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嵐のような怒涛の1学期
四十一話
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多目的教室の扉を開けると、そこに居た全員の視線が一斉に姫川に向いた。
「お前たちはこんな所に集まって何してるんだ?」
その視線に臆する事なく、姫川が厳しい表情で言った。
「姫川•••なんで風紀がここに居るの?」
梓が姫川の顔を見て、嫌悪感を隠そうともせず言う。
「私が風紀の方々に連絡しました。そちらの親衛隊は皆さん野蛮ですからね。何をしでかすか分からないと思ったものですから。」
皮肉たっぷりに優木が返すと、梓はチッと舌打ちをした。
「余計なことしないでもらえる?大体先に恭治に手を出したのは、そっちだろ。同じ痛みを味わってもらわないと僕たちの気が済まないんだよ。」
そう言うと梓はキッと項垂れている流を睨んだ。
「それを言うなら先にリコールの話を持ち出したのは正木ですよ。裏切られた流さんの気持ちはどうなるんですか?」
「おい、ふざけたこと言うなよ。誰が言ったか知らないけど恭治がそんな小さい事する訳ねぇだろ。」
優木の言葉に梓が普段とは正反対の口調と態度で反論した。
「おい、もうやめろ。」
険悪な雰囲気を察して、姫川は止めに入るが、梓が腕でさっと合図をすると、数名の親衛隊員が姫川と佐々木の体を羽交締めにした。
「もう、最悪。」
佐々木がうんざりしたように言う。
「離せっ!柊、これは本人同士で話し合う事だ。お前たちが入って話をややこしくするな。」
姫川が羽交締めにされながらも梓を止ようとする。しかし、
「うるさい!風紀がこんな場所までのこのことやって来て、知った風な口をきくんじゃない。僕たちの邪魔をするんだったらお前たちだって容赦しないからね。」
と一掃された。一度、怒らすと手が付けられないと言うだけあって、梓の怒りは到底おさまりそうになかった。
「ねぇ、流。わかってるよね?僕たちが望む事が。少しでも悪いと思ってるなら、制裁を受け入れてくれるでしょ。早くこいつらを下がらせろよ!柏木がどうなってもいいのか!」
柏木という単語を聞いて、流の体がビクッと跳ねる。暫しの間、教室内は静寂に包まれた。
「優木たちは下がっていてください。」
絞り出すような小さな声でポツリと流が言った。
「しかしー」
直ぐに優木が言葉を挟もうとするが、顔を上げた流の顔を見て、優木が言葉を止める。
青白い顔でグッと歯に力を入れ、優木を睨む流の決意に誰も言葉を掛けることが出来なかった。
その光景を馬鹿にしたように梓が笑って見ていた。
姫川は体を思うように動かせず、止めにも入れない自分にイライラだけが募る。
「じゃあ、流もこう言ってくれてる事だし、遠慮なく制裁するね。」
明るい口調でそう言う梓は近くの椅子を引きずりながら流に近づいていった。それを見た姫川の顔が青くなる。優木達も悔しそうに目を背けていた。
「確か恭治は右側の頭を怪我してた筈だよね。」
梓の言葉に怖気が走る。
「何考えてんだ!やめろって言ってんだろ!」
姫川が自分を押さえつけている生徒を物凄い力で引き剥がそうとする。
「くそっ、馬鹿力が!これはさっさと終わらせた方がよさそうだね。」
姫川が生徒達を振り解く前に、制裁を加えたい梓が思いっきり椅子を振り上げる。
今まで気丈に梓を睨みつけていた流も流石にグッと目を閉じた。
「やめろっ!」
姫川が叫ぶと同時にバンっと教室の扉が開いて、そこから正木が飛び入ってきた。そしてその勢いのまま、流に駆け寄ると梓の攻撃から守るように流を抱きすくめた。
今にも椅子を振り下ろそうとしていた梓は衝撃の光景にそのまま体を硬直させる。
「恭治、どうして•••」
梓の言葉に正木がギロリと睨みを効かせる。
「誰がこんな事をしろと言った?」
その迫力に梓も、他の親衛隊も一気にたじろいだ。
「なぁ、答えろよ。俺がいつ流に怪我をさせろと頼んだんだ?」
尚も問い詰める正木に、梓が言い訳がましく反論する。
「僕たちは恭治の為を思ってしただけで、恭治をこんな目に合わせた流が許せなかったんだもん。」
正木はそんな梓の言葉に拳をギュッと握った。
「ふざけるなよ!何の権利があって、お前らがこいつに制裁を加えるんだ?これは俺と流の問題だ!関係ないお前らが勝手に入ってくるんじゃねぇ!」
いつもは親衛隊に気を遣っている正木もこの時ばかりは我慢が効かなかったのか、梓たちを思いっきり怒鳴り付けた。
そんな正木の姿に正木の親衛隊もシーンと静まり返る。
