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嵐のような怒涛の1学期
その日の終わりに①
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姫川は寮の自室に戻ると、汗を流すためシャワーを浴びた。ずっと準備を進めてきた大きい行事がひとつ終わり姫川は一息吐く。疲れた体には温かいシャワーのお湯が心地よかった。さっぱりとした体で浴室から出る。
風紀委員との打ち上げが終わり、自室に帰って来れたのはもう外が暗くなり始める頃だった。予想以上に会が盛り上がり気づけばそんな時間になっていたのだ。姫川自身も打ち上げが楽しくて、時間が経つのを忘れていた。姫川はソファに座り、風紀委員達の顔を思い浮かべる。4月に顔合わせした時にはこんな関係になれるとは思いもしなかった。そこまで考えて、姫川は1番関係が変わると思っていなかった人物として正木の事を思い浮かべた。
正木こそ4月当初から自分への嫌悪感を隠そうともしなかった。いつも姫川に睨みを効かせ事あるごとに嫌味を言った。姫川もそんな正木が嫌いだったが、最近は誤解も解けたようで姫川に対して笑顔を見せるようにもなっていた。
それで少しは関係が良くなったと安心していたのに•••
姫川は頭を抱える。思えば最近は正木の予想外の行動に姫川の感情は振り回されっぱなしだ。急に抱きしめたり、庇ったり、そうしたかと思えば今日みたいなイライラした態度。姫川には正木の考えている事がさっぱり分からなかった。
悶々と正木の事を考えていた姫川だが、なんだかそれすらも腹立たしくなってきた。
何故俺が正木の訳のわからん態度にこんなに悩まないといけないんだ。
そう考えるとイライラが募る。姫川はこの感情にケリをつけるため、一度きちんと正木と話そうと決心した。いつまでも正木の事でウダウダ悩むのが馬鹿らしくなってきたからだ。
姫川はそう考えるとすぐに自室を出て、正木の部屋の前に立つ。そこでドアのノックしようとしたがその手が止まる。ここでノックして正木が出てきたとしても、何と言えばいいのか分からなくなってしまった。怒りのままにここまで来たが、姫川はその次の一手を全く考えてなかった。一度部屋に戻ろうかと踵を返す。そこでコンビニのビニール袋を持った正木と目があった。
「お前、俺の部屋の前で何してんだ。」
「いや、別に何でもない。」
突然目の前に現れた正木の姿に姫川は驚き咄嗟に目線を逸らす。
「何でもないのに、俺の部屋の前に立ってんのか?」
相変わらず機嫌悪そうな声で返してくる正木に姫川は目線を戻す。
「はぁ、昼からずっとその態度はなんだ。俺の何が気に入らないか知らないが、そういう態度はやめろ。それを言いたかっただけだ。」
言いたい事だけ言うと姫川は自分の部屋に戻ろうと歩みを進める。
「待て!」
すると正木が姫川の腕を取ってそれを制した。
「何だ?」
今度は真っ直ぐに正木の目を見て、姫川が答える。
「俺も丁度お前と話したかったとこだ。まぁここで話すのもなんだしな、ちょっと入れよ。」
そう言うと正木は自室のドアを開いて、姫川に入るよう促した。
しかし、姫川はそこから足を進める事ができない。正木の今の態度と表情に姫川の頭の中で警戒音が鳴る。
「いや、それは•••」
姫川が言い淀むと、
「いいから入れって。」
と、腕を引っ張られ強引に部屋に引っ張り込まれる。無常にも閉まる扉の音だけがその辺りに響いた。
風紀委員との打ち上げが終わり、自室に帰って来れたのはもう外が暗くなり始める頃だった。予想以上に会が盛り上がり気づけばそんな時間になっていたのだ。姫川自身も打ち上げが楽しくて、時間が経つのを忘れていた。姫川はソファに座り、風紀委員達の顔を思い浮かべる。4月に顔合わせした時にはこんな関係になれるとは思いもしなかった。そこまで考えて、姫川は1番関係が変わると思っていなかった人物として正木の事を思い浮かべた。
正木こそ4月当初から自分への嫌悪感を隠そうともしなかった。いつも姫川に睨みを効かせ事あるごとに嫌味を言った。姫川もそんな正木が嫌いだったが、最近は誤解も解けたようで姫川に対して笑顔を見せるようにもなっていた。
それで少しは関係が良くなったと安心していたのに•••
姫川は頭を抱える。思えば最近は正木の予想外の行動に姫川の感情は振り回されっぱなしだ。急に抱きしめたり、庇ったり、そうしたかと思えば今日みたいなイライラした態度。姫川には正木の考えている事がさっぱり分からなかった。
悶々と正木の事を考えていた姫川だが、なんだかそれすらも腹立たしくなってきた。
何故俺が正木の訳のわからん態度にこんなに悩まないといけないんだ。
そう考えるとイライラが募る。姫川はこの感情にケリをつけるため、一度きちんと正木と話そうと決心した。いつまでも正木の事でウダウダ悩むのが馬鹿らしくなってきたからだ。
姫川はそう考えるとすぐに自室を出て、正木の部屋の前に立つ。そこでドアのノックしようとしたがその手が止まる。ここでノックして正木が出てきたとしても、何と言えばいいのか分からなくなってしまった。怒りのままにここまで来たが、姫川はその次の一手を全く考えてなかった。一度部屋に戻ろうかと踵を返す。そこでコンビニのビニール袋を持った正木と目があった。
「お前、俺の部屋の前で何してんだ。」
「いや、別に何でもない。」
突然目の前に現れた正木の姿に姫川は驚き咄嗟に目線を逸らす。
「何でもないのに、俺の部屋の前に立ってんのか?」
相変わらず機嫌悪そうな声で返してくる正木に姫川は目線を戻す。
「はぁ、昼からずっとその態度はなんだ。俺の何が気に入らないか知らないが、そういう態度はやめろ。それを言いたかっただけだ。」
言いたい事だけ言うと姫川は自分の部屋に戻ろうと歩みを進める。
「待て!」
すると正木が姫川の腕を取ってそれを制した。
「何だ?」
今度は真っ直ぐに正木の目を見て、姫川が答える。
「俺も丁度お前と話したかったとこだ。まぁここで話すのもなんだしな、ちょっと入れよ。」
そう言うと正木は自室のドアを開いて、姫川に入るよう促した。
しかし、姫川はそこから足を進める事ができない。正木の今の態度と表情に姫川の頭の中で警戒音が鳴る。
「いや、それは•••」
姫川が言い淀むと、
「いいから入れって。」
と、腕を引っ張られ強引に部屋に引っ張り込まれる。無常にも閉まる扉の音だけがその辺りに響いた。
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