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第二話 結婚
しおりを挟む「ディーナさん、良ければ俺と、付き合ってください」
「……はい」
冬の校庭の木の下にてアダンは跪き、私に告白してくれた。彼は黄色い花束を持っていて、それをこちらに差し出した。
「私で、良ければ」
そう言った途端、ドッと周りが騒がしくなった。皆彼の告白を見守っていたのだ。アダンの先輩、私の同級生、それから教師も。
「アダン!! よかったなあ。あのこいつ、ずっとあなたのことかわいいかわいいって言ってるんですよ。だからあの、こいつのことよろしくお願いします」
草むらから出てきた彼の友人らしき人が、彼の頭を脇で挟み、頬をニヤつかせる。
「ばっかお前、いうなよ!」
「その話もっと詳しく……」
「やめてよディーナ」
この休憩時間はあまりにも楽しくて、笑いが止まらなかった。呼吸もできないぐらい笑ったのではないだろうか。
ナピ学園を卒業し、私はアダンのもとに嫁入りをするという形で結婚することにした。私のところは三兄弟で兄が父親の跡を継ぎ、姉が公爵家に嫁いだため、私はある程度自由な結婚をすることが許された。
伯爵家である私が、子爵家に嫁ぐことも許されたことに一応は理由があるらしく、兄は、「彼の家は子爵であるがこれから成長していく可能性があるからだ」と言っていた。お父様はアダンの父親とはかなり仲が悪いらしく、ずっと反対していたが、「せもそれがディーナ、お前のしたいことならいいだろう」ということで納得してくれた。
アダンの家に産まれた男児は、生まれたときから騎士になることが決められているらしく、彼も9歳から騎士団長であるジル公爵という元王族のルワーノ=ジルという男のもとで、掃除や清掃などの下働きをさせられていたそう。
◆◆
「ディーナ、行ってくるよ」
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今日は彼の叙任式だった。見習いから、騎士になることが認められる重要な日。彼はまだ18だったけれど才能が評価され、早めに式を行ったようだ。
正装をして王宮に進んでゆく彼は、格好がよかった。
『ディーナ、行こう』
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今日は、私たちの結婚式だった。たくさんの人たちが来てくれて、祝ってくれた。お兄様やお姉さまは笑顔で迎えてくれたが、お父様は.……泣いていたんじゃないかしら。目のあたりが腫れている。
緊張はしたけど、無事に迎えられて良かった。一緒に、幸せになりましょう。
『ディーナ、必ず戻ってくるよ。だから心配しないで』
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今日彼は戦場に行ってしまう。今までと違ってかなり長期的なもののようで、心配だし、怖いけれど彼は強くて立派な騎士だから大丈夫よね。ジル公爵にも気に入られているし、なによりアダンこの短期間で班隊長になったのだから。
『ただいま、ディーナ。ね、言ったでしょ。無事に戻ってくるって』
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彼は帰ってきた。良かった。服はボロボロで顔も傷まみれだけど、腕がなかったりだとか、大きなケガは見当たらない。私は笑みと涙が同時に零れた。
『ディーナ……、大変だ』
6/14
お父様が、亡くなって、しまった。信じたくない。どうして……。先週あったときはピンピンしていたのに。
『ディーナ、今日は休んでいていいよ』
6/15
目がおかしい。これは、病気……?
こんな病気、聞いたことがない
6/16
散歩をした。
まだ治らない。なんなの、これは何が見えているの。
6/25
もしかして今まで見えていたアレは……ううん。そんなはずないわ。
6/27
ああ……、やっぱり、そう、なのね。
――ここで日記は途切れる
◆◆◆
7月1日朝
「行ってくるよ。今日は、訓練で帰ってくるのが遅くなると思う」
「……気をつけてね」
私は、目を凝らして彼を見る。
見間違いではなく――彼の肩のあたりから小さな赤黒い炎が、揺れていた。
私は、今日から彼を疑うことにした。だって、アレは――の大きさ、なんだもの。
次話「父親の死」
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