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第6章:迷宮勇者と巨人王編
第255話:内緒話
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「ラルファくんになんて事するんだッ」
「そうですよ!ちゃんと謝って下さい!」
「へいへい。ほら、イリア謝れよ」
「何で私が謝らないといけないのよッ!?」
イリアがラルファをぶっ飛ばし、白眼を剥かせてしまったが為今はアギリーとリルカに俺とイリアがお説教されている最中だ。
それにしても―――
何で謝らないといけないって、お前がラルファぶっ飛ばしたんだろうが・・・
そもそもは俺がラルファをイリアへの生贄に捧げたのが発端なのだが、そんな事はどうでも良いと俺はこの話を無理矢理打ち切った。
「そんな事よりもさ、俺が寝てる間の事を教えてくれよ」
「そ、そんな事!?」
「貴方、どんな神経してるんですか・・・」
急に話を変えて、ラルファの件をスルーすると、アギリーとリルカは唖然としていたが、それよりも俺の記憶の補完の方が大切だ。
「俺も起きたらこの部屋で、キミと一緒に寝かされてたんだよねー」
イリアの警棒で顔面を殴打されて白眼を剥いていたラルファが、頬を擦りながら起きてそう言う。
「お前には聞いてねぇよ。結局、ただ寝てただけだろ」
「お前ッ、ラルファくんは頑張ってたんだぞ!」
「貴方程度では、ラルファ様が何をしようとしていたかすら理解出来ないんですよ!」
「へいへい・・・」
もう流石にこのお決まりな流れも飽きて来たので敢えて相手にする事はせずにイリアを見る。
単純に説明してくれと目で訴えた訳だが、何故か不機嫌そうなイリアは短くため息をついてから説明してくれた。
結局、あの後俺とラルファを担いでボス部屋から出るのだが、二人を担がないといけない、ラルファの神造遺物も持ち出さなければならないで、主に勇者パーティがテンパりその間に巨人が再起動して来たらしい。
そこで仲間達が駆け付けるのだが、イリアが絶対防御魔法を発動してノーダメージで逃亡する事に成功。
そらから俺とラルファをこの部屋に運んで、ラルファは数分後に目を覚まし、俺は三日程寝込んでいたと言う事だった。
「・・・なるほどね」
イリアの判断は適切だったのだろうと、俺は「よくやったな」とイリアを褒める。
するとイリアは頬を赤らめながら照れ隠しのつもりか、ツンツンしながらも「感謝しなさいよね」とか言っていた。
「と言うか、お前は寝てたと言うより・・・」
アギリーが言い辛そうにしながら俺を見る。
「貴方は死んでました。ですが、何故か肉体が再生してこうして目を覚ましています。貴方は何ですか・・・」
何と言われても返答に困るのだが、リルカ曰く、左半身が心臓含め吹き飛んでおり、完全に息をしておらず死んでいたと。
死んでいる筈なのに肉体は再生を続け、気が付けば息を吹き返して居たらしい。
「まぁ、そう言う特殊能力を持って生まれたんだよ、俺は」
「誤魔化さないで下さい!あんなの不死者の其れです!」
肉体が再生したり、心臓が破壊されてもそれすら修復されるなど、とても自然治癒で片付けられるものでは無いのだろう。
ヴァンパイアなど、灰から復活するとかなんとか言われているし、この世界でもそんな馬鹿げた肉体損傷を修復する力などは吸血鬼などの不死者が定番であり、リルカも俺が不死者だと思っている様だ。
「誤魔化してなんかいねぇよ。俺が特殊能力だって言ってんだからそうなんだよ。分かったか、コラ」
「え・・・?」
突然俺が有無を言わせぬ勢いで凄むとリルカは言葉を失う。
俺はこの件に関してこれ以上詮索はされたくないし、させるつもりは毛頭無い。
