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第7章:愚者の目覚めは月の始まり編
第328話:作戦
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「ラルファ様ッ」
「リルカ!!」
お互いの名前を呼び合い、ラルファとリルカは固く抱擁して相手の無事を確かめる。
漸く仲間達がやって来てラルファとリルカも再会する事が出来たのだが、既にラルファ側のこれまでの経緯もある程度聞いている為俺達は二人をそのままにしてこれからどうするべきかを話し合った。
「――とまぁ、ラルファを見付ける事が出来たから、ガバリス大司教も運ばれてると思って間違いないだろう」
「・・・そうね、私達もここまで来る際にある程度注意深く周囲に目は向けていたし、この辺りはアナタ達が調べたんでしょ?」
「あぁ、本当なら大司教も助け出せれば良かったんだが、すまん」
「別にアナタが謝る必要は無いわ」
サリーはそう言って目を伏せた。
ガバリス大司教を秘密裏に帝国ヘと運んでいる部隊が途中で偶然ラルファを発見してラルファも確保する。
教会にとってはラルファ――と言うかアザエル、神造遺物自体の存在を軽くは見ていなかったと言う事だ。
どうも以前からラルファは教会がマークしていたらしく、ビンゴブック的な物にも載っていると言うのは敵の記憶を読んで分かった。
ラルファの仲間であるアギリーやリルカには興味を示さなかった事から、勇者ラルファ一味が手配されていた訳では無く、ラルファとアザエルのみが手配されていたのだろう。
だが、ある意味とばっちりで本来なら見逃しても良かった筈のアギリーは殺された。
ただ殺されるだけでは無い。陵辱され尊厳を踏み躙られ、恐怖と絶望の中で死んで行ったのだ。
これのどこにも教会に正義など無い。大義の為、教会の為、神の為と言うだろうが誰が認めるかと俺は仲間達と話している間も一人腹の奥底から湧き上がる怒りを抑え込むのに必死だった。
別にアギリーの仇を討ちたいと言う訳では無い。
知らない仲では無いし、一度は同じ釜の飯を食った者同士なのでそう言った意味では多少なりとも顔も知らない他人よりは思い入れと言うか、俺自身思う事が無い訳では無い。
なので仇くらいは取るくらいは少し、ほんの少しはやってやっても良いと思い始めていたが、先ずはラルファ達がどうするかが問題だった。
ラルファは―――仇討ちに執着はしなさそうだけど、リルカは違うかもな・・・
そんな事を思って今も色々と話をしている二人を見る。
リルカは泣きながら、ラルファはそれを宥めながら話をしているがアギリーに付いては二人に任せ、もしも何か手伝って欲しいと言うのならば協力するのほ吝かでは無いと思う。
こんな事を口にすればアリシエーゼ辺りからは天邪鬼めッとか言われそうだなと思いつつ仲間達に顔を向ける。
「恐らくだけど、敵は最終的には帝国首都を目指すみたいだし、先回りするなりそっち方面を重点的に探すのがいいと思うんだ―――」
恐らく戦争真っ只中の前線方面に向かうと言うのは考えにくい。
なら目的地である帝国首都を目指すと考えるべきだが、それでもどのルートを通るか等分かりはしない。
もしかしたら、散り散りになった奴らはこの後はそのまま合流せずに目的地をそれぞれ目指すかも知れないし、合流してから正規ルートとは別のルートで首都を目指すかも知れない。
それ以外にも色々とパターンは考えられるのだが此方の人数が限られている以上取れる行動は限られる。
「そうね、先ずはガバリス大司教をこのまま追うかどうかだけど、私は首都に先回りするのが良いと思うわ」
俺の考えを聞いた上でイリアがそう言う。
虱潰しで探している余裕は無い以上、もしこのままガバリス大司教を探すのなら、予測を立てた上でそこを重点的に探すと言う方法か、仲間を分散させて捜索範囲を広げるかしか無い。
だが、悪魔を強制的に召喚する術を持っていると分かった以上、俺達が戦力を分散させるのは愚策だ。
別にあのアークデーモンに仲間達が勝てないと言う意味では無い。
流石に一人では厳しいだろうが、それでもするべきでは無いと思う。
となると、最終目的地が分かっている以上、そこに先回りして待ち伏せと言うのが確率的にも良い作戦だとは思う。
「ですが、首都の入口は一箇所では無いですよね?なら、全ての入口を見張る必要があるのでは?」
そう、マサムネが今言った事は俺も懸念している事だった。
もし複数箇所入口が存在しているのなら、テキが何処から出入りするか分かって無い以上俺達はそな全てに人員を割かなくてはならなくなる。
「そんな事する必要は無いんじゃない?」
「と言うと・・・?」
「だって教会が密かに帝国に大司教を運ぶ理由は何?連合との交渉材料然然り色々と理由はあるのでしょうけど、結局は教会と帝国が結び付いているって事は揺るがない事実でしょう?」
「まぁ、そうでしょうね・・・」
マサムネはイリアの言葉を肯定しつつ、結局何が言いたいのか分からないと言った表情をする。
俺もイリアが何を言いたいのか分からない。
帝国と教会の結び付き・・・?