正木は黙って流の体を支えるとそのまま、教室を後にした。
残された、他の者は只呆然とその姿を見送っていた。
「お前たちはこんな所に集まって何してるんだ?」
その視線に臆する事なく、姫川が厳しい表情で言った。
「姫川•••なんで風紀がここに居るの?」
梓が姫川の顔を見て、嫌悪感を隠そうともせず言う。
「私が風紀の方々に連絡しました。そちらの親衛隊は皆さん野蛮ですからね。何をしでかすか分からないと思ったものですから。」
皮肉たっぷりに優木が返すと、梓はチッと舌打ちをした。
「余計なことしないでもらえる?大体先に恭治に手を出したのは、そっちだろ。同じ痛みを味わってもらわないと僕たちの気が済まないんだよ。」
そう言うと梓はキッと項垂れている流を睨んだ。
「それを言うなら先にリコールの話を持ち出したのは正木ですよ。裏切られた流さんの気持ちはどうなるんですか?」
「おい、ふざけたこと言うなよ。誰が言ったか知らないけど恭治がそんな小さい事する訳ねぇだろ。」
優木の言葉に梓が普段とは正反対の口調と態度で反論した。
「おい、もうやめろ。」
険悪な雰囲気を察して、姫川は止めに入るが、梓が腕でさっと合図をすると、数名の親衛隊員が姫川と佐々木の体を羽交締めにした。
「もう、最悪。」
佐々木がうんざりしたように言う。
「離せっ!柊、これは本人同士で話し合う事だ。お前たちが入って話をややこしくするな。」
姫川が羽交締めにされながらも梓を止ようとする。しかし、
「うるさい!風紀がこんな場所までのこのことやって来て、知った風な口をきくんじゃない。僕たちの邪魔をするんだったらお前たちだって容赦しないからね。」
と一掃された。一度、怒らすと手が付けられないと言うだけあって、梓の怒りは到底おさまりそうになかった。
「ねぇ、流。わかってるよね?僕たちが望む事が。少しでも悪いと思ってるなら、制裁を受け入れてくれるでしょ。早くこいつらを下がらせろよ!柏木がどうなってもいいのか!」
柏木という単語を聞いて、流の体がビクッと跳ねる。暫しの間、教室内は静寂に包まれた。
「優木たちは下がっていてください。」
絞り出すような小さな声でポツリと流が言った。
「しかしー」
直ぐに優木が言葉を挟もうとするが、顔を上げた流の顔を見て、優木が言葉を止める。
青白い顔でグッと歯に力を入れ、優木を睨む流の決意に誰も言葉を掛けることが出来なかった。
その光景を馬鹿にしたように梓が笑って見ていた。
姫川は体を思うように動かせず、止めにも入れない自分にイライラだけが募る。
「じゃあ、流もこう言ってくれてる事だし、遠慮なく制裁するね。」
明るい口調でそう言う梓は近くの椅子を引きずりながら流に近づいていった。それを見た姫川の顔が青くなる。優木達も悔しそうに目を背けていた。
「確か恭治は右側の頭を怪我してた筈だよね。」
梓の言葉に怖気が走る。
「何考えてんだ!やめろって言ってんだろ!」
姫川が自分を押さえつけている生徒を物凄い力で引き剥がそうとする。
「くそっ、馬鹿力が!これはさっさと終わらせた方がよさそうだね。」
姫川が生徒達を振り解く前に、制裁を加えたい梓が思いっきり椅子を振り上げる。
今まで気丈に梓を睨みつけていた流も流石にグッと目を閉じた。
「やめろっ!」
姫川が叫ぶと同時にバンっと教室の扉が開いて、そこから正木が飛び入ってきた。そしてその勢いのまま、流に駆け寄ると梓の攻撃から守るように流を抱きすくめた。
今にも椅子を振り下ろそうとしていた梓は衝撃の光景にそのまま体を硬直させる。
「恭治、どうして•••」
梓の言葉に正木がギロリと睨みを効かせる。
「誰がこんな事をしろと言った?」
その迫力に梓も、他の親衛隊も一気にたじろいだ。
「なぁ、答えろよ。俺がいつ流に怪我をさせろと頼んだんだ?」
尚も問い詰める正木に、梓が言い訳がましく反論する。
「僕たちは恭治の為を思ってしただけで、恭治をこんな目に合わせた流が許せなかったんだもん。」
正木はそんな梓の言葉に拳をギュッと握った。
「ふざけるなよ!何の権利があって、お前らがこいつに制裁を加えるんだ?これは俺と流の問題だ!関係ないお前らが勝手に入ってくるんじゃねぇ!」
いつもは親衛隊に気を遣っている正木もこの時ばかりは我慢が効かなかったのか、梓たちを思いっきり怒鳴り付けた。
そんな正木の姿に正木の親衛隊もシーンと静まり返る。
正木は黙って流の体を支えるとそのまま、教室を後にした。
残された、他の者は只呆然とその姿を見送っていた。
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