「まぁ、無事で良かったじゃないかー」
険悪な雰囲気になりそうな所でラルファが割って入る。
「何も良くねぇよ。それよりもお前のソレ、ちゃんと説明しろや」
俺は不機嫌にそう言って、ラルファの横の壁に立て掛けてある神造遺物の長剣を顎で示す。
「ん・・・説明と言ってもなぁ」
「コレは何だ。どう言う経緯で手に入れた?どんな特殊性がある?」
「・・・・・・」
「ラ、ラルファくんが困っているじゃないか!」
「辞めなさい!無礼ですよ!」
「無礼?舐めてんのかテメェら」
ラルファを問い詰める俺に対して間にアギリーとリルカが入って来るが、リルカの言葉に俺はムッとして言い返す。
「な、なんですかッ、ラルファ様も一生懸命頑張っていました!それは私達が良く知っています!」
「だから舐めてんのかテメェは。一生懸命やってるから何だよ、一生懸命やってたら約束は違えてもいいってのか?こっちは此奴が五分と言うから手を組んで一緒にやってやったんだ。その約束を果たさない奴に気を遣う義理はねぇよ」
「そ、それは仕方無いでしょう!?時間の多少の誤差は認識の範疇でしょう!」
確かにこの世界、個人で時計を持つなど余程金をもてあましてある奴にしか不可能だし、傭兵がダンジョンアタック時に時計を持って行く事は早々無いのは分かっている。
が、俺が言いたいのはそう言う事では無い。
「時間の多少のズレなんてどうでも良いが、俺が言いたいのは此奴が何もしなかったせいで俺達が死にかけた、必死になったのは俺達だけで割を喰ったのも俺達だけって話だッ、これだけやってんだから情報の一つでも寄越すのが筋ってもんだろうが!」
遂々、ヒートアップしてしまった為、一旦そこで言葉を区切るがラルファもその仲間も何も言わない。
俺の隣に立つイリアも、他の仲間達も一切口を開かない。
「で、ですからッ、ラルファ様は必死に―――」
「もういいよお前、マジで黙れ」
「ッ!?」
俺の醸し出す剣呑な気配にリルカはそれ以上何も言えずに居たが、そこで漸くラルファが口を開く。
「分かったよ、話すから一旦落ち着こうよー」
アハハと笑うラルファだが、俺は冷ややかな目でリルカを見続けた。
何、この無能
俺の中でこの思いが大半を占めていた。
俺とアリシエーゼが必死こいて巨人の相手をしている間、此奴らはラルファの傍でただ突っ立っていただけだ。
巨人がラルファに迫ってしまった時にアギリーは前に出て食い止めようと身体を張ろうとしていたが、その身体は震えていたしアレで巨人の一撃を受けようとしていたと考えると笑ってしまう。
確かにあの巨人はそこらの傭兵が束になろうと相手に出来るものでは無かっただろう。
だが、散々勇者の側近、右腕―――何でも良いがラルファを護る者を自称していて、リルカなんかはその場で顔を青くして身動きすら取れていなかった事を考えると、使えない奴らとしか俺は思えなかった。
「ちょ、ちょっとー、ホントやめようよぉ」
苦笑いを浮かべてラルファは俺とアギリーの間に身体を捩じ込ませて「まぁまぁ」とか言っていた。
その時俺の直ぐ近くで不意に視線を感じて振り向くと、もの凄い近くにエルフのフィフリーが居て顔を近付けて来ていた。
「ぇ、な、何・・・?」
「・・・・・・」
俺の顔にくっつきそうな勢いで顔を寄せるフィフリーだが、近付いているだけで特に何も言わない。
無言のプレッシャーか?とも思ったがここで思い出す。
そう言えば此奴、こう見えて何か話してるんだっけか・・・
全く何も話していない様で実はよーく観察すると口が動いていたり、本当に小さな声で声を発していたりするのを思い出し、目を細めてフィフリーの口元を超絶ヴァンパイア眼力で見通す様に観察してみた。
