異端の紅赤マギ

みどりのたぬき

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第7章:愚者の目覚めは月の始まり編

第327話:ナイーロ

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「そんなッ、全部話しただろう!?殺さないと言った筈だ!」

「言ってねぇよ」

「知ってる事は全部話した!解放してくれ!」

「だから、解放なんてする訳ねぇだろ?舐めてんのか」

「これ以上俺に何を望むと言うんだ!?本当に知っている事は全部話したんだッ、助けてくれ!」

仲間達を待つ間、暫くボーっとしていたのものの特にする事も無く色々と考えてしまった。
今迄の事にこれからの事様々な事を考える中で出て来た想いは―――

何やってんだろ、俺は

であった。その時の情報や状況に流され、赴くままに行動すれば後悔ばかりで、異世界だ何だと浮かれてはしゃいでいた最初の頃とは大違いだった。
全てが面倒臭いと思わなくは無い。
俺の中での異世界転移は、神様からチートを授かって無双する物語りだ。
全てがご都合主義で上手く行き、美男美女に囲まれて面白可笑しく毎日を過ごす。
そんな物語りであった筈だが実際は違う。
これは復讐であり、理不尽に対する反抗の物語りだ。考える事や上手くいかない事が多々あり、面倒臭いとは思ったが、同時に俺にはこの行き方が性に合っていると自分では思っている。

今はほんの少し立ち止まって後ろを振り返ったに過ぎない。

そう思って目の前で懇願している男に目を戻す。
待ち時間の間にリリが無理矢理引っ張って来て気絶していた男が目を覚ましたので、情報収集を始めたのだが、既に直哉バリアとも言うべき、正体不明の力場の様なものは消えていた。
なので直ぐに目の前の男の頭の中を覗き、必要な情報は全て瞬時に手にいたのだが、暇だし会話をと思って情報を聞き出すをしていたのだ。

情報を吐けば死よりも辛い苦痛は味わずに済むんじゃないかとは言ったが、何を勘違いしたのか男は情報を吐けば助かると思った様で素直に喋ったのだ。
かなり訓練された生粋の暗部ーー間者なので自分が殺されようが素直に情報を話す訳は無い。
だが、男は俺達の戦いぶりを見てその心境に変化があった様だった。

アークデーモンはこの男達な呼び出したものだった。
それはこの世界で忌み嫌われる暗黒魔法ともまた違った魔法でイリア達の予想通り召喚魔法―――それも強制的に悪魔を幻幽体アストラルボディで地上に呼び出すものであった。
詳しくは知らないが、通常召喚魔法と言う物は対象の神なり悪魔なりとを結び、神や悪魔そのものをほんの一瞬、顕現させて力を行使すると言ったものを指す。
当然ながら神様なんてものや、上位の悪魔なんてものと契約をする事は人間では不可能に近い。
人間が神様を勝手に呼び出し力を行使させる等、分をわきまえていないにも程があるし、悪魔にしても契約内容が最低でも命とかになってくるのてなは無いかと思うと、有史以来粗、神や上位悪魔を召喚した事例が無いと言う事も頷ける。
因みにこの情報は以前、仲間達に興味本位で聞いた内容だが、そもそも俺自身は魔法など使えないし使う奴も居ないに等しいと言う事もあり、話半分で聞いてあまり深くは突っ込まなかった。

そんな召喚魔法を目の前の男達は使ったのだが、召喚した悪魔は上位とほ程遠いアークデーモンだ。
だが、先程も言った通り召喚魔法は契約を必要とする。つまりは神や悪魔個々と個別に契約をしないとならない。
俺との戦闘で呼び出した後、先程直哉は五体のアークデーモンと戦っていた。
更に、男の頭の中を覗いた限りでは使用した召喚魔法ほ特別製だ。
強制的に地上へと顕現させる代物で、召喚されたら術者がその魔法を解除するか力尽きるまで自分の意思で地獄へ帰る事は不可能な様だ。
つまりは強制。俺と戦闘した際に召喚したアークデーモンは死ぬ迄酷使したのは分かっている。
と言う事は直哉と戦った五匹は別の悪魔と言う事になる。
悪魔に死を強制させる魔法。それはその魔法の原理などをまったく知らない俺ですら一体どれ程の代償を払えば実現かのうなのだろうかと心配になる程だ。
これが、低級なゴブリンやオーク等の魔物と言う事ならまだどうにかなるのかもなと思えるのだが、悪魔はヤバいだろと素直に思ってしまう。

