8 / 8
第七話 突然の訪問2
しおりを挟む「……っ!!」
「元気だけどね……ってどうかした?」
「ミヤ今、何かした?」
「いや、なにも」
「そう……」
「……」
どうして急にこの現象が……?愛犬の話だった。でも、紺色? それにどうしてそんなに悲しそうな顔をするのだろう。前まで見ていた虹色の炎とは違う。
ミヤはこの後、私を見ることなく、うつろに床を見つめていた。声をかけずらい雰囲気だったため、私も何も言わず、そのままベットに入った。
もうすぐ眠ろうとしたとき、また玄関から音が鳴る。またかと思い、私は駆け足で向かうと、そこにいたのは帰宅したアダンだった。ミヤの事で考えていなかったが、そういえば今日は彼の帰りがいつもより遅い。もっと三時間ほどいつもなら早いのに。まさかまた掃除当番? それは先週にやっていたから絶対に違う。
「遅かったわね。今日も掃除おつかれさま」
「ああ、ただいま。掃除……そうなんだよ。明日はジル公爵のビアンカ様がくるから念入りに掃除してきたんだ。つかれたよ。掃除当番はひさびさだから、やり方も先輩から教わらなくちゃだし。ここの使用人たちを尊敬するよ。……ディーナ? え、俺の後ろになにかいる? な、なにを見てるの」
――めらめら、赤と黒の炎。
「ね……ねえ、前早起きしたときあったでしょ? お父様の葬式の次の日、あれってどうしてあんな時間に起きたの」
「あれは、宮殿の見回りをしなければいけなくてね。早く起こしてごめん、心配だったからさ」
――赤黒い炎は、ぼうぼうと大きくなる。
「ちょ、ディーナ?」
私は急いで自室に向かう。整理が、したかった。
ミヤは愛犬が生きているかと聞き、『うん』と悲しそうな声で答えたとき、炎がでた。
執事はメイドの作ったケーキがおいしいかと聞き、『うん』と気まずそうに答えたとき、炎がでた。
アダンは掃除や早起きについて聞き、ちょっと考え込み、具体的に話して炎が出た。
それらすべてに共通するのは、答えるときに数秒、間が空くということ。つまり答える側に答えを考える時間が必要。そのうえ、答える人は、いつも居心地が悪そうな表情を浮かべる。そして、皆、会話している相手の顔をうかがう。
さっきのアダンもそうだった。私の様子を気にして、じろじろ見てきていた。
私は知っている。宮殿の見回りは深夜から行うものだ。朝早起きして、参加できるものではない。
ああ、炎が出る、大きくなる原因はもしかしたら――。
6/26
「ディーナ、おはよう」
「……おはよう」
もう着替えも終わらした後のミヤが、寝ている私の顔をのぞき込む。
「どうしたの元気ないけど。というか、昨日よほど眠たかったのね、急いでベットにはいってきてさ」
昨日の様子とは違って彼女は元気そうだった。しっかりもののミヤ、これが彼女なのだ。
私は、昨晩からずっと考えていたことを口にする。乾燥した喉からはあまり声はでない上に、唇が震えていた。これを聞いてしまったら、分かってしまったら、余計なことまでしってしまうから。
「ねえ、ミヤ……愛犬が生きているっていうのは、――嘘なんでしょう?」
「え、は……どうして、? どうして、わかったの」
ミヤの瞳孔が広がる。やっぱり、彼女の愛犬は、殺されてしまっていたのか。
単語
2
お気に入りに追加
29
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
奪われたものは、もう返さなくていいです
gacchi
恋愛
幼い頃、母親が公爵の後妻となったことで公爵令嬢となったクラリス。正式な養女とはいえ、先妻の娘である義姉のジュディットとは立場が違うことは理解していた。そのため、言われるがままにジュディットのわがままを叶えていたが、学園に入学するようになって本当にこれが正しいのか悩み始めていた。そして、その頃、双子である第一王子アレクシスと第二王子ラファエルの妃選びが始まる。どちらが王太子になるかは、その妃次第と言われていたが……
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
【完結】愛に裏切られた私と、愛を諦めなかった元夫
紫崎 藍華
恋愛
政略結婚だったにも関わらず、スティーヴンはイルマに浮気し、妻のミシェルを捨てた。
スティーヴンは政略結婚の重要性を理解できていなかった。
そのような男の愛が許されるはずないのだが、彼は愛を貫いた。
捨てられたミシェルも貴族という立場に翻弄されつつも、一つの答えを見出した。
1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリアン・スチール公爵令嬢18歳デビット王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
モラハラ王子の真実を知った時
こことっと
恋愛
私……レーネが事故で両親を亡くしたのは8歳の頃。
父母と仲良しだった国王夫婦は、私を娘として迎えると約束し、そして息子マルクル王太子殿下の妻としてくださいました。
王宮に出入りする多くの方々が愛情を与えて下さいます。
王宮に出入りする多くの幸せを与えて下さいます。
いえ……幸せでした。
王太子マルクル様はこうおっしゃったのです。
「実は、何時までも幼稚で愚かな子供のままの貴方は正室に相応しくないと、側室にするべきではないかと言う話があがっているのです。 理解……できますよね?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる