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嵐のような怒涛の1学期
四十三話
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3人だけになった多目的教室で早速姫川は話を切り出した。
「お前達に聞きたいことがある。先ず優木。お前は流のリコールの噂を誰から聞いた?」
「・・・。」
姫川の問いかけに答えることなく、優木は無表情で黙る。
「そもそも今回のことはお前の話を鵜呑みにした流が起こしたことだ。根拠のない話を流にしたお前にも責任はあるんだぞ。」
「それは、本当にリコールの話なんて無かったってことですか?」
優木の言葉に何故か梓が不貞腐れたように返す。
「だから、恭治はそんなことしないって言ってるじゃん。もう本当に馬鹿。しかも誤解で恭治にあんなことしたと思うと殺しても足らないくらいだよ。」
過激な発言をする梓を姫川が睨む。
「お前は黙ってろ。優木、誰からその話を聞いたか知らないが、その話は出鱈目で真実じゃない。」
すると、優木の瞳に怒りの感情が宿る。
「くそっ、あいつら嘘の情報を俺に流しやがって。」
いつもの丁寧な口調ではなく、荒い言葉遣いに優木の怒りの度合いが伝わってくる。
「誰だ?お前にその情報を流したのは?」
「・・・津田と戸田です。いや、正確には柏木からその話を聞いた津田と戸田が流を心配して俺に教えてくれたんです。親切だと思っていましたが、まさかそれが嘘だったなんて。」
それだけ言うと優木は拳を握った。
「どうして、真意を確かめず、その話を鵜呑みにしたんだ?」
これ以上、優木を追い詰めることは得策じゃないと思いながらも、姫川は聞かずにはいられなかった。
「だって、柏木と正木はとても仲が良いでしょう。正木も柏木のことは信頼している様子でしたし。まさか正木が柏木に嘘の情報を流すなんて思わなかったんです。」
「ちょっと!恭治が嘘の情報を流したみたいに言わないでもらえる?」
正木を疑うような発言に直ぐに梓が反応する。
「柊は少し落ち着け。それで、お前は正木の怪我が流の仕業だって誰から聞いたんだ?」
今度は質問の相手を梓にかえて、姫川が質問をする。
「本人からだよ。」
太々しく答える梓に、姫川は目を丸くする。
「流がお前に、正木を傷つけた事を告白したのか?」
姫川の質問に梓がハッと鼻で笑う。
「姫川ってマジで馬鹿なんだね。流が僕に正直にそんなこと言うわけないじゃん。流が柏木にその事を相談しているのを偶々聞いたんだよ。本人が言ってるんだから、僕の情報は信憑性があるだろ?」
「!?」
梓の言葉に姫川は言葉を失う。優木と梓、2人の話に共通して出てくるのは、柏木だった。
やはりあいつが裏で糸を引いてたのか?
