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二十七話
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いや、マジで洒落にならねぇ•••
翌日、ラティーヌが運んでくれたであろうベッドの上で冬馬は頭を抱えて盛大に後悔をしていた。病院の時に加えて昨日もラティーヌを拒むことができなかった。病院で晴翔に言われた事が胸に突き刺さる。確かに、ラティーヌを嫌う気持ちは無くなり、寧ろ今では、どちらかというと好感を持っている。しかし、それが恋愛感情かと言うとよく分からない。
俺は流されているだけなのか?
好きかどうかはわからないが、ラティーヌに懇願されたり、辛そうな顔を見るとどうしても放って置けなくなる。この感情が一体何なのか、冬馬には答えが出せなかった。
「おはようございます。と言ってももう昼過ぎですが・・・」
シャワーでも、浴びてきたのか下半身にタオルを巻き、長い髪を拭きながらラティーヌが爽やかに挨拶をする。
「あ、あぁ、おはよう。」
さっきまでラティーヌの事を考えていたので、急な本人の登場に冬馬の言葉が一瞬詰まる。
その間にラティーヌが冬馬に近づき、額にそっとキスをした。
「昼食にしますか?簡単なものなら作りますよ。」
さも当たり前の様に自然な動作でキスをし、また何事もない様に会話を続けるラティーヌに冬馬は戸惑う。
マジでやばい•••
自分がラティーヌの行為を拒まなかったことで、ラティーヌの行動が大胆になってきている事に冬馬は不安を覚えた。
そして、キスされた額を撫でながら、今後のラティーヌとの関係について悶々と考えてしまう冬馬であった。
退院してから数日後、冬馬は久々にラ•ポーズに出勤した。皆、何故冬馬が休んでいたか栄から説明があり知っていたので、一往に体を心配してくれた。
控え室に入ると、早速
「冬馬!」
と嬉しそうに晴翔が駆け寄ってきた。
「おかえり冬馬。久しぶりに一緒に働けて嬉しいよ。女の子たちも皆楽しみにしてたから、今日は引っ張りだこなんじゃないかな。」
「そっか。じゃあ、今日は久々の出勤だし、その子達をガッカリさせない様に張り切ろうかな。」
と、冬馬も晴翔に笑顔で返した。その時、晴翔の後ろで声がした。
「晴翔さん、あのー、この方は?」
冬馬が声のする方に目を向けると、そこには見たことのない男が立っていた。背は低めだが、目がクリッとしていて、目鼻立ちがハッキリしている。一見女の子に間違われそうなくらい可愛らしい男だった。
「あぁ、そっか。会うの初めてだよね。この人が僕がいつも言ってた冬馬だよ。矢野冬馬。最近ここのお店のNo.3になったんだ。」
「わぁ、貴方が冬馬さんなんですね。初めまして。僕は天音雅といいます。」
「おぅ、よろしく。晴翔が言ってた新しい子ってこの子の事だったのか?」
冬馬が聞くと晴翔がコクっと頷いた。雅は冬馬を見ると嬉しそうに言った。
「冬馬さん、すごく格好いいですね。羨ましいなあ。冬馬さんの事は晴翔さんからこれでもかと言うくらい聞いていたので、会えて嬉しいです。」
雅が、屈託なく冬馬に笑いかける。
「そこまで冬馬の話ばっかりしてないだろ。」
晴翔が恥ずかしそうに雅に突っ込む。
冬馬はそんな2人のやり取りを微笑ましく見ていた。
「今日、ラティーヌは?」
晴翔が不思議そうに冬馬に尋ねる。突然ラティーヌの話が出たことで、冬馬はドキッとした。それを悟られない様、いつもの調子で答える。
「あぁ、途中で別れた。俺、栄さんに呼ばれてるからちょっと早く来たんだ。あいつ、コンビニでも寄ってんじゃない?」
ラティーヌは最近買い物も覚えたので、コンビニによく行く様になった。新しいスイーツや弁当が出るたびに目を輝かせている。今日も例に漏れず、ここに来る前にコンビニに行っていた。
「ラティーヌさん、早く来ないかなぁ。冬馬さん一緒に住んでるんですよね。いいなぁ、僕あんなに素敵な人に会うの初めてで•••」
少し頬を赤らめて言う雅に何故か冬馬の胸がチクっと痛む。その痛みに気づかないフリをして、冬馬が言う。
「そうか。ラティーヌにはもう会ったことあるんだな。」
すると晴翔が
「そうなんだよ。紹介した日から、雅はラティーヌ、ラティーヌってうるさいんだから。」
と揶揄うような口調で言う。その言葉に少し頬を膨らませながら雅が言い返す。
「だって、ラティーヌさんってすごく綺麗ですよね。適度に筋肉も付いていてそういう所は男らしいのに、対応は紳士的でスマートで•••」
次から次へとラティーヌへの賛辞が口から出てくる雅に冬馬は戸惑う。側から見ても、いまラティーヌの事を語らう雅は可愛かった。
「悪い。俺そろそろ栄さんの所行ってくるわ。」
そんな雅を見て、何と無くこれ以上2人と喋る気になれず、冬馬は逃げる様に控え室を後にした。
翌日、ラティーヌが運んでくれたであろうベッドの上で冬馬は頭を抱えて盛大に後悔をしていた。病院の時に加えて昨日もラティーヌを拒むことができなかった。病院で晴翔に言われた事が胸に突き刺さる。確かに、ラティーヌを嫌う気持ちは無くなり、寧ろ今では、どちらかというと好感を持っている。しかし、それが恋愛感情かと言うとよく分からない。
俺は流されているだけなのか?
