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本編
好都合
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「痛いですわ、クロウ様ッ…」
ギリギリと私を掴む力は女に向ける力ではない。血が止まってしまうかもしれない。
「なら何故抵抗するのだ?!お前が此方にくれば良いだけの話だろう」
「今回招待されたのは私ですわ…、それにまだ挨拶ができていない方々もいらっしゃいますッ、」
涙が出そうなのを堪えて、私はクロウが納得できる様説明する。しかしそれが彼にとって気に食わないものだったのだろう。彼の顔はみるみる赤くなり、やがて私を掴む手を離した。
「そんなに俺のことが嫌いならば、…良い。」
真っ赤な顔とは反対に冷たい声で、私を指しながら彼は言う。
「イアリス・ロナー!これまでの俺に対する侮辱行為と、俺の愛人への酷い扱いはもう見てられぬ!!今日を持ち、私とお前の婚約は破棄する!!」
私達を取り囲む、令嬢や令息たちは騒めく。ああついにやったわねクロウ。
いつの間にかクロウは口角が上がっていた。何が楽しいんだか。
「分かりましたわ。……しかし、私は少し前まで貴方に対し尊敬の意を抱いていましたので侮辱行為や愛人の話は、身に覚えがありませんよ」
「分かりました…だと、」
「私はこの場を汚してしまった様ですわね。ローズ様、申し訳ありません。」
「いえ、大丈夫ですわ…」
「それでは失礼します」
私は会場にいる方々に向けて一礼した。その礼は、それはクロウに向けたものでも、ある。
会場を出て、誰も居ない庭にて私は漸く素を出した。ああ、まさか彼方から婚約破棄してくれるなんて思わなかった。こんなに嬉しいことがあるのか。この絡まった紐から抜け出すにはかなりの苦労がいると知っていた。長い付き合いになると覚悟も少しばかり決めていた。
…出ていく時のクロウ様の顔は、滑稽でしたわ。
あんな目を点々とさせ、口も開けて、だらしない顔だった。
これで、自由なのかと思うと胸が高鳴って仕方がなかった。
ギリギリと私を掴む力は女に向ける力ではない。血が止まってしまうかもしれない。
「なら何故抵抗するのだ?!お前が此方にくれば良いだけの話だろう」
「今回招待されたのは私ですわ…、それにまだ挨拶ができていない方々もいらっしゃいますッ、」
涙が出そうなのを堪えて、私はクロウが納得できる様説明する。しかしそれが彼にとって気に食わないものだったのだろう。彼の顔はみるみる赤くなり、やがて私を掴む手を離した。
「そんなに俺のことが嫌いならば、…良い。」
真っ赤な顔とは反対に冷たい声で、私を指しながら彼は言う。
「イアリス・ロナー!これまでの俺に対する侮辱行為と、俺の愛人への酷い扱いはもう見てられぬ!!今日を持ち、私とお前の婚約は破棄する!!」
私達を取り囲む、令嬢や令息たちは騒めく。ああついにやったわねクロウ。
いつの間にかクロウは口角が上がっていた。何が楽しいんだか。
「分かりましたわ。……しかし、私は少し前まで貴方に対し尊敬の意を抱いていましたので侮辱行為や愛人の話は、身に覚えがありませんよ」
「分かりました…だと、」
「私はこの場を汚してしまった様ですわね。ローズ様、申し訳ありません。」
「いえ、大丈夫ですわ…」
「それでは失礼します」
私は会場にいる方々に向けて一礼した。その礼は、それはクロウに向けたものでも、ある。
会場を出て、誰も居ない庭にて私は漸く素を出した。ああ、まさか彼方から婚約破棄してくれるなんて思わなかった。こんなに嬉しいことがあるのか。この絡まった紐から抜け出すにはかなりの苦労がいると知っていた。長い付き合いになると覚悟も少しばかり決めていた。
…出ていく時のクロウ様の顔は、滑稽でしたわ。
あんな目を点々とさせ、口も開けて、だらしない顔だった。
これで、自由なのかと思うと胸が高鳴って仕方がなかった。
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