレーか?いい匂いだな。一気に腹が減った。」
正木が嬉しそうに声を上げる。
「あぁ、簡単なもので悪いがな。手の込んだ料理はできないんだ。」
「いやいや、十分だ。早く食いたい。」
正木はそう言うと、ルーをかき混ぜている姫川の肩に顎をのせ、鍋を覗き見る。
「お前、距離が近いって。」
姫川が正木の顔を手で押し除ける。
「なんだよ。もしかして、俺に何かされると思って期待してんのか?」
正木の言葉に姫川が嫌そうな顔をする。
「警戒してるの間違いだろ。はぁ、冗談ばっかり言ってないでレタスがちぎれたなら、ちょっと座っててくれ。気が散る。」
姫川に邪険に扱われ、渋々正木はまたソファーに腰をおろした。
それから程なくして、姫川がエプロンを外しサラダやカレーを机に運び始めた。
姫川の作ったカレーは少し野菜を大きめにカットしており、それが柔らかく煮たって見ているだけで食欲をそそった。
「よし、食うか。」
一通り皿や飲み物を運び終えた姫川が正木の横に腰をおろした。
目の前には美味しそうなご飯、横には姫川が座り、正木は嬉しさで顔を綻ばせる。そんな正木の様子に気づかない姫川は
「いただきます。」
と礼儀よく挨拶をすると、無心でカレーを頬張るのだった。
寮の自室に帰ると、食材をしまい直ぐに風呂に入る。今日は柏木とのことがあり、かなり体が疲れていた。この疲れと、柏木に触れられた部分を洗い流したくて、いつもより強めのシャワーを頭から被る。風呂から上がると少しさっぱりして気分が落ち着いた。
一旦柏木のことは頭の隅に追いやり、姫川は早速食事作りに取り掛かった。腰にエプロンを引っ掛け食材を要領よく下準備していく。
姫川は料理をするのが嫌いではない。手の込んだ料理は得意ではなかったが、料理をしている間は小難しい事を考えず、作業に没頭できるので、今日みたいな日には逆に有り難かった。
食材を全て鍋に入れて煮込んでいると、ドアをノックする音が聞こえた。
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「いや、お前の顔が早く見たくてな。」
正木が笑って姫川に言葉を返す。姫川はそれを冗談と受け止め無表情で部屋に通す。
「姫川ってエプロンとかもするんだな。」
姫川をマジマジと見ながら嬉しそうに正木が言う。
「どうせ似合ってないとか碌でもない事思ってるんだろ?」
「いや、よく似合ってるよ。なんか、風呂上がりにエプロンって絶妙にエロいよな。」
「・・・。」
正木の言葉に姫川は言葉を失う。こういうことを平気で自分に言う正木の神経がよくわからなかった。
「まだ、ご飯が出来るまでに時間が掛かるから適当に過ごしていてくれ。」
姫川がサラダでも作ろうとすると、ソファーに座っていた正木が立ち上がり側までやって来る。
「飯はまだだって言ってんだろ。」
姫川が言うと、
「何か手伝おうか?ずっと座ってんのも暇だしな。」
と正木が言った。正木の提案に姫川は軽く驚いた。
「まさか正木が手伝うと言うとは思わなかったな。じゃあ、そこのレタスをちぎってもらってもいいか?」
姫川がザルにあげたレタスを指差すと
「任せろ。」
と正木が腕まくりをした。
正木がレタスをちぎり、姫川が食材を煮込んだ鍋にルーを入れてかき混ぜる。たちまち室内がカレーのいい匂いで満たされた。
「おっ?今日はカレーか?いい匂いだな。一気に腹が減った。」
正木が嬉しそうに声を上げる。
「あぁ、簡単なもので悪いがな。手の込んだ料理はできないんだ。」
「いやいや、十分だ。早く食いたい。」
正木はそう言うと、ルーをかき混ぜている姫川の肩に顎をのせ、鍋を覗き見る。
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姫川が正木の顔を手で押し除ける。
「なんだよ。もしかして、俺に何かされると思って期待してんのか?」
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「警戒してるの間違いだろ。はぁ、冗談ばっかり言ってないでレタスがちぎれたなら、ちょっと座っててくれ。気が散る。」
姫川に邪険に扱われ、渋々正木はまたソファーに腰をおろした。
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「よし、食うか。」
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目の前には美味しそうなご飯、横には姫川が座り、正木は嬉しさで顔を綻ばせる。そんな正木の様子に気づかない姫川は
「いただきます。」
と礼儀よく挨拶をすると、無心でカレーを頬張るのだった。
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