あ、何か喋ってるな・・・
それを感じて今度は耳を澄ませてみると、ボソボソと聞こえてくるが、よく聞き取れないので俺はフィフリーの口元に自分の耳を近付けてみる。
「ぇ、うん。私は?ビビって無い?」
そう言ったのか?とフィフリーの口元から耳を離して表情を窺うと、フィフリーは無言で頷いた。
「ぇ、う、うん。お前はあの時も堂々としてたな・・・」
巨人が迫る中、フィフリーだけはラルファの横に立ち微動だにせず唯、巨人を見据えていた。
あの様子は確かに巨人に怯えている訳では無さそうだったが同時にラルファを護ると言う気概も伺えなかったが、それは黙っておく事にした。
それよりも―――
「・・・お前、何で俺の考えてる事分かる訳?」
リルカやアギリーを無能と思ってはいたが、それは口に出していない。
それにも関わらずフィフリーがこんな事を言うものだから、何だかそれが怖くなって来てしまった。
「・・・・・・」
だが、フィフリーは俺の問いには答えず、無言で俺の元を離れると、モニカの方へと歩いて行ってしまった。
「な、何でこっちに戻って来るんですか!?」とモニカの叫びが聞こえるが、あっちは相変わらずかと心の中で苦笑する。
「んで、説明する気あんのか?」
ラルファが俺に情報の一つも寄越さないと言うなら別にそれはそれで構わなかった。
ただその時は此奴との縁が切れるだけだし、俺達は俺達で自分達の道を進むだけだと思ったのだが、ラルファは頭をポリポリと掻いて何かを逡巡してから、壁に立て掛けてある神造遺物の長剣を手に取り言った。
「今回はちょっと、本当に想定外だったんだよー、それは信じて欲しいんだけどさ・・・とりあえず話すよー」
「ラルファくん!?」
「本気ですかッ!?」
ラルファがその手に持つ長剣について語る事が心底以外だったのか、アギリーとリルカは目を見開く。
「別に隠しておく事でも無いでしょー」
「隠すべきですよッ、目の前に教会の―――聖女が居るんですよ!?」
あぁ、そう言う事か・・・
リルカは鬼の様な形相でイリアを指差し必死にラルファを止めようとしていた。
恐らく、この神造遺物とやらはその名に神が付く通り、教会や神聖魔法と深い関わり合いがあるのだろう。
イリアは俺の力で、聖女を聖女たらしめる要因となっている聖書を破棄させ、また糞の様な監視魔法の繋がりも絶たせているが、それはあくまで教会の内部、それも深い位置での事なので一般信者や外部の人間にはイリアが聖女では無くなった事は殆ど知られていない。
俺はする必要は無いと言っているのだが、イリアは普段はフードを被りあまり顔を晒さない様にしていたが、魔界のアタック時や今は特に顔を隠す事はしておらず、教会信者ならばイリアを見れば聖女と分かってしまうのだろう。
イリアは「え、私?」と言ってちょっと焦っているが、リルカはまるで親の仇を見る様にイリアを睨んでいた。
「どうでもいいからさ、話すのか話さないのか、どっちだよ」
俺は大体検討が付いていたが敢えて突き放す様な言い方をしてラルファ達を煽る。
「どうでも良くはありませんッ、貴方はちょっと黙ってて下さい!」
リルカはイリアから俺に向き直り憤る。
それが何だか面白くなって来て、俺が更に煽ろうと口を開くと―――
「待った。そこまでにしてくれ。リルカ、これはこの人にも関係ある話なんだ。分かってくれ」
俺が喋り出すのに待ったを掛け、真面目な口調でリルカに言い聞かせる様にラルファはリルカの肩に手を置いた。
「え、何故こんな奴と関係が・・・」
うん、そうだよ
何で俺が関係してくるんだ・・・
何だか急に嫌な予感がして来たので、俺は早々にこの場から立ち去りたい衝動に駆られた。
え、また面倒臭い事になるのこれ・・・?