「なるほど―――それなら確かに確実だわ」
イリアの言葉を聞きサリーが頷くのだがどういう事であろうか?
「イリアは何が言いたいんだ?」
「簡単よ。でもその為には敵よりも先に首都に着いておく必要があるわッ」
勢い良くそう宣言するイリアだが、余計に頭が混乱してくる。
「あー、そう言う事ね?」
次には直哉もイリアが何を考えていたのか分かったと頷き始める。
「アンタ、マジで分かったのか?嘘付くなよ。アンタはそんな名探偵キャラじゃねぇだろ」
「・・・お前、俺を何だと思ってんだよ」
俺の言葉に直哉はジト目を返すが、簡単な事だと得意気に説明を始める。
「その大司教は帝国から捕縛命令だかが出てんだろ?拉致ったのが教会暗部ってのは予想外だが、結局はそれも帝国の要請があったって事だろ?」
「まぁ、そうだな・・・」
「なら、その大司教が首都に着いたら行く所なんて限られるじゃねぇか」
ん・・・?
どう言う事だ・・・?
確かに大司教ほ帝国首都に到着したら観光する訳でも無いし、丁重に饗されるとは思うが恐らく軟禁状態にでもなるのではと思う。
そんな大司教が向かう先―――
「そりゃ、皇帝の居る所とか、後は教会で軟禁されるとかが考えられるが―――」
「だろ?だったらそこで張ってればいいだけだろ」
ちょっと待て・・・
「え、なに、それってつまり帝国の首都で大司教を奪還するって言ってんの・・・?」
「そうだが?」
「その方が確実でしょ?」
直哉は説明し切った後の俺の言葉にさも当然だと言わんばかりの表情で頷く。
イリアも直哉に倣い若干偉そうにふんぞり返りながら俺の言葉を肯定するのだが―――
「いやいや、帝国の中枢でしかも帝国にとって、この戦争での切り札になり得るかも知れない重要人物を拉致るってマジで言ってんのか?」
俺達が動いている事は出来る事なら誰にも知られたくは無い。
それは教会にも帝国にも、そして王国や公国にもである。
俺の懸念事項は結構ある。目立ちたくは無いと言うのは勿論あるが、何時何処でそれを実行するのか、具体的に相手の護衛人数は、教会だけしか動かないのかそれとも帝国も相応に人員が動くのか、その他諸々である。
「い、いやぁ、ちょっと大胆過ぎやしません―――」
「なるほど、それは妙案ですね」
「ぇ?」
「そうだな、帝国や教会に一発ぶちかますとするか!」
「ぁ、マジ・・・?」
何だか仲間達は妙にやる気だった。
マサムネもドエインも乗り気だし、サリーも何だかんだやる気が伺える表情をしている。
唯一、ダグラスだけが渋い顔をしているので、此奴は俺と同じ懸念があるのだろうと思う。
「そうならば早く移動を開始するべきでは無いか?」
「・・・はい?」
違った・・・
結局、何やかんやで方向性ほ瞬く間に決まってしまい俺は呆気に取られてしまったのだが、本当にこれで良いのだろうか・・・
「なんだよ、ノリ悪ぃな?」
「いやいや、お前分かってんの?帝国と教会に喧嘩売るって言葉なんど だぜ?」
「だから何だよ、喧嘩売られたら買うだろ普通?」
「・・・・・・」
「もうッ、何時まで悩んでるのよ!?どっちにしろ帝国の首都に乗り込むつもりだったんだからいいでしょ!?」
「いや、まぁ・・・」
その行動力と決断力、そして考え方と言うか教会や国、はたまた世界との向き合い方の違いに戸惑いつつ俺は口角を上げる。
イリアの言う通りどっちにしろ首都には行く予定だったし、それに良く考えれば何時も通りじゃねぇか
俺の能力があればどうにでもなりそうだしな
「やっぱりアンタはその意地の悪い笑い方が似合うわよ」
おい・・・
「リルカ!!」
お互いの名前を呼び合い、ラルファとリルカは固く抱擁して相手の無事を確かめる。
漸く仲間達がやって来てラルファとリルカも再会する事が出来たのだが、既にラルファ側のこれまでの経緯もある程度聞いている為俺達は二人をそのままにしてこれからどうするべきかを話し合った。
「――とまぁ、ラルファを見付ける事が出来たから、ガバリス大司教も運ばれてると思って間違いないだろう」
「・・・そうね、私達もここまで来る際にある程度注意深く周囲に目は向けていたし、この辺りはアナタ達が調べたんでしょ?」
「あぁ、本当なら大司教も助け出せれば良かったんだが、すまん」