国からそれを可能にするアイテムが支給されてるみたいだが・・・

ただ、情報はそれしか無い。そのアイテムが一体どう言う物なのか、そのアイテムで何故強制召喚が可能なのか。そんな事を末端の構成員が知る訳も無く、何かの魔導具マジックアイテムと言う事以外粗不明だった。
表に何か文字の様なものとこれまた意味不明な図形の様なものが掘られたコイン。
それがその悪魔を強制召喚する魔導具だった。
使うとその場で消え失せるらしく、この男達も俺や直哉との戦闘になけなしのコインを使用してしまった為、手元に実物は無いが男の記憶から外見だけは分かったのだが、教会がそんなものを密かに製造、使用していると言う事実だけで寒気すらして来た。

前線の教会騎士とかには配備はされて無いよな?
使ってる奴は見てないし・・・

と言う事は、製造自体が難しい等の理由で流通量と言うか配給はそこまで多くは無いのか?とも思ったが直ぐに考えを改める。

いや、教会が悪魔を召喚するなんて事が知れたらそれはそれで不味いか・・・

悪魔や魔界の根絶を理念に掲げる教会が悪魔と馴れ合ってるなど、絶対に知られてはならないだろう。
だが、暗部の連中はコインを持っていると思っておいた方がいいなと考えるが、俺の前で跪く男はその間もギャーギャーと喚く。
全て話した、助けてくれ、約束と違う。結局はそれしか言ってないのだが、いい加減この茶番にも飽きて来たので俺は一度小さくため息を吐き、男の眼を真っ直ぐに見る。

「黙れ。次に俺が良いと言う前に口を開いたら身体のありとあらゆる部位を一つずつ破壊するからな」

「なッ!?何で―――――――ぃぎゃああッッ」

言った傍から口から言葉が漏れた男の右眼を俺は指の突きで瞬時に潰す。
グチャリと癇に障る音がするが俺は顔色を変えずに手を離してもう一度、片目だけになった男を見て言う。

「俺が良いと言うまで喋るな。次は右手の指の骨を全部折って引き千切る」

まるで一つずつと言ったじゃないかと言いたげな男を無視して俺は続ける。

「お前は全部話したって言うけどな―――」

一度そこで言葉を切って直哉とラルファを見る。
直哉は俺のやる事を欠伸をしながら眺めているが、ラルファは何時に無く真剣な表情をしている。
先程までは反応を示さなかったラルファだが、男が情報を話し始めると漸く顔を上げたのだが・・・

「―――全部嘘じゃねぇか」

「「ッ!?」」

その二人が息を飲むのが分かる。だがこれは事実だ。
能力を使った俺に嘘など通用しないのだが・・・

「何でそんな事分かるんだ?」

「・・・力を使ったんだね」

「ラルファの言う通り。俺に嘘なんて通じねぇよ。それに―――」

二人の言葉に反応しながら俺は目の前の男を見る。

「「・・・・・・」」

俺の動作に釣られて二人も男の顔を見るが、俺の言葉の続きを俺の口から聞くまでも無く理解した様だった。

「・・・な?」

「・・・そうみたいだな」

「・・・・・・」

男の顔から表情が、感情が消えていた。
まるで能面の様とはこの事を言うのかと思ったが、俺にウソが通じないと思ったのか何なのか、本性を表したと言う事に他ならなかった。
男は語らない。先程までは饒舌に嘘を並べていたが、今は口を噤み俺が良いと言っても何も話さないだろう。何故だかそう思った。

プロだねぇ

だが既に俺は男の知りうる情報を既に手に入れている。
なのでもうこの男に用ほ無く、俺自体別に拷問の趣味も無いのでこのまま殺そうと立ち上がると、それまで無言だった男が口を開く。

「お前に嘘が通じないと言うのは本当の事だろう。だが、俺から情報を取る事は―――」

「もうコインは持って無ぇのか?もうアークデーモン呼び出せ無いだろ?」

「ッ!?」

男の言葉を遮り俺が強制召喚に必要なコインの話を持ち出すと、感情の消えていた顔に若干変化が現れる。

「もうお前から得る情報なんて無ぇんだよ、カロエラ村出身のナイーロくん」

「なッ、何故――――ッッ」

男は最後まで言い切る前に絶命する。
跪いていた男の頭部を俺が蹴り飛ばし吹き飛ばしたからだ。

「「・・・・・・」」

直哉とラルファは何も言わない。
俺も何も発しない。
男はアギリーの仇と言う訳では無かったのでラルファに委ねる事はせず俺の判断で殺してしまったが、ラルファに確認を取った方が良かっただろうか?と考えてから首を振った。

ラルファは復讐なんてするタマじゃねぇか・・・

まだ仲間達はやって来ない。
あとどれ程待てば仲間達がやって来るのか分からなかったが、直ぐでは無いだろうなと思った。

あー、暇だなぁ・・・
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