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第7章:愚者の目覚めは月の始まり編
第298話:本隊
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巫山戯んなッッ
目の前に広がる光景に心の中で悪態を付くが、そんな事ではこの現実はどうにもならなかった。
ストレガンド人から得た情報は二十万にも及ぶ連合軍の本隊が此方に向かっていると言う事だった。
俺はそれを情報として認識していたが、正しく理解してはいなかったのだろう。
目の前に一体どれ程の人間が居るのか最早分からないのだ。
二十万・・・・・・
何だコレ、笑えてくるだろ・・・
本当に二十万も目の前に存在しているのか、それよりも実際は少ないのか多いのか全く分からない程、横に奥にと伸びるその列はホルスでけしかけられた魔物の大群の比では無かった。
そうだッ、イリア達は!?
俺だけ先にゴリアテを停めてある場所に戻ると、既にその場所は連合軍の本隊が到着しており言葉を失ってしまったが、そんな場合では無いと我に返る。
「クソッ、何処だ!」
目の前に展開する連合軍の本隊に気を取られていたがゴリアテは二階建ての大型馬車の為、目を凝らすとその二階部分を見付ける事が出来た。
直ぐに駆け出すが本隊は既に行動を再開しており、前側何万かは分からないが蠢く様に近付いて来る人の山はそれだけで恐怖に値する。
こんな人数相手にしてられねぇ!
戦うにしろ俺の能力を使いどうにかするにしろ、どうにか出来るのかも知れないがそれを試す時間は無いと判断し俺は影移動をすぐ様発動した。
既に俺に気付いて最前列辺りが騒がしかったが、そんな喧騒を置き去りにして俺は目視出来ているゴリアテの屋上部分に移動する。
「ッ!」
着地と同時に屋上の梯子を使って二階に飛び降りるとそこには見知らぬ男が二人室内を物色しているのが分かった。
「な、なんだお前ッ」
「まだ仲間がいやがったのか!?」
二人の男は俺を見て腰に差した剣を抜こうとするが、それよりも早く俺が二人を支配する。
彼奴らは無事みたいだな・・・
仲間達はどうやらこの連合軍の本隊と出くわしてしまい、為す術なく連行された様だ。
識別用の腕章等も身に付けていなかった事から弁明の余地も無かった様だが無駄に抵抗はして居らず無事と言う情報を得て俺はホッとした。
とりあえず一階に居る奴らも黙らせてからゴリアテを何処かに移動して貰うか
そんな事を考えつつ一階に向かい、連合軍の兵士であろう男三人も黙らせる。
御者台へは一階の壁からアクセスする事が出来る。
と言っても小窓の様な物が付いているだけだが、それを内側からノックして開けさせてから御者台に居る二人の兵士も支配下に置く。
そのままゴリアテを俺達が森を迂回する前に帝国側の逃亡して来た傭兵と出会った分かれ道の手前まで移動して以後ゴリアテの死守を命じると直ぐにゴトリと音を鳴らせてゴリアテは動き出した。
「それ貸せ」
一階にいる兵士にそう言って腕章を拝借して直ぐに外に飛び出ると、ゴリアテの中には入らなかった、この件を任された部隊の残りの者――だと思う――が、騒ぎ始めたのでそれらも全て黙らせる。
能力は成る可くつかわずに立ち回る事としていたのだが、今はそんな事を言っている暇も無く、何よりも非常に面倒臭いので俺はその戒めを自ら解禁し仲間達と合流する事を最優先とした。
ゴリアテが森の迂回路をオルフェ方面へと走って行くのを横目に見ながら、一応とばかりに周囲に居る者達には特に気にしない様に命じて本隊が進んで行く方向とは真逆に走り出した。
まだそんな遠くへは行って無い筈だ
そう思い、俺は走りながら仲間達の情報を探る。
あっちへ行った、こっちへ行ったと若干その情報に翻弄されながらも進んで行くが途中で俺を訝しむ者や声を掛けて来る者が居て非常に面倒だったが、全ての者達と事を構えるよりはと思って出来るだけ俺はその者達の認知を書き換える。
