異端の紅赤マギ

みどりのたぬき

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第7章:愚者の目覚めは月の始まり編

第325話:本領発揮

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魔力が無く、自分の身体を強化出来ない俺の戦い方は基本的には強襲、不意打ち、ヒットアンドアウェイが中心となる。
アリシエーゼに無断で変えられたこの身体はどんな傷だろうと瞬時に修復する。
心臓や頭部、脳を損傷すると他の部位に比べて修復は遅くなるが、それでも復活は出来る。

アリシエーゼは以前、ヴァンパイアの始祖と喧嘩した時に頭潰されて修復に半日掛かったとか言ってたっけ?

頭だか心臓だかは忘れたがそんな事を言っていたし、俺もオルフェでアリシエーゼに半身を吹き飛ばされた時は結構眠っていた気がする。
何が言いたいのかと言うと、要はどんな傷でも基本的には死ぬ事は無く、不死身でかつヴァンパイアの進化系なのか退化系なのかは分からないが、そんなアリシエーゼの力を分け与えられた俺はアリシエーゼ同様不老の存在でもある。
つまりは不老不死なのだが、如何せん先程も出たが、俺自身は魔力を有していない為、身体強化と言う強力無比な力を使う事は出来ない。
なので基本的に常時身体強化や魔力障壁を展開しているこの世界の人や魔物や悪魔には俺の攻撃は通常では効きもしない。
寧ろ、攻撃した此方の身体が先にぶっ壊れてしまうし、相手から攻撃を受ければ強化も障壁も貼っていない俺の身体はいとも簡単に壊されてしまうのだ。

どんな理不尽なんだと思わなくは無いが、こればかりは仕方無いと諦めるしか無い。
だが、そんな無力で虫けらの如き俺だがどうにかならなくは無い。
今俺が装備している篭手はホルスで見付けた掘り出し物で、それに加えて篤が改修を行っており使用者の精神を感知すると言われる超希少金属のミスリルを使用している。
篤んクローと何故か爪要素が無いのに篤がそう呼ぶ篭手は、周囲に存在する魔力の源と言われるマナを超効率的かつ自動的に吸収する。
その吸収した魔力を使って障壁を展開出来るのだが、改修前の篭手は内蔵された魔力を自身で操作して障壁の展開や強度を変えられる物であったが、精神を感知するミスリルを使って改修した事により、俺の精神を篭手自らが感知して自動で障壁の強度などを変えられる優れものに変化していた。

コレのお陰で魔力障壁のある奴もぶっ飛ばせる様になった

障壁と障壁がぶつかれば強度が勝る方が勝つ。つまり俺の展開する障壁が相手より強度で勝っていたのならば、その相手の障壁をぶち破って攻撃を当てる事が可能となる。
なので魔力の無い穢人と呼ばれる俺でも、魔力のある奴らと対等に渡り合えるのだが、それでもまだ問題は残る。

身体強化が使えれば更に強くなれるんだがな・・・

そう、魔力障壁は擬似的にでも使える様になったのだが、この世界でもう一つの重要なファクターとなる身体強化についてはどうにもならない。
魔力障壁は身体強化と合わさる事でその真価を発揮する。
と言うよりは身体強化と魔力障壁は切っても切れない関係と言うか相互に干渉している。
それはマイナス方向に作用する事は無く、身体強化を効率的に使えて強力になれば、魔力障壁も相乗して強固になるし、身体強化によって生み出されるパワーに耐えられる様に障壁もいつの間にか合わせて強固になったりするらしい。
らしいと言うの俺はその両方を使う事が出来ないので体感した事が無いから何とも言えないのだ。
これらは全て聞いた話になるが決して嘘でも間違ってもいないだろう。