「そうですよ!ちゃんと謝って下さい!」
「へいへい。ほら、イリア謝れよ」
「何で私が謝らないといけないのよッ!?」
イリアがラルファをぶっ飛ばし、白眼を剥かせてしまったが為今はアギリーとリルカに俺とイリアがお説教されている最中だ。
それにしても―――
何で謝らないといけないって、お前がラルファぶっ飛ばしたんだろうが・・・
そもそもは俺がラルファをイリアへの生贄に捧げたのが発端なのだが、そんな事はどうでも良いと俺はこの話を無理矢理打ち切った。
「そんな事よりもさ、俺が寝てる間の事を教えてくれよ」
「そ、そんな事!?」
「貴方、どんな神経してるんですか・・・」
急に話を変えて、ラルファの件をスルーすると、アギリーとリルカは唖然としていたが、それよりも俺の記憶の補完の方が大切だ。
「俺も起きたらこの部屋で、キミと一緒に寝かされてたんだよねー」
イリアの警棒で顔面を殴打されて白眼を剥いていたラルファが、頬を擦りながら起きてそう言う。
「お前には聞いてねぇよ。結局、ただ寝てただけだろ」
「お前ッ、ラルファくんは頑張ってたんだぞ!」
「貴方程度では、ラルファ様が何をしようとしていたかすら理解出来ないんですよ!」
「へいへい・・・」
もう流石にこのお決まりな流れも飽きて来たので敢えて相手にする事はせずにイリアを見る。
単純に説明してくれと目で訴えた訳だが、何故か不機嫌そうなイリアは短くため息をついてから説明してくれた。
結局、あの後俺とラルファを担いでボス部屋から出るのだが、二人を担がないといけない、ラルファの神造遺物も持ち出さなければならないで、主に勇者パーティがテンパりその間に巨人が再起動して来たらしい。
そこで仲間達が駆け付けるのだが、イリアが絶対防御魔法を発動してノーダメージで逃亡する事に成功。
そらから俺とラルファをこの部屋に運んで、ラルファは数分後に目を覚まし、俺は三日程寝込んでいたと言う事だった。
「・・・なるほどね」
イリアの判断は適切だったのだろうと、俺は「よくやったな」とイリアを褒める。
するとイリアは頬を赤らめながら照れ隠しのつもりか、ツンツンしながらも「感謝しなさいよね」とか言っていた。
「と言うか、お前は寝てたと言うより・・・」
アギリーが言い辛そうにしながら俺を見る。
「貴方は死んでました。ですが、何故か肉体が再生してこうして目を覚ましています。貴方は何ですか・・・」
何と言われても返答に困るのだが、リルカ曰く、左半身が心臓含め吹き飛んでおり、完全に息をしておらず死んでいたと。
死んでいる筈なのに肉体は再生を続け、気が付けば息を吹き返して居たらしい。
「まぁ、そう言う特殊能力を持って生まれたんだよ、俺は」
「誤魔化さないで下さい!あんなの不死者の其れです!」
肉体が再生したり、心臓が破壊されてもそれすら修復されるなど、とても自然治癒で片付けられるものでは無いのだろう。
ヴァンパイアなど、灰から復活するとかなんとか言われているし、この世界でもそんな馬鹿げた肉体損傷を修復する力などは吸血鬼などの不死者が定番であり、リルカも俺が不死者だと思っている様だ。
「誤魔化してなんかいねぇよ。俺が特殊能力だって言ってんだからそうなんだよ。分かったか、コラ」
「え・・・?」
突然俺が有無を言わせぬ勢いで凄むとリルカは言葉を失う。
俺はこの件に関してこれ以上詮索はされたくないし、させるつもりは毛頭無い。
「まぁ、無事で良かったじゃないかー」
険悪な雰囲気になりそうな所でラルファが割って入る。
「何も良くねぇよ。それよりもお前のソレ、ちゃんと説明しろや」
俺は不機嫌にそう言って、ラルファの横の壁に立て掛けてある神造遺物の長剣を顎で示す。
「ん・・・説明と言ってもなぁ」
「コレは何だ。どう言う経緯で手に入れた?どんな特殊性がある?」
「・・・・・・」
「ラ、ラルファくんが困っているじゃないか!」
「辞めなさい!無礼ですよ!」
「無礼?舐めてんのかテメェら」
ラルファを問い詰める俺に対して間にアギリーとリルカが入って来るが、リルカの言葉に俺はムッとして言い返す。
「な、なんですかッ、ラルファ様も一生懸命頑張っていました!それは私達が良く知っています!」
「だから舐めてんのかテメェは。一生懸命やってるから何だよ、一生懸命やってたら約束は違えてもいいってのか?こっちは此奴が五分と言うから手を組んで一緒にやってやったんだ。その約束を果たさない奴に気を遣う義理はねぇよ」
「そ、それは仕方無いでしょう!?時間の多少の誤差は認識の範疇でしょう!」