まぁ、一応これも後々の事を考えれば・・・
他者と繋がり、その者の情報、認知それら全てを思い通りに出来るが、俺の能力はそう言った事を条件を付けて発動するなんて事も出来る。
例えば、俺があるキーとなる言葉を発したら何をしろとか、夕飯を食う時にどうしろとか、それこそ俺がピンチの時に助けろとかそう言った条件を付けて命令自体を待機させておく事が可能なのだ。
なので俺は出来る限り目に付く奴らに片っ端から能力を使う。
勿論、ある条件を付けて二つ三つ命令を待機させておく。
別にこれは命令を待機状態にしておいたからと言って本人が何かしらの影響を受ける訳では無い。
普段通りに生活をしていて、発動条件が満たされた場合にのみ俺の命令が実行されるので、もしかしたら一生発動されないかも知れないのだが、まぁその時はその時だ。
範囲指定は苦手なんだよな・・・
俺の能力は目視または認知出来る距離ならば複数人に対して発動は出来るのだが、かなり集中しなければ成らず苦手としている。
ましてや、走りながら仲間を探しつつなんてのはなかなか出来ない事なので、一瞬立ち止まってそれに集中するかとも考えるが直ぐに首を振ってその考えを自ら捨てる。
とりあえず出来る限りで今の所は良いか
そうして暫く奔走していると、すれ違った兵士から有力そうな情報を入手する。
つい先程それらしい者を連行する仲間を見たと言うのだ。
その情報を元に更に進むと直ぐに仲間達を発見する事が出来た。
歩きで周囲を連合兵士に囲まれた仲間達を目視して俺は直ぐに影移動を発動する。
「よッ!お待たせ」
「「「「「「ッ!?!?」」」」」」
影移動で仲間達のすぐ横、連合兵士が取り囲むその囲いの中に突然現れた俺に皆驚き目を丸くする。
「遅くなってすまな―――」
沈黙している仲間達に謝罪の言葉を口にするが途中で右脚が重くなるのを感じてそちらに目を向ける。
「・・・・・・」
「・・・ごめん、ごめん。遅くなって悪かったよ」
ユーリーが俺の脚にしがみ付いて来たのだと分かり笑いながらそのフサフサの髪を優しく撫でる。
「本当に遅いですよッ」
「悪かったって・・・それにしても良く我慢出来たな」
特にムネチカ、とデス隊を見て言うと三人は顔を見合わせてから頷く。
「特に危害を加えられそうな事は無さそうだったので」
「そうですよ!ハル様の命令が無いのにこんな大舞台開演しちゃダメだって事くらい分かってますよ!」
「嘘ばっかり。一番先に飛び掛かろうとしてマサムネに止められてたじゃないか」
ムネチカは微妙に危なかったが、どう考えてもこの数を相手に大立ち回りをする訳にはいかない事はマサムネも他の者も理解していた様で素直に従っていた様だ。
俺やアリシエーゼなら何とかしてくれると思って行動していた様なのだが、そう言われると何ともむず痒くて仕方無かった。
「あ、そうだイリアは―――」
「何だ貴様はッ!」
「お前どこの部隊だッ」
イリアが此処に居ない事で仲間達は概ね無事だが、全滅の次かその次くらいに最悪の自体になっていそうだと思い仲間達にそれ。訪ねようとすると遅まきながら突然現れた俺に周囲を取り囲んでいた兵士数人が駆け寄って来る。
「チッ、今俺が大事な話をしてんだから黙ってろや」
俺はイラつきながらも瞬時に駆け寄って来た兵士四人の脳に繋がり黙らせる。
ついでに情報も入手したので俺が聞きたい事も直ぐに分かった。
「やっぱ教会の奴らに連れて行かれたか・・・」
「それなんだけれど、教会は複数の騎士団をこの戦いに派遣しているわ」
俺の独り言にサリーが合わせてくる。
その情報は既に予想済みであった為俺はさして驚きもせずに会話を続ける。
「人数は?」
「・・・恐らく五千から一万程よ」
その程度かと思った。二十万の内の一万と聞くとそこまで多くは無いのだなと思ったのだが、それを見越してサリーは真剣な表情で続ける。
「教皇直轄の聖白護神騎士団も参加しているのよ・・・つまりは教会全体が参加していると考えて良いのよ」