つまり篭手が良い物で障壁を展開出来る様になったは良いが、身体強化が使えない為そ性能を十全に使えていないと言う事なのだが、近頃俺の身体はして来ている。
変化と言っても見た目が変形して怪物の様になって来ている訳では無い。
アリシエーゼに変えられて間も無い頃は、恐らくまだ身体にそれが馴染んでいなかった。
しかし最近、特にホルスでのフェイクスと言う悪魔との戦い以降自分で分かる程に、力が馴染んで来ているのだ。
嗅覚による索敵や影移動が使える様になりそれを上手く扱える様になったのが何よりの証拠だと俺は思っているが、そう言った特殊な能力と同時に膂力自体増していて、身体強化を使わずともそれ以上の力を扱う事が今は出来る。

だからさ、今はそんじょそこらの人間なんかにゃ負ける訳無いのよ

永い長考の後俺は上空から麻袋を抱えている三人組の真後ろに移動する。

「漸く捕まえたぞ、テメェら」

当然現れた俺の声にすぐ様反応して、麻袋を直接持つ者以外の二人が腰の短剣を抜き身構える。
声など掛けずにそのまま奇襲でもすれば良いのだが、それではどうにも怒りが収まりそうに無く、俺の言葉に反応をするのかも怪しいが独りよがりでもこうして少しでも発散しようと思った。

「「「・・・・・・」」」

突然現れた俺へ最大限の警戒を示す三人の内、麻袋を担いだ一人はジリジリと俺と距離を取る様に下がり始める。
残り二人は腰を低く身構えて俺との間合いを測っているが、こう見るとその構えは明らかに騎士のそれでは無い。

「そっちに下がっていいのか、焼け死ぬぜ?」

「――ッ!?」

俺は麻袋を持つ一人に顔を向けてそう言うと、其奴はハッとして後ろを振り返る。
その目線の先には、アークデーモンと戦いを繰り広げる直哉の姿があり、距離も大分近い為戦いの余波は今も俺達に降り注いでいる。
直接的な影響がある訳では無いのだが、先程から熱波が顔を焼く勢いだ。
直哉は明らかに精神的にどうにかなっていそうなのだが、今はそれは良い。
こちらはこちらでやる事をやるだけで、それに集中する事にした。
そうしないとまた取り返しの付かない事になりかねないし後悔はしたくない。

「ほら、早くその担いでるのこっちに渡せよ。そうすりゃ、多少は殺し方を考慮してやるぜ?」

俺は敢えて身構える二人を無視して麻袋を担いでいる奴へ近付く。
もう既に三人とも俺の能力で情報は引き出し終わっている―――
と言いたい所だが、実はそうでは無かった。
失念していたが、直哉が能力を使うとリリ曰く、何らかの力場が発生してそれが干渉して俺の能力が発動出来なくなるのだ。
だからまだ情報を手に入れる事は出来ていないが、最悪情報は入手出来て居なくても構わない。
此奴らが抱える荷物の回収が最低条件なのでそれさえ達成出来ればと思うと同時に、一人だけ残しておけば良いかとも思っていたので一人、二人何時殺してもまったく問題無いのだが、直哉があまりにも楽しそうにアークデーモンと戦っており、直ぐに其方に参戦するのも気が引けた為少しだけ此奴らの寿命を伸ばしてやる。

「なんだよ、無視か?折角―――」

俺がまた一歩踏み出し口を開いた瞬間、身構えていた内の一人が音を置き去る勢いで飛び掛って来た。
言葉通り、一足で高々と跳躍して一気に間合いを詰めて来たのだが、俺は心底呆れてしまった。

何で態々逃げ場の無い空中を選択するかなぁ・・・

そんな事を思いつつ俺はその場で左足を軸に回転する。

「ッらぁ!!」

「――ぐぼァッッ」

飛び掛ってきた奴が俺に真上から短剣を突き刺そうと迫って来たが俺は回転からの右胴回し蹴りをそいつにぶち当てる。
咄嗟に腕をガードに回して俺の蹴りを受け止めたまでは良いが、俺の蹴りはその腕の骨を砕いていた。
妙な感触が足の裏から伝わるが、俺はそのまま蹴り抜く。
ガードを地面に脚を付けずに行った為、飛び掛ってきた騎士風の教会所属の間者は衝撃を殺す事が出来ずに真後ろへと吹き飛ばされた。

