風紀委員長は××が苦手

乙藤 詩

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嵐のような怒涛の1学期

三十六話

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姫川は風紀委員室で、今朝の正木の話を思い出していた。
確か今日、屋上で流と会うんだったな。
そう考えて、少し正木のことが気になった。プライドの高そうな流が、自分から正木に連絡を取って話がしたいと言うだろうか?
正木は、ああ言って流を心配していたが、流にとっての正木は友達などではなくライバルに近く親しくしている姿は殆ど見たことない。
何で俺が正木のことを心配しなくちゃいけないんだ。
姫川は軽く首を振ると、目の前の仕事に集中する。しかし、時間が経つとまた自然に手が止まり、正木のことを考えてしまう。
「クソっ。」
姫川が呟くように言うと、風紀委員室に来ていた三田と牧瀬がビクッと体を震わせた。
「えっ、俺たちなんかした?」
恐る恐る聞いてくる三田に、
「いや、別に何でもない。」
と、姫川は直ぐに返した。知らず知らずの内に心の声が出てしまったようだった。
姫川は一度大きく息を吐くと、席を立った。
その溜息にまた2人が体を震わせる。
「どうしたの?何で立ってるの?」
三田の顔が恐怖で歪む。姫川の真剣な顔は妙に迫力があった。
「悪い。少し出てくる。直ぐに戻るから、暫く此処を任せてもいいか?」
姫川が特に表情も変えずに言うと、うんうんと2人とも激しく首を縦に振った。
このままじゃ、仕事が手に付かない。
そう感じた姫川は渋々屋上を目指す。
少し様子を見るだけだ。あいつらが話している姿を確認したら、直ぐにその場を去ろう。
自分でも、らしくないことをしているのは分かっていた。前の学校なら兎も角、この学校で他人を心配することがあるなど姫川自身も予想すらしていなかった。
気づくと、屋上へ続く階段の所まで来ていた。少し息が上がっている姫川は、自分が急いで此処まで来たことに気づいていない。
息を整えるため、少しの間その場に留まり、そして決心したように階段を登り始める。
少し姿を確認するだけ。様子を窺うだけ。と自分に言い聞かせながら、段々と階段を登っていく。
そして、扉の前に立った姫川はゆっくりと扉のガラス面から2人の様子を窺った。
「!?」
姫川は息を呑む。その光景は姫川が想像していたものと、まるで違ったからだ。一瞬直ぐには状況を把握することが出来なかった。
倒れている正木。それを見下ろす流。よく見ると正木の顔の辺に血のような赤色が見えた。姫川は居ても立ってもいられなくなり考えることを止め、勢いよく扉を開けると屋上に飛び込んだ。
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