「あぁ、そう言う事になるのか。それにしても―――――」
サリーの言葉の意味にウンザリしながら俺は一泊置いてからその想いを乗せて吐き出す。
「―――ダッセェ名前だな?聖白・・・何だったか?んなクソダセェ名前良く思い付くなッ」
「白い神の光りに護られし聖なる騎士団と言う意味よ・・・」
「はいはい、んでイリアはそのダッセェ騎士団に連れ去られたのか?」
「・・・いえ、別の騎士団に連れて行かれたわ。聖白護神騎士団は本陣近くに居る筈だから恐らくそこに連れて行かれたんだと思うわ」
抵抗出来ずに言われるがまま来たがった仲間達は殆ど情報を得られていない。
なので今サリーが語った内容も予想と言う事になるので俺は先ずは本陣の場所を割り出す事にした。
「よし、ちょっと集中するか―――」
「ちょっと待って下さいよッ、他の方はどうしたんですか?」
先程苦手と思っていた複数人への同時接続を試みようとした時、モニカが話し掛けて来たので若干面倒に感じたが、そう言えばそろそろリリ達もこの本隊とぶつかる殺すだったと思い直して先ずは三人と合流する事にした。
「ちょっと待ってろ。今道を創る」
「へ?道??」
俺の言葉にモニカがアホ面をかますが俺はそれに意識を割かずに瞬時に周囲に居る者達を出来るだけ視認し知覚し認知する。
「・・・・・・ちょ、ちょっと何ですかコレは」
「これは・・・」
「おぉッ、絶景ですよハル様!」
既に割れ始めている人の山を見て、皆先程以上に目を見開きその光景を見つめる。
その間もどんどんと人垣が割れて行く。俺は歩き出してリリ達が通り易い様に人で出来た道を作成しながら少しリリ達に近付く様に歩きながら能力の発動を繰り返した。
やっぱ一度に万単位は全然無理だな・・・
数百から千程が限界かと思いつつ能力を使うが、連続発動自体は特に苦も無く出来るので、一瞬で千の人間に命令を与えて次の千へと繰り返していく。
それは傍から見れば一瞬で万を超す人間を変えた様に見えるのかも知れない。
後ろからもどんどんと進み続けてくる兵士達全てを押し留めるのは無理なのであくまで周辺だけだが、暫くすると割れた人の道の先にリリ達が姿を現す。
「―――やっぱり旦那が何かしたんだな・・・」
「あぁ、とりあえずさっき説明した通りだ。先ずはイリアを取り戻しに行く」
三人と合流して状況を軽く説明をし、ついでにと仲間達の腕章をその辺の兵士からパク―――借りて装備させる。
軽く準備を整え、人垣を元に戻して本隊とは逆方向に仲間達とイリアを迎えに歩き出した。
「そう言えばアリシエーゼさんは?」
「あ・・・」
モニカの一言に歩き出した俺の脚が止まる。
が、一瞬で別にいいかと思い直して再び歩き始めた。
いいよね・・・?
目の前に広がる光景に心の中で悪態を付くが、そんな事ではこの現実はどうにもならなかった。
ストレガンド人から得た情報は二十万にも及ぶ連合軍の本隊が此方に向かっていると言う事だった。
俺はそれを情報として認識していたが、正しく理解してはいなかったのだろう。
目の前に一体どれ程の人間が居るのか最早分からないのだ。
二十万・・・・・・
何だコレ、笑えてくるだろ・・・
本当に二十万も目の前に存在しているのか、それよりも実際は少ないのか多いのか全く分からない程、横に奥にと伸びるその列はホルスでけしかけられた魔物の大群の比では無かった。
そうだッ、イリア達は!?
俺だけ先にゴリアテを停めてある場所に戻ると、既にその場所は連合軍の本隊が到着しており言葉を失ってしまったが、そんな場合では無いと我に返る。
「クソッ、何処だ!」
目の前に展開する連合軍の本隊に気を取られていたがゴリアテは二階建ての大型馬車の為、目を凝らすとその二階部分を見付ける事が出来た。
直ぐに駆け出すが本隊は既に行動を再開しており、前側何万かは分からないが蠢く様に近付いて来る人の山はそれだけで恐怖に値する。
こんな人数相手にしてられねぇ!