「はい、さよーならー」

俺がそう独りごちると、男―――たぶん―――は直哉とアークデーモンが戦うその場所へと一直線に吹き飛び、そして一瞬で消し炭となった。
運悪く丁度直哉が放った攻撃で火柱が上がり、そこに突っ込んだ形だが、麻袋を持った奴が下がり気味だったので気を付けないとお前もああなるぞと言う警告にはなっただろうと俺は口角を上げた。

「――動くなッ」

俺が蹴り抜いた体勢から脚を地に付けると同時に後ろから声がして喉元に何かヒヤリとした物が押し付けられた。
目だけを後ろへ向けるとそこには身構えていたもう一人の奴―――こちらも声からして男だろう―――が俺の背後に回り込んでいて、短剣を俺の喉元に押し付けていた。

いつの間にッ!?

とは思わない。その動きも俺は常に追っていて分かっていて敢えて自由にさせたのだから。

「やってくれたなッ、お前が教会から―――」

「喋り過ぎ」

語尾に笑いを付けて俺はそう言って身体を背後にいる男へと瞬間的にぶつける。

「ッ!?」

一瞬、多々良を踏む男だが、直ぐに短剣で俺の首を掻き斬ろうと腕を伸ばす。
だが、その時には俺は既に影移動を使いその場から消えて居た。

「チッ!」

俺の姿を見失った男は瞬時に切り替えて背後へと振り向きざまに短剣を振るう。

残念ッ

確かに背後へ移動したのだが、それはブラフだ。
気配だけを残す形で直ぐに影移動でその場から掻き消えた俺にまんまと踊らされた形の男は漸くそれに気付く。
だがそこまでだった。辺りを警戒しようと顔を動かした男は次の瞬間には胴体に大穴を開けられ絶命していた。

やっぱり対人間には俺は滅法強い

自画自賛と言う訳では無いが、いくら身体強化が使えようと、魔力障壁である程度の攻撃を防ごうと俺は負ける気がしない。
アリシエーゼから分け与えられた力が身体に馴染んで来て、既に人の域を超えていると言うのもあるが嶋崎流が俺の中で息付いている証拠だとも思った。

異世界だろうが未来の地球だろうが平行世界だろうがなんだろうが、対人戦では絶対負けねぇよ

俺は本領発揮だぜッ、等と考えながら鼻を鳴らして残った一人を見る。
完全に固まっている男に俺は最後通告であるかの様にゆっくりと言う。

「最後だ。ソレを置いてとっとと消えるか、この場で脳みそぶちまけて死ぬか選べ」

「・・・・・・」

俺を睨みながら考える男だが、やがて諦めたのか男は麻袋をその場に放り投げる。

「クソッッ」

そう言って男は任務を放棄して逃げ出した。

おいおい、そんな乱暴に扱うなよ・・・

男が麻袋を放り投げた際、「ぐぇッ」とか聴こえて来たので若干呆れながら逃げる男の背中を見る。

まぁ、逃がさないんだけどね

また語尾に笑いを付けながら俺は心の中でそう嘯き、徐にその名を口にする。

「――リリ、捕まえておけ。殺すなよ」

その瞬間、どこからとも無く風が吹き抜ける。
そう思うと、その風を伴ってリリが何処から跳躍したのかは分からないがひとっ飛びで俺の元までやってくる。
ズシャリッッともの凄い着地音を響かせたリリは俺を一瞥して言った。

「ふんッ、偉そうに。お前は何様だ」

そんな事を言ってまたその場で跳躍して逃げていった男を追い掛けて行った。

お前のマスター様だよ・・・
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