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開店前夜編

第17話 レッドゴブリン

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「あれは…レッドゴブリン…」

ゴブリンよりも一回り大きい身体に、名前に相応しい濃赤の皮膚。

使い込まれているであろう鎧を纒い、まるで戦国時代の歴戦の武将の様だ。

「レッドゴブリン…如何にもボスって風貌だな…強いのか?」

「二人には無理だな。レベルが違いすぎる」

「そうか…シュウならいけるか?」

「余裕だよ」

しかしこんな所にレッドゴブリンがいるなんてな…

------------

-ドゴッ!

馬車から出てきたレッドゴブリンは周りで警護していたゴブリンの胸に拳を叩き込んだ。

ゴブリンは拳から放たれた衝撃波で胸を突き抜かれ、身体ごと吹っ飛ばされた。

虫の息のゴブリンはそのまま絶命し消滅した。

「おい…いきなり馬車を止めるんじゃねえ!…獲物は仕留めたのか?」

「ひ!ひぃ!」

「そ、それがボス…獲物を追っていたら、突然仲間の首が吹っ飛んで…急いで止まると奴等が…」

そう言ったゴブリンが指を指す向こうには、三人の人間が立っていた。

「あ?あんなヒョロい雑魚共がやったって?」

「お、おそらく…」

------------

「何か仲間割れしてない?」

「みたいだな…何か叫んでるぞ…」

百数十メートル先にいる連中の様子を眺めていると、レッドゴブリンが喚き散らかしている

「テメーらそれでも魔王軍の兵士か!」

-!

魔王軍!?何でこんな所に…

オレは馬車の方へゆっくりと歩き出した。

「おい!シュウ!」

「ヒデ、マナブ…オレは赤いのに話があるから、お前たちは残りのゴブリンを頼む…」

「あいつらの言葉がわかるのか!?」

「ああ…どうしても聞かないといけない事があってね…二人はザコを頼むよ」

いつものトーンではない真面目な口調で話したおかげか、二人は何かを察し頷いた。

馬車のある場所に着くとレッドゴブリンとゴブリンがまだひと悶着を繰り広げていた…

「おい、そこの赤いの…」

レッドゴブリンが振り向き、オレと目があった。奴は目を見開いた

「テメエいつの間に…」

「お前さっき魔王軍だと言ったな?ここで何をしている?」

「!? テメエ…何で俺達の言葉がわかんだ?」

「…質問に答えろ。ここで何をしている?」

側にいたゴブリンが忠告する。

「ボ、ボス…気をつけて。奴は何するかわかりません」

-グチュ!

忠告をしたゴブリンが真っ二つに分かれている。
レッドゴブリンの手には緑色の液体が付着していた。

「雑魚は黙ってろ…」

マナブとヒデは苦虫を噛む様な表情をしている。

「自分の仲間をこんな簡単に…」

オレは表情を一切変えずに再び問うた。

「もう一度言うぞ、ここで何をし…」

-ドス!

鈍い音が響き渡る。レッドゴブリンはオレの腹に渾身のパンチを放った。

「へへへ…生きてたら教えてやるよ」

オレは微動だにしなかった。それを見たレッドゴブリンは勘違いしたのか

「ハハハハ!雑魚が!目を開けたまま死んでらぁ!」

バフッ!

無動作で奴に衝撃波をくらわせると、後ろに尻もちをついて倒れてしまった。

「…お前はオレの言葉がわからないのか?質問に答えろ…」

レッドゴブリンは驚いた表情でオレを見つめている。

「ボ、ボス!貴様!」

一人のゴブリンがオレに向かって剣を切りつけてきた。

剣を振り上げたその時、ゴブリンは炎で赤く染まり、悲鳴を上げた。

「ギャアアア!」

ゴブリンの後ろには、ファイアの詠唱を終えた、マナブとヒデが立っていた。

「おい、お前らの相手は俺達だ!」

二人はゴブリンの群れを引き寄せ、戦いを始めた。

オレはレッドゴブリンと対峙している。

「て、てめえ!」

「おい、生きてるぞ?質問に答えてくれるんだろ?」

「黙れ雑魚が!死ねっ!」

頭目掛けて振り下ろした拳を左手で受け止める。

「話がわかる奴だと良かったんだけどな…」

そう言って奴の拳を握り潰した。

「ギャアアア」

左手で右手を押さえ、のたうち回るレッドゴブリン

「て、てめえ…俺様をこんな目に遭わせやがって…魔王軍が…」

「魔王軍が何だ?タダじゃおかないとでも言うのか?」

オレは左手を消し飛ばした。

言葉にならない悲鳴をあげ、再びのたうち回るレッドゴブリン。

「……お前…な…何モンだ?」

オレは笑みを浮かべた

「…知りたいか?」

話のわからない奴には最大の恐怖を与えるしかない。

「…待ってろ…」

-シュ!

「き、消えた!?」

呆然としているレッドゴブリンの後ろから声をかける

「おい…オレの事が知りたいんだよな?」

オレはそう言うと袋からある物を取り出した。

辺り一面に強烈な魔素が漂い始めた。

ゴブリンと戦っているヒデとマナブが異変を察知する。

「おい…ゴブリン達が変だぞ…」

「本当だ。動きを止めてる」

ゴブリン達は戦いを辞め、強烈な魔素の元凶を見つめている。

「お、おい…あれって…」

レッドゴブリンはまだ分かっていないようだ。

「こ…これがなんだっていうんだ…」

近くにいたゴブリンが呟いた

「ま…魔王…魔王様の…紋章…」
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