戦うにしろ俺の能力を使いどうにかするにしろ、どうにか出来るのかも知れないがそれを試す時間は無いと判断し俺は影移動をすぐ様発動した。
既に俺に気付いて最前列辺りが騒がしかったが、そんな喧騒を置き去りにして俺は目視出来ているゴリアテの屋上部分に移動する。
「ッ!」
着地と同時に屋上の梯子を使って二階に飛び降りるとそこには見知らぬ男が二人室内を物色しているのが分かった。
「な、なんだお前ッ」
「まだ仲間がいやがったのか!?」
二人の男は俺を見て腰に差した剣を抜こうとするが、それよりも早く俺が二人を支配する。
彼奴らは無事みたいだな・・・
仲間達はどうやらこの連合軍の本隊と出くわしてしまい、為す術なく連行された様だ。
識別用の腕章等も身に付けていなかった事から弁明の余地も無かった様だが無駄に抵抗はして居らず無事と言う情報を得て俺はホッとした。
とりあえず一階に居る奴らも黙らせてからゴリアテを何処かに移動して貰うか
そんな事を考えつつ一階に向かい、連合軍の兵士であろう男三人も黙らせる。
御者台へは一階の壁からアクセスする事が出来る。
と言っても小窓の様な物が付いているだけだが、それを内側からノックして開けさせてから御者台に居る二人の兵士も支配下に置く。
そのままゴリアテを俺達が森を迂回する前に帝国側の逃亡して来た傭兵と出会った分かれ道の手前まで移動して以後ゴリアテの死守を命じると直ぐにゴトリと音を鳴らせてゴリアテは動き出した。
「それ貸せ」
一階にいる兵士にそう言って腕章を拝借して直ぐに外に飛び出ると、ゴリアテの中には入らなかった、この件を任された部隊の残りの者――だと思う――が、騒ぎ始めたのでそれらも全て黙らせる。
能力は成る可くつかわずに立ち回る事としていたのだが、今はそんな事を言っている暇も無く、何よりも非常に面倒臭いので俺はその戒めを自ら解禁し仲間達と合流する事を最優先とした。
ゴリアテが森の迂回路をオルフェ方面へと走って行くのを横目に見ながら、一応とばかりに周囲に居る者達には特に気にしない様に命じて本隊が進んで行く方向とは真逆に走り出した。
まだそんな遠くへは行って無い筈だ
そう思い、俺は走りながら仲間達の情報を探る。
あっちへ行った、こっちへ行ったと若干その情報に翻弄されながらも進んで行くが途中で俺を訝しむ者や声を掛けて来る者が居て非常に面倒だったが、全ての者達と事を構えるよりはと思って出来るだけ俺はその者達の認知を書き換える。
まぁ、一応これも後々の事を考えれば・・・
他者と繋がり、その者の情報、認知それら全てを思い通りに出来るが、俺の能力はそう言った事を条件を付けて発動するなんて事も出来る。
例えば、俺があるキーとなる言葉を発したら何をしろとか、夕飯を食う時にどうしろとか、それこそ俺がピンチの時に助けろとかそう言った条件を付けて命令自体を待機させておく事が可能なのだ。
なので俺は出来る限り目に付く奴らに片っ端から能力を使う。
勿論、ある条件を付けて二つ三つ命令を待機させておく。
別にこれは命令を待機状態にしておいたからと言って本人が何かしらの影響を受ける訳では無い。
普段通りに生活をしていて、発動条件が満たされた場合にのみ俺の命令が実行されるので、もしかしたら一生発動されないかも知れないのだが、まぁその時はその時だ。
範囲指定は苦手なんだよな・・・
俺の能力は目視または認知出来る距離ならば複数人に対して発動は出来るのだが、かなり集中しなければ成らず苦手としている。
ましてや、走りながら仲間を探しつつなんてのはなかなか出来ない事なので、一瞬立ち止まってそれに集中するかとも考えるが直ぐに首を振ってその考えを自ら捨てる。
とりあえず出来る限りで今の所は良いか
そうして暫く奔走していると、すれ違った兵士から有力そうな情報を入手する。
つい先程それらしい者を連行する仲間を見たと言うのだ。
その情報を元に更に進むと直ぐに仲間達を発見する事が出来た。
歩きで周囲を連合兵士に囲まれた仲間達を目視して俺は直ぐに影移動を発動する。
「よッ!お待たせ」
「「「「「「ッ!?!?」」」」」」
影移動で仲間達のすぐ横、連合兵士が取り囲むその囲いの中に突然現れた俺に皆驚き目を丸くする。
「遅くなってすまな―――」
沈黙している仲間達に謝罪の言葉を口にするが途中で右脚が重くなるのを感じてそちらに目を向ける。
「・・・・・・」
「・・・ごめん、ごめん。遅くなって悪かったよ」
ユーリーが俺の脚にしがみ付いて来たのだと分かり笑いながらそのフサフサの髪を優しく撫でる。
「本当に遅いですよッ」
「悪かったって・・・それにしても良く我慢出来たな」
