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四話
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そこから出勤すべく控室に向かう。そこではここでの仕事に欠かせないメイクや身だしなみを整える。一応出勤用に貸し出しの服はあるが、指名数を稼ぐ奴は大体自分で用意していた。
女性は清潔感と身だしなみが大事だ。あちらも目一杯のおしゃれをして来てくれるのだから、俺たちもそれに応えたい。
久々にメイクや身支度をしていると嫌な声が上から降って来た。
「お前本当に冬馬か?全然1週間前と顔つきや体格が違うじゃねぇか。」
「尊さん…」
座ってメイクをする冬馬の頭にどかっと腕を置き、下から上まで不躾な視線で見てくる。
その態度に冬馬はうんざりした顔をする。こう見えてこの男はこのホストクラブでNo.3の指名数を誇る如月尊だ。だがNo.3の座から落ちる事もなければそれ以上になる事もなく、そこ止まりだった。本人はそれに劣等感を感じているようで、どこでもかしこでも当たり散らすのでたまったもんじゃない。
冬馬はさりげなく尊の腕をどかしながら言う。
「まぁ色々ありまして、無断でお休みしてすみませんでした。」
「すみませんじゃねぇよ!ふざけんな!よくのこのこと帰ってこれたもんだな!お前なんかとっとと辞めちまえよ。誰も引き止めやしないからな。」
全くふざけんなはこっちのセリフだ。よくここまで暴言が吐けるものだと、軽くため息を吐く。その行為がいけなかった。相手の怒りに火をつけてしまったのだ。
「何だその態度!てめぇランキング外のくせして俺にそんな態度とっていいと思ってんのか!」
尊は冬馬の椅子を勢いのまま反転させ、胸倉を掴んでくる。冬馬はそれを冷たい視線で見上げながら、
「別にそんなつもりじゃないっすから。」
と逆に尊の腕を握り込んだ。
「うぅっ!くそっ!」
腕の痛みで尊の顔が歪む。それを見て冬馬はあっさり腕の力を緩めると強引に体勢を元に戻しそのままメイクを続ける。
尊は余りの冬馬の態度に顔を真っ赤にしてその場から去っていった。
「ざまぁみろ。」
冬馬は尊には見えないように軽く舌を出し悪態をついた。
その時横から懐かしい声がした。
「よく尊さんにあんな態度できたな。お前1週間で何があったんだよ。」
そこには、この店で1番仲のいい晴翔が立っていた。
「晴翔!」
俺は嬉しくなり、晴翔をふわっと抱きしめた。
「なんだよ急に!そんな何年も会ってないみたいに。」
晴翔が優しく笑う。
「しかし、お前本当に変わったな。何があったか後で話してくれるんだろう⁇」
「うーん、流石のお前でも信じてくれない気がする。」
「そうなのか⁇」
「ああ…また追々話すわ。」
冬馬は晴翔の背中をパンパンと叩いてニカっと笑った。異世界から帰ってきて、気が滅入ることばっかりだったけど、晴翔とこうしてまた話せることは冬馬にとって幸せな事だった。
女性は清潔感と身だしなみが大事だ。あちらも目一杯のおしゃれをして来てくれるのだから、俺たちもそれに応えたい。
久々にメイクや身支度をしていると嫌な声が上から降って来た。
「お前本当に冬馬か?全然1週間前と顔つきや体格が違うじゃねぇか。」
「尊さん…」
座ってメイクをする冬馬の頭にどかっと腕を置き、下から上まで不躾な視線で見てくる。
その態度に冬馬はうんざりした顔をする。こう見えてこの男はこのホストクラブでNo.3の指名数を誇る如月尊だ。だがNo.3の座から落ちる事もなければそれ以上になる事もなく、そこ止まりだった。本人はそれに劣等感を感じているようで、どこでもかしこでも当たり散らすのでたまったもんじゃない。
冬馬はさりげなく尊の腕をどかしながら言う。
「まぁ色々ありまして、無断でお休みしてすみませんでした。」
「すみませんじゃねぇよ!ふざけんな!よくのこのこと帰ってこれたもんだな!お前なんかとっとと辞めちまえよ。誰も引き止めやしないからな。」
全くふざけんなはこっちのセリフだ。よくここまで暴言が吐けるものだと、軽くため息を吐く。その行為がいけなかった。相手の怒りに火をつけてしまったのだ。
「何だその態度!てめぇランキング外のくせして俺にそんな態度とっていいと思ってんのか!」
尊は冬馬の椅子を勢いのまま反転させ、胸倉を掴んでくる。冬馬はそれを冷たい視線で見上げながら、
「別にそんなつもりじゃないっすから。」
と逆に尊の腕を握り込んだ。
「うぅっ!くそっ!」
腕の痛みで尊の顔が歪む。それを見て冬馬はあっさり腕の力を緩めると強引に体勢を元に戻しそのままメイクを続ける。
尊は余りの冬馬の態度に顔を真っ赤にしてその場から去っていった。
「ざまぁみろ。」
冬馬は尊には見えないように軽く舌を出し悪態をついた。
その時横から懐かしい声がした。
「よく尊さんにあんな態度できたな。お前1週間で何があったんだよ。」
そこには、この店で1番仲のいい晴翔が立っていた。
「晴翔!」
俺は嬉しくなり、晴翔をふわっと抱きしめた。
「なんだよ急に!そんな何年も会ってないみたいに。」
晴翔が優しく笑う。
「しかし、お前本当に変わったな。何があったか後で話してくれるんだろう⁇」
「うーん、流石のお前でも信じてくれない気がする。」
「そうなのか⁇」
「ああ…また追々話すわ。」
冬馬は晴翔の背中をパンパンと叩いてニカっと笑った。異世界から帰ってきて、気が滅入ることばっかりだったけど、晴翔とこうしてまた話せることは冬馬にとって幸せな事だった。
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