風紀委員長は××が苦手

乙藤 詩

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嵐のような怒涛の1学期

四十五話

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姫川は正木の部屋を後にすると、寮の自室に戻った。そこで初めて柏木の事を相談し損ねたことに気づいた。
しかし、流の事であんなに落ち込んでいたのに、その上柏木までも裏切り者かもしれないということを今の正木に伝えるべきではないと直ぐに思い直した。
本当の所、姫川は柏木が苦手だった。馬鹿な言動と行動で散々周りを振り回すくせに、時々自分に見せるジトッとした視線が堪らなく気持ち悪かった。出来ればあまり1人で関わりたくはない。だから正木に相談しようとしたのだ。姫川は仕方なくその手段を諦める。自分の苦手意識のために正木を利用しているようで気が引けた。
姫川はふぅと一度溜息を吐くと、疲れた体を引き摺ってそのままバスルームへと向かった。

正木は姫川と別れた後、少し眠った。起きた時には気分も体も大分軽くなっていた。正木は姫川のことを思う。今まで嫌悪感を隠しもせず、ぶつけてきた。姫川の体質を知った後は揶揄ったり、強引に迫ったりもした。しかし、姫川はなんだかんだと正木の側に居た。今日だって、体調の悪い自分を気遣ったり、落ち込んでる自分に声を掛けたり。今まで殆ど接したこともなかったので知らなかったが、姫川はかなりの世話好きらしい。いつもは冷静でどこまでも冷徹な雰囲気だが、自分に近しい人間が困っている時には甲斐甲斐しいくらいに世話を焼く。
くそっ、あんな態度だと俺も勘違いしそうになるだろうがっ!
心の中で正木は悪態を吐く。だが姫川の言葉で心が軽くなったのも本当だった。実際、流に拒否された時はかなり気が滅入っていた。しかし、不思議なくらい姫川と話した後は心が落ち着いた。やはり姫川は自分にとって特別な存在だと、改めて認識することができた。
正木は軽くなった体で一度伸びをすると、
「よしっ!」
と自分に気合を入れ、もう一度流と話し合う事にした。
これでダメなら諦めよう。
正木はその代わり自分の今の想いを精一杯流に伝えようと心に決めた。
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