「別にアナタが謝る必要は無いわ」
サリーはそう言って目を伏せた。
ガバリス大司教を秘密裏に帝国ヘと運んでいる部隊が途中で偶然ラルファを発見してラルファも確保する。
教会にとってはラルファ――と言うかアザエル、神造遺物自体の存在を軽くは見ていなかったと言う事だ。
どうも以前からラルファは教会がマークしていたらしく、ビンゴブック的な物にも載っていると言うのは敵の記憶を読んで分かった。
ラルファの仲間であるアギリーやリルカには興味を示さなかった事から、勇者ラルファ一味が手配されていた訳では無く、ラルファとアザエルのみが手配されていたのだろう。
だが、ある意味とばっちりで本来なら見逃しても良かった筈のアギリーは殺された。
ただ殺されるだけでは無い。陵辱され尊厳を踏み躙られ、恐怖と絶望の中で死んで行ったのだ。
これのどこにも教会に正義など無い。大義の為、教会の為、神の為と言うだろうが誰が認めるかと俺は仲間達と話している間も一人腹の奥底から湧き上がる怒りを抑え込むのに必死だった。
別にアギリーの仇を討ちたいと言う訳では無い。
知らない仲では無いし、一度は同じ釜の飯を食った者同士なのでそう言った意味では多少なりとも顔も知らない他人よりは思い入れと言うか、俺自身思う事が無い訳では無い。
なので仇くらいは取るくらいは少し、ほんの少しはやってやっても良いと思い始めていたが、先ずはラルファ達がどうするかが問題だった。
ラルファは―――仇討ちに執着はしなさそうだけど、リルカは違うかもな・・・
そんな事を思って今も色々と話をしている二人を見る。
リルカは泣きながら、ラルファはそれを宥めながら話をしているがアギリーに付いては二人に任せ、もしも何か手伝って欲しいと言うのならば協力するのほ吝かでは無いと思う。
こんな事を口にすればアリシエーゼ辺りからは天邪鬼めッとか言われそうだなと思いつつ仲間達に顔を向ける。
「恐らくだけど、敵は最終的には帝国首都を目指すみたいだし、先回りするなりそっち方面を重点的に探すのがいいと思うんだ―――」
恐らく戦争真っ只中の前線方面に向かうと言うのは考えにくい。
なら目的地である帝国首都を目指すと考えるべきだが、それでもどのルートを通るか等分かりはしない。
もしかしたら、散り散りになった奴らはこの後はそのまま合流せずに目的地をそれぞれ目指すかも知れないし、合流してから正規ルートとは別のルートで首都を目指すかも知れない。
それ以外にも色々とパターンは考えられるのだが此方の人数が限られている以上取れる行動は限られる。
「そうね、先ずはガバリス大司教をこのまま追うかどうかだけど、私は首都に先回りするのが良いと思うわ」
俺の考えを聞いた上でイリアがそう言う。
虱潰しで探している余裕は無い以上、もしこのままガバリス大司教を探すのなら、予測を立てた上でそこを重点的に探すと言う方法か、仲間を分散させて捜索範囲を広げるかしか無い。
だが、悪魔を強制的に召喚する術を持っていると分かった以上、俺達が戦力を分散させるのは愚策だ。
別にあのアークデーモンに仲間達が勝てないと言う意味では無い。
流石に一人では厳しいだろうが、それでもするべきでは無いと思う。
となると、最終目的地が分かっている以上、そこに先回りして待ち伏せと言うのが確率的にも良い作戦だとは思う。
「ですが、首都の入口は一箇所では無いですよね?なら、全ての入口を見張る必要があるのでは?」
そう、マサムネが今言った事は俺も懸念している事だった。
もし複数箇所入口が存在しているのなら、テキが何処から出入りするか分かって無い以上俺達はそな全てに人員を割かなくてはならなくなる。
「そんな事する必要は無いんじゃない?」
「と言うと・・・?」
「だって教会が密かに帝国に大司教を運ぶ理由は何?連合との交渉材料然然り色々と理由はあるのでしょうけど、結局は教会と帝国が結び付いているって事は揺るがない事実でしょう?」
「まぁ、そうでしょうね・・・」
マサムネはイリアの言葉を肯定しつつ、結局何が言いたいのか分からないと言った表情をする。
俺もイリアが何を言いたいのか分からない。
帝国と教会の結び付き・・・?