好きかどうかはわからないが、ラティーヌに懇願されたり、辛そうな顔を見るとどうしても放って置けなくなる。この感情が一体何なのか、冬馬には答えが出せなかった。
「おはようございます。と言ってももう昼過ぎですが・・・」
シャワーでも、浴びてきたのか下半身にタオルを巻き、長い髪を拭きながらラティーヌが爽やかに挨拶をする。
「あ、あぁ、おはよう。」
さっきまでラティーヌの事を考えていたので、急な本人の登場に冬馬の言葉が一瞬詰まる。
その間にラティーヌが冬馬に近づき、額にそっとキスをした。
「昼食にしますか?簡単なものなら作りますよ。」
さも当たり前の様に自然な動作でキスをし、また何事もない様に会話を続けるラティーヌに冬馬は戸惑う。
マジでやばい•••
自分がラティーヌの行為を拒まなかったことで、ラティーヌの行動が大胆になってきている事に冬馬は不安を覚えた。
そして、キスされた額を撫でながら、今後のラティーヌとの関係について悶々と考えてしまう冬馬であった。
退院してから数日後、冬馬は久々にラ•ポーズに出勤した。皆、何故冬馬が休んでいたか栄から説明があり知っていたので、一往に体を心配してくれた。
控え室に入ると、早速
「冬馬!」
と嬉しそうに晴翔が駆け寄ってきた。
「おかえり冬馬。久しぶりに一緒に働けて嬉しいよ。女の子たちも皆楽しみにしてたから、今日は引っ張りだこなんじゃないかな。」
「そっか。じゃあ、今日は久々の出勤だし、その子達をガッカリさせない様に張り切ろうかな。」
と、冬馬も晴翔に笑顔で返した。その時、晴翔の後ろで声がした。
「晴翔さん、あのー、この方は?」
冬馬が声のする方に目を向けると、そこには見たことのない男が立っていた。背は低めだが、目がクリッとしていて、目鼻立ちがハッキリしている。一見女の子に間違われそうなくらい可愛らしい男だった。
「あぁ、そっか。会うの初めてだよね。この人が僕がいつも言ってた冬馬だよ。矢野冬馬。最近ここのお店のNo.3になったんだ。」
「わぁ、貴方が冬馬さんなんですね。初めまして。僕は天音雅といいます。」
「おぅ、よろしく。晴翔が言ってた新しい子ってこの子の事だったのか?」
冬馬が聞くと晴翔がコクっと頷いた。雅は冬馬を見ると嬉しそうに言った。
「冬馬さん、すごく格好いいですね。羨ましいなあ。冬馬さんの事は晴翔さんからこれでもかと言うくらい聞いていたので、会えて嬉しいです。」
雅が、屈託なく冬馬に笑いかける。
「そこまで冬馬の話ばっかりしてないだろ。」
晴翔が恥ずかしそうに雅に突っ込む。
冬馬はそんな2人のやり取りを微笑ましく見ていた。
「今日、ラティーヌは?」
晴翔が不思議そうに冬馬に尋ねる。突然ラティーヌの話が出たことで、冬馬はドキッとした。それを悟られない様、いつもの調子で答える。
「あぁ、途中で別れた。俺、栄さんに呼ばれてるからちょっと早く来たんだ。あいつ、コンビニでも寄ってんじゃない?」
ラティーヌは最近買い物も覚えたので、コンビニによく行く様になった。新しいスイーツや弁当が出るたびに目を輝かせている。今日も例に漏れず、ここに来る前にコンビニに行っていた。
「ラティーヌさん、早く来ないかなぁ。冬馬さん一緒に住んでるんですよね。いいなぁ、僕あんなに素敵な人に会うの初めてで•••」
少し頬を赤らめて言う雅に何故か冬馬の胸がチクっと痛む。その痛みに気づかないフリをして、冬馬が言う。
「そうか。ラティーヌにはもう会ったことあるんだな。」
すると晴翔が
「そうなんだよ。紹介した日から、雅はラティーヌ、ラティーヌってうるさいんだから。」
と揶揄うような口調で言う。その言葉に少し頬を膨らませながら雅が言い返す。
「だって、ラティーヌさんってすごく綺麗ですよね。適度に筋肉も付いていてそういう所は男らしいのに、対応は紳士的でスマートで•••」
次から次へとラティーヌへの賛辞が口から出てくる雅に冬馬は戸惑う。側から見ても、いまラティーヌの事を語らう雅は可愛かった。
「悪い。俺そろそろ栄さんの所行ってくるわ。」
そんな雅を見て、何と無くこれ以上2人と喋る気になれず、冬馬は逃げる様に控え室を後にした。
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