せっかく異世界から帰ってきたのに、これじゃあ意味がない

乙藤 詩

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十八話

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あれから数日が経ったが、結斗が心配したようなことは何一つ起こっていなかった。あの尊の性格からして何かしてくる事は容易に予想できたが、未だに動きがない事で肩透かしを食らった気分になる。
「尊さんのあの時の顔は冬馬への復讐に燃えていましたよ。何もしてこないなんて信じられませんね。」
ラティーヌの言葉に冬馬が顔を歪める。
「お前、嫌なこと言うな。」
「大丈夫!冬馬に何かあれば私が絶対に守りますから。安心して下さいね。」
「お前が言うな。」
冬馬を幾度となく襲ったラティーヌの言葉に思わずキツめにツッコむ。
それを受けてラティーヌはバツが悪そうに肩を竦めた。
「そういえば、今日は晴翔をまだ見てませんね。」
しれっと話題を変えたラティーヌに冬馬は呆れたようにため息を吐く。
「あぁ、いつもは俺たちより早く来てるのに•••」
確かに冬馬も気になっていた。晴翔の性格を考えると無断で休むことは無さそうだ。もしかして体調を崩したのか?そう思い始める。先程メールも送ってみたが返事はまだ無い。
「ラティーヌ、お前先にホールに行ってろよ。俺は晴翔に連絡取ってから行くわ。」
「分かりました。もし、体調とか悪い様でしたら、何か食べやすい物とか差し入れしましょう。」
ラティーヌの口から晴翔を気遣う言葉を聞いて冬馬は驚く。そして、優しく微笑むと、
「あぁ。」
と一言返した。その顔にラティーヌもとびっきりの笑顔を返し控え室を後にした。


早速冬馬は晴翔に連絡を入れる。コール音が何回も鳴るが、肝心の晴翔はいつまで経っても出ない。一度切ると、そんなに間を置かずもう一度かけた。
あいつ部屋で倒れたりしてねぇよな。
一抹の不安が頭をよぎる。その時、プツッ!
スマホの向こうから電話を取る音がした。
「もしもし、晴翔か?お前、大丈夫なのか?」
冬馬が畳み掛けるように話しかけると、
「へっへっへっ!それはお前次第だなぁ。」
嫌な声が耳に刺さる。
「尊さん⁉︎晴翔は?晴翔はどうしたんですか?」
「晴翔、晴翔うるせぇよ。まだ何もしちゃいないがな、お前の行動次第で晴翔のこれからが決まるぜ。」
こいつは何処のチンピラなんだ?到底ホストとは思えないクズっぷりに冬馬が顔を歪ませる。
「晴翔に手出ししたら、許さねーからな!」
「お前、そんな口の利き方していいのかよ。まぁいい。これから店を出て、向かいの路地を入ったところに廃ビルがあるだろ。そこに1人で来い。絶対1人だぞ。てめぇの取り巻き連れて来たら、こいつボコボコにしてやるからな。」
「わかった•••」
冬馬が静かに答えると、直ぐに電話は切れた。晴翔は何も関係ないのに、自分と仲が良いだけでこんな目に遭うなんて。冬馬は尊の顔を思い浮かべて拳を強く握った。
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