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本編
過去とクロウ
しおりを挟む「クソ…俺は、違う」
予想してなかった展開に、予測できなかった天気。
クロウは雨に濡れながら、ボツボツと呟きながら、死んだ目をして言った。
だだ彼女に愛されたかった_____。
その思いがクロウの胸を締め付ける。自分がイアリスを傷つけていたことは薄々気がついていた。しかし、それ以上にクロウが浮気をするたびに、イアリスとクロウの距離は縮まっていく。
じゃあ、色んな人と遊びまくっていれば、イアリスは嫉妬してくれる。
あの美しく、賢い彼女が俺だけを見てくれている、と自分に自信がつく。
………はぁ、イアリスと出会ったのはいつだったか。
クロウにとって、電流が走ったかのような衝撃的な思い出だった為、はっきりと覚えている。
~8年前、クロウ視点
正装をして、母上と父上に連れられ客間室まで行くと、そこには女の子が親を連れて立っていた。年は俺と変わらない10歳ぐらいでとても美しく、声も可憐だった。確か母上は前に俺に婚約者が出来るとか言っていたな…その件が彼女か。俺が椅子に座ると彼女は立派なカーテシーと挨拶を披露した。
「お初にお目にかかりますクロウ様、私イアリス・ガドナーと申します。これからよろしくお願い致します」
まだ年相応の幼さが残るものの彼女からは気品で溢れていた。父上も母上もうっとりとしていた…珍しい、あのいつも冷徹な父上が母上以外にこんな表情を向けるなんて。
少し緊張してしまう。
もし挨拶を失敗してしまったら、婚約も失敗してしまうのでは等考えてしまい胸の中は不安でいっぱいであった。とりあえず足が疲れてしまっている可能性も俺は彼女を座らせた。
そして緊張が 解けぬまま、素早く挨拶を終わらせてその部屋を立ち去った。
ーあれから6年後俺もイアリスも16歳になっていた。
この政略結婚の利益も、しなければならない事も理解できる年齢になっていた。
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