そう考えて、姫川は悪寒がした。しかし、本当に偶々その現場に梓が遭遇した可能性もまだ捨てきれない。
「どこでその話を聞いた?」
姫川は緊張した面持ちで梓に問いかける。姫川のいつもと違う様子に戸惑いながらも梓が答える。
「僕はあの日多目的教室に呼び出されたんだ。よくあるんだよ。僕に告白しようとする奴が空き教室に僕を呼びつけることがね。それで多目的教室に行ったら、中で柏木と流の話し声がした。柏木の声がやたらと大きかったから、話は筒抜けだったよ。あいつ馬鹿だから、声の調整とかできないんだろ?」
「柏木は2年で学年トップの成績ですよ。」
横から優木が言った。
「・・・。」
「・・・。」
教室が一瞬静寂に包まれる。
「えっ?じゃあ何?流のリコールの話も、恭治の怪我を僕に伝えたのも、全部柏木の仕業だってことなの?」
困惑したように梓が言葉を発する。優木も予想外の展開に言葉がないようだった。
「一体何の為にそんなこと・・・」
梓が両手で自分の体を守るようにして言う。
「取り敢えずこのことは他の奴には言わないでほしい。俺が直接柏木と話をしてみる。」
「あの馬鹿な言動も、見た目も全部嘘だと思うと流石にゾッとするね。あんた1人で大丈夫なの?」
柏木の本当の恐ろしさを知って、珍しく梓が姫川の身を案じた。
「あぁ、まさか柊が俺を心配するとは思わなかった。」
姫川が梓に言うと、先ほどの勢いを取り戻したようにキツく姫川を睨んだ。
「別にあんたの心配なんかしてないよ。只、あんたがヘマやって、恭治に迷惑が掛からないか心配なだけだし。」
どこまでいっても噛み付いてくる梓に姫川が苦笑する。
「今回は私のせいでこんな騒動を起こしてしまってすみません。本当にこれが柏木の計画したことなら私は許せません。もし、何か分かったら私に教えてください。あと、もし貴方に危険なことがあればその時は力になりますから、いつでも言ってください。」
優木の言葉に梓がふんっと鼻を鳴らす。
「何?今度は流をやめて、姫川の親衛隊でも作る気?」
その言葉に優木が鋭い視線を返す。
「私なりの反省を示したまでだ。本当にこんな奴が親衛隊長だなんて正木も手を焼いているでしょうね。」
2人の間に新たな喧嘩が勃発しそうなので姫川が止めに入る。
「やめろ。これ以上問題を起こしてどうするつもりだ。とにかく今回のことはこれで終わりだ。流に対するリコールの話なんて元々存在しないし、流への制裁は正木が望んでいない。お前達がここで争う必要は全くない。分かったか?」
一気に捲し立てるように話すと、2人の言い争いも落ち着いた。
「姫川って意外によく喋るんだね。」
「無愛想で、冷徹で、無口なのかと思ってました。」
そこだけ息の合う2人に姫川はドッと疲れた気がした。
「はぁ、話は以上だ。頼むからこれ以上、風紀が関与しないといけないような問題は起こすなよ。」
親衛隊絡みの問題は、処理が本当に面倒くさいので、姫川は本心から2人にそう言った。
「お前達に聞きたいことがある。先ず優木。お前は流のリコールの噂を誰から聞いた?」
「・・・。」
姫川の問いかけに答えることなく、優木は無表情で黙る。
「そもそも今回のことはお前の話を鵜呑みにした流が起こしたことだ。根拠のない話を流にしたお前にも責任はあるんだぞ。」
「それは、本当にリコールの話なんて無かったってことですか?」
優木の言葉に何故か梓が不貞腐れたように返す。
「だから、恭治はそんなことしないって言ってるじゃん。もう本当に馬鹿。しかも誤解で恭治にあんなことしたと思うと殺しても足らないくらいだよ。」
過激な発言をする梓を姫川が睨む。
「お前は黙ってろ。優木、誰からその話を聞いたか知らないが、その話は出鱈目で真実じゃない。」
すると、優木の瞳に怒りの感情が宿る。
「くそっ、あいつら嘘の情報を俺に流しやがって。」
いつもの丁寧な口調ではなく、荒い言葉遣いに優木の怒りの度合いが伝わってくる。
「誰だ?お前にその情報を流したのは?」
「・・・津田と戸田です。いや、正確には柏木からその話を聞いた津田と戸田が流を心配して俺に教えてくれたんです。親切だと思っていましたが、まさかそれが嘘だったなんて。」
それだけ言うと優木は拳を握った。
「どうして、真意を確かめず、その話を鵜呑みにしたんだ?」
これ以上、優木を追い詰めることは得策じゃないと思いながらも、姫川は聞かずにはいられなかった。
「だって、柏木と正木はとても仲が良いでしょう。正木も柏木のことは信頼している様子でしたし。まさか正木が柏木に嘘の情報を流すなんて思わなかったんです。」
「ちょっと!恭治が嘘の情報を流したみたいに言わないでもらえる?」
正木を疑うような発言に直ぐに梓が反応する。
「柊は少し落ち着け。それで、お前は正木の怪我が流の仕業だって誰から聞いたんだ?」
今度は質問の相手を梓にかえて、姫川が質問をする。
「本人からだよ。」
太々しく答える梓に、姫川は目を丸くする。
「流がお前に、正木を傷つけた事を告白したのか?」
姫川の質問に梓がハッと鼻で笑う。
「姫川ってマジで馬鹿なんだね。流が僕に正直にそんなこと言うわけないじゃん。流が柏木にその事を相談しているのを偶々聞いたんだよ。本人が言ってるんだから、僕の情報は信憑性があるだろ?」
「!?」
梓の言葉に姫川は言葉を失う。優木と梓、2人の話に共通して出てくるのは、柏木だった。
やはりあいつが裏で糸を引いてたのか?