特にムネチカ、とデス隊を見て言うと三人は顔を見合わせてから頷く。
「特に危害を加えられそうな事は無さそうだったので」
「そうですよ!ハル様の命令が無いのにこんな大舞台開演しちゃダメだって事くらい分かってますよ!」
「嘘ばっかり。一番先に飛び掛かろうとしてマサムネに止められてたじゃないか」
ムネチカは微妙に危なかったが、どう考えてもこの数を相手に大立ち回りをする訳にはいかない事はマサムネも他の者も理解していた様で素直に従っていた様だ。
俺やアリシエーゼなら何とかしてくれると思って行動していた様なのだが、そう言われると何ともむず痒くて仕方無かった。
「あ、そうだイリアは―――」
「何だ貴様はッ!」
「お前どこの部隊だッ」
イリアが此処に居ない事で仲間達は概ね無事だが、全滅の次かその次くらいに最悪の自体になっていそうだと思い仲間達にそれ。訪ねようとすると遅まきながら突然現れた俺に周囲を取り囲んでいた兵士数人が駆け寄って来る。
「チッ、今俺が大事な話をしてんだから黙ってろや」
俺はイラつきながらも瞬時に駆け寄って来た兵士四人の脳に繋がり黙らせる。
ついでに情報も入手したので俺が聞きたい事も直ぐに分かった。
「やっぱ教会の奴らに連れて行かれたか・・・」
「それなんだけれど、教会は複数の騎士団をこの戦いに派遣しているわ」
俺の独り言にサリーが合わせてくる。
その情報は既に予想済みであった為俺はさして驚きもせずに会話を続ける。
「人数は?」
「・・・恐らく五千から一万程よ」
その程度かと思った。二十万の内の一万と聞くとそこまで多くは無いのだなと思ったのだが、それを見越してサリーは真剣な表情で続ける。
「教皇直轄の聖白護神騎士団も参加しているのよ・・・つまりは教会全体が参加していると考えて良いのよ」
「あぁ、そう言う事になるのか。それにしても―――――」
サリーの言葉の意味にウンザリしながら俺は一泊置いてからその想いを乗せて吐き出す。
「―――ダッセェ名前だな?聖白・・・何だったか?んなクソダセェ名前良く思い付くなッ」
「白い神の光りに護られし聖なる騎士団と言う意味よ・・・」
「はいはい、んでイリアはそのダッセェ騎士団に連れ去られたのか?」
「・・・いえ、別の騎士団に連れて行かれたわ。聖白護神騎士団は本陣近くに居る筈だから恐らくそこに連れて行かれたんだと思うわ」
抵抗出来ずに言われるがまま来たがった仲間達は殆ど情報を得られていない。
なので今サリーが語った内容も予想と言う事になるので俺は先ずは本陣の場所を割り出す事にした。
「よし、ちょっと集中するか―――」
「ちょっと待って下さいよッ、他の方はどうしたんですか?」
先程苦手と思っていた複数人への同時接続を試みようとした時、モニカが話し掛けて来たので若干面倒に感じたが、そう言えばそろそろリリ達もこの本隊とぶつかる殺すだったと思い直して先ずは三人と合流する事にした。
「ちょっと待ってろ。今道を創る」
「へ?道??」
俺の言葉にモニカがアホ面をかますが俺はそれに意識を割かずに瞬時に周囲に居る者達を出来るだけ視認し知覚し認知する。
「・・・・・・ちょ、ちょっと何ですかコレは」
「これは・・・」
「おぉッ、絶景ですよハル様!」
既に割れ始めている人の山を見て、皆先程以上に目を見開きその光景を見つめる。
その間もどんどんと人垣が割れて行く。俺は歩き出してリリ達が通り易い様に人で出来た道を作成しながら少しリリ達に近付く様に歩きながら能力の発動を繰り返した。
やっぱ一度に万単位は全然無理だな・・・
数百から千程が限界かと思いつつ能力を使うが、連続発動自体は特に苦も無く出来るので、一瞬で千の人間に命令を与えて次の千へと繰り返していく。
それは傍から見れば一瞬で万を超す人間を変えた様に見えるのかも知れない。
後ろからもどんどんと進み続けてくる兵士達全てを押し留めるのは無理なのであくまで周辺だけだが、暫くすると割れた人の道の先にリリ達が姿を現す。
「―――やっぱり旦那が何かしたんだな・・・」
「あぁ、とりあえずさっき説明した通りだ。先ずはイリアを取り戻しに行く」
三人と合流して状況を軽く説明をし、ついでにと仲間達の腕章をその辺の兵士からパク―――借りて装備させる。
軽く準備を整え、人垣を元に戻して本隊とは逆方向に仲間達とイリアを迎えに歩き出した。
「そう言えばアリシエーゼさんは?」
「あ・・・」
モニカの一言に歩き出した俺の脚が止まる。
が、一瞬で別にいいかと思い直して再び歩き始めた。
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