「なるほど―――それなら確かに確実だわ」
イリアの言葉を聞きサリーが頷くのだがどういう事であろうか?
「イリアは何が言いたいんだ?」
「簡単よ。でもその為には敵よりも先に首都に着いておく必要があるわッ」
勢い良くそう宣言するイリアだが、余計に頭が混乱してくる。
「あー、そう言う事ね?」
次には直哉もイリアが何を考えていたのか分かったと頷き始める。
「アンタ、マジで分かったのか?嘘付くなよ。アンタはそんな名探偵キャラじゃねぇだろ」
「・・・お前、俺を何だと思ってんだよ」
俺の言葉に直哉はジト目を返すが、簡単な事だと得意気に説明を始める。
「その大司教は帝国から捕縛命令だかが出てんだろ?拉致ったのが教会暗部ってのは予想外だが、結局はそれも帝国の要請があったって事だろ?」
「まぁ、そうだな・・・」
「なら、その大司教が首都に着いたら行く所なんて限られるじゃねぇか」
ん・・・?
どう言う事だ・・・?
確かに大司教ほ帝国首都に到着したら観光する訳でも無いし、丁重に饗されるとは思うが恐らく軟禁状態にでもなるのではと思う。
そんな大司教が向かう先―――
「そりゃ、皇帝の居る所とか、後は教会で軟禁されるとかが考えられるが―――」
「だろ?だったらそこで張ってればいいだけだろ」
ちょっと待て・・・
「え、なに、それってつまり帝国の首都で大司教を奪還するって言ってんの・・・?」
「そうだが?」
「その方が確実でしょ?」
直哉は説明し切った後の俺の言葉にさも当然だと言わんばかりの表情で頷く。
イリアも直哉に倣い若干偉そうにふんぞり返りながら俺の言葉を肯定するのだが―――
「いやいや、帝国の中枢でしかも帝国にとって、この戦争での切り札になり得るかも知れない重要人物を拉致るってマジで言ってんのか?」
俺達が動いている事は出来る事なら誰にも知られたくは無い。
それは教会にも帝国にも、そして王国や公国にもである。
俺の懸念事項は結構ある。目立ちたくは無いと言うのは勿論あるが、何時何処でそれを実行するのか、具体的に相手の護衛人数は、教会だけしか動かないのかそれとも帝国も相応に人員が動くのか、その他諸々である。
「い、いやぁ、ちょっと大胆過ぎやしません―――」
「なるほど、それは妙案ですね」
「ぇ?」
「そうだな、帝国や教会に一発ぶちかますとするか!」
「ぁ、マジ・・・?」
何だか仲間達は妙にやる気だった。
マサムネもドエインも乗り気だし、サリーも何だかんだやる気が伺える表情をしている。
唯一、ダグラスだけが渋い顔をしているので、此奴は俺と同じ懸念があるのだろうと思う。
「そうならば早く移動を開始するべきでは無いか?」
「・・・はい?」
違った・・・
結局、何やかんやで方向性ほ瞬く間に決まってしまい俺は呆気に取られてしまったのだが、本当にこれで良いのだろうか・・・
「なんだよ、ノリ悪ぃな?」
「いやいや、お前分かってんの?帝国と教会に喧嘩売るって言葉なんど だぜ?」
「だから何だよ、喧嘩売られたら買うだろ普通?」
「・・・・・・」
「もうッ、何時まで悩んでるのよ!?どっちにしろ帝国の首都に乗り込むつもりだったんだからいいでしょ!?」
「いや、まぁ・・・」
その行動力と決断力、そして考え方と言うか教会や国、はたまた世界との向き合い方の違いに戸惑いつつ俺は口角を上げる。
イリアの言う通りどっちにしろ首都には行く予定だったし、それに良く考えれば何時も通りじゃねぇか
俺の能力があればどうにでもなりそうだしな
「やっぱりアンタはその意地の悪い笑い方が似合うわよ」
おい・・・
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