そう考えて、姫川は悪寒がした。しかし、本当に偶々その現場に梓が遭遇した可能性もまだ捨てきれない。
「どこでその話を聞いた?」
姫川は緊張した面持ちで梓に問いかける。姫川のいつもと違う様子に戸惑いながらも梓が答える。
「僕はあの日多目的教室に呼び出されたんだ。よくあるんだよ。僕に告白しようとする奴が空き教室に僕を呼びつけることがね。それで多目的教室に行ったら、中で柏木と流の話し声がした。柏木の声がやたらと大きかったから、話は筒抜けだったよ。あいつ馬鹿だから、声の調整とかできないんだろ?」
「柏木は2年で学年トップの成績ですよ。」
横から優木が言った。
「・・・。」
「・・・。」
教室が一瞬静寂に包まれる。
「えっ?じゃあ何?流のリコールの話も、恭治の怪我を僕に伝えたのも、全部柏木の仕業だってことなの?」
困惑したように梓が言葉を発する。優木も予想外の展開に言葉がないようだった。
「一体何の為にそんなこと・・・」
梓が両手で自分の体を守るようにして言う。
「取り敢えずこのことは他の奴には言わないでほしい。俺が直接柏木と話をしてみる。」
「あの馬鹿な言動も、見た目も全部嘘だと思うと流石にゾッとするね。あんた1人で大丈夫なの?」
柏木の本当の恐ろしさを知って、珍しく梓が姫川の身を案じた。
「あぁ、まさか柊が俺を心配するとは思わなかった。」
姫川が梓に言うと、先ほどの勢いを取り戻したようにキツく姫川を睨んだ。
「別にあんたの心配なんかしてないよ。只、あんたがヘマやって、恭治に迷惑が掛からないか心配なだけだし。」
どこまでいっても噛み付いてくる梓に姫川が苦笑する。
「今回は私のせいでこんな騒動を起こしてしまってすみません。本当にこれが柏木の計画したことなら私は許せません。もし、何か分かったら私に教えてください。あと、もし貴方に危険なことがあればその時は力になりますから、いつでも言ってください。」
優木の言葉に梓がふんっと鼻を鳴らす。
「何?今度は流をやめて、姫川の親衛隊でも作る気?」
その言葉に優木が鋭い視線を返す。
「私なりの反省を示したまでだ。本当にこんな奴が親衛隊長だなんて正木も手を焼いているでしょうね。」
2人の間に新たな喧嘩が勃発しそうなので姫川が止めに入る。
「やめろ。これ以上問題を起こしてどうするつもりだ。とにかく今回のことはこれで終わりだ。流に対するリコールの話なんて元々存在しないし、流への制裁は正木が望んでいない。お前達がここで争う必要は全くない。分かったか?」
一気に捲し立てるように話すと、2人の言い争いも落ち着いた。
「姫川って意外によく喋るんだね。」
「無愛想で、冷徹で、無口なのかと思ってました。」
そこだけ息の合う2人に姫川はドッと疲れた気がした。
「はぁ、話は以上だ。頼むからこれ以上、風紀が関与しないといけないような問題は起こすなよ。」
親衛隊絡みの問題は、処理が本当に面倒くさいので、姫川は本心から2人にそう言った。
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