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第七話 突然の訪問2

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「……っ!!」
「元気だけどね……ってどうかした?」
「ミヤ今、何かした?」
「いや、なにも」
「そう……」
「……」

 
 どうして急にこの現象が……?愛犬の話だった。でも、紺色? それにどうしてそんなに悲しそうな顔をするのだろう。前まで見ていた虹色の炎とは違う。


 ミヤはこの後、私を見ることなく、うつろに床を見つめていた。声をかけずらい雰囲気だったため、私も何も言わず、そのままベットに入った。

 

 もうすぐ眠ろうとしたとき、また玄関から音が鳴る。またかと思い、私は駆け足で向かうと、そこにいたのは帰宅したアダンだった。ミヤの事で考えていなかったが、そういえば今日は彼の帰りがいつもより遅い。もっと三時間ほどいつもなら早いのに。まさかまた掃除当番? それは先週にやっていたから絶対に違う。



「遅かったわね。今日も掃除おつかれさま」
「ああ、ただいま。掃除……そうなんだよ。明日はジル公爵のビアンカ様がくるから念入りに掃除してきたんだ。つかれたよ。掃除当番はひさびさだから、やり方も先輩から教わらなくちゃだし。ここの使用人たちを尊敬するよ。……ディーナ? え、俺の後ろになにかいる? な、なにを見てるの」


 ――めらめら、赤と黒の炎。


「ね……ねえ、前早起きしたときあったでしょ? お父様の葬式の次の日、あれってどうしてあんな時間に起きたの」
「あれは、宮殿の見回りをしなければいけなくてね。早く起こしてごめん、心配だったからさ」



 ――赤黒い炎は、ぼうぼうと大きくなる。



「ちょ、ディーナ?」


 私は急いで自室に向かう。整理が、したかった。



 ミヤは愛犬が生きているかと聞き、『うん』と悲しそうな声で答えたとき、炎がでた。
 執事はメイドの作ったケーキがおいしいかと聞き、『うん』と気まずそうに答えたとき、炎がでた。
 アダンは掃除や早起きについて聞き、ちょっと考え込み、具体的に話して炎が出た。



 それらすべてに共通するのは、答えるときに数秒、間が空くということ。つまり答える側に答えを考える時間が必要。そのうえ、答える人は、いつも居心地が悪そうな表情を浮かべる。そして、皆、会話している相手の顔をうかがう。


 さっきのアダンもそうだった。私の様子を気にして、じろじろ見てきていた。

 
 私は知っている。宮殿の見回りは深夜から行うものだ。朝早起きして、参加できるものではない。

 ああ、炎が出る、大きくなる原因はもしかしたら――。



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「ディーナ、おはよう」
「……おはよう」



 もう着替えも終わらした後のミヤが、寝ている私の顔をのぞき込む。


「どうしたの元気ないけど。というか、昨日よほど眠たかったのね、急いでベットにはいってきてさ」

 昨日の様子とは違って彼女は元気そうだった。しっかりもののミヤ、これが彼女なのだ。



 私は、昨晩からずっと考えていたことを口にする。乾燥した喉からはあまり声はでない上に、唇が震えていた。これを聞いてしまったら、分かってしまったら、余計なことまでしってしまうから。





「ねえ、ミヤ……愛犬が生きているっていうのは、――なんでしょう?」




「え、は……どうして、? どうして、わかったの」

 




 ミヤの瞳孔が広がる。やっぱり、彼女の愛犬は、殺されてしまっていたのか。





 


 

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