確かにこの世界、個人で時計を持つなど余程金をもてあましてある奴にしか不可能だし、傭兵がダンジョンアタック時に時計を持って行く事は早々無いのは分かっている。
が、俺が言いたいのはそう言う事では無い。
「時間の多少のズレなんてどうでも良いが、俺が言いたいのは此奴が何もしなかったせいで俺達が死にかけた、必死になったのは俺達だけで割を喰ったのも俺達だけって話だッ、これだけやってんだから情報の一つでも寄越すのが筋ってもんだろうが!」
遂々、ヒートアップしてしまった為、一旦そこで言葉を区切るがラルファもその仲間も何も言わない。
俺の隣に立つイリアも、他の仲間達も一切口を開かない。
「で、ですからッ、ラルファ様は必死に―――」
「もういいよお前、マジで黙れ」
「ッ!?」
俺の醸し出す剣呑な気配にリルカはそれ以上何も言えずに居たが、そこで漸くラルファが口を開く。
「分かったよ、話すから一旦落ち着こうよー」
アハハと笑うラルファだが、俺は冷ややかな目でリルカを見続けた。
何、この無能
俺の中でこの思いが大半を占めていた。
俺とアリシエーゼが必死こいて巨人の相手をしている間、此奴らはラルファの傍でただ突っ立っていただけだ。
巨人がラルファに迫ってしまった時にアギリーは前に出て食い止めようと身体を張ろうとしていたが、その身体は震えていたしアレで巨人の一撃を受けようとしていたと考えると笑ってしまう。
確かにあの巨人はそこらの傭兵が束になろうと相手に出来るものでは無かっただろう。
だが、散々勇者の側近、右腕―――何でも良いがラルファを護る者を自称していて、リルカなんかはその場で顔を青くして身動きすら取れていなかった事を考えると、使えない奴らとしか俺は思えなかった。
「ちょ、ちょっとー、ホントやめようよぉ」
苦笑いを浮かべてラルファは俺とアギリーの間に身体を捩じ込ませて「まぁまぁ」とか言っていた。
その時俺の直ぐ近くで不意に視線を感じて振り向くと、もの凄い近くにエルフのフィフリーが居て顔を近付けて来ていた。
「ぇ、な、何・・・?」
「・・・・・・」
俺の顔にくっつきそうな勢いで顔を寄せるフィフリーだが、近付いているだけで特に何も言わない。
無言のプレッシャーか?とも思ったがここで思い出す。
そう言えば此奴、こう見えて何か話してるんだっけか・・・
全く何も話していない様で実はよーく観察すると口が動いていたり、本当に小さな声で声を発していたりするのを思い出し、目を細めてフィフリーの口元を超絶ヴァンパイア眼力で見通す様に観察してみた。
あ、何か喋ってるな・・・
それを感じて今度は耳を澄ませてみると、ボソボソと聞こえてくるが、よく聞き取れないので俺はフィフリーの口元に自分の耳を近付けてみる。
「ぇ、うん。私は?ビビって無い?」
そう言ったのか?とフィフリーの口元から耳を離して表情を窺うと、フィフリーは無言で頷いた。
「ぇ、う、うん。お前はあの時も堂々としてたな・・・」
巨人が迫る中、フィフリーだけはラルファの横に立ち微動だにせず唯、巨人を見据えていた。
あの様子は確かに巨人に怯えている訳では無さそうだったが同時にラルファを護ると言う気概も伺えなかったが、それは黙っておく事にした。
それよりも―――
「・・・お前、何で俺の考えてる事分かる訳?」
リルカやアギリーを無能と思ってはいたが、それは口に出していない。
それにも関わらずフィフリーがこんな事を言うものだから、何だかそれが怖くなって来てしまった。
「・・・・・・」
だが、フィフリーは俺の問いには答えず、無言で俺の元を離れると、モニカの方へと歩いて行ってしまった。
「な、何でこっちに戻って来るんですか!?」とモニカの叫びが聞こえるが、あっちは相変わらずかと心の中で苦笑する。
「んで、説明する気あんのか?」
ラルファが俺に情報の一つも寄越さないと言うなら別にそれはそれで構わなかった。
ただその時は此奴との縁が切れるだけだし、俺達は俺達で自分達の道を進むだけだと思ったのだが、ラルファは頭をポリポリと掻いて何かを逡巡してから、壁に立て掛けてある神造遺物の長剣を手に取り言った。
「今回はちょっと、本当に想定外だったんだよー、それは信じて欲しいんだけどさ・・・とりあえず話すよー」
「ラルファくん!?」
「本気ですかッ!?」
ラルファがその手に持つ長剣について語る事が心底以外だったのか、アギリーとリルカは目を見開く。
「別に隠しておく事でも無いでしょー」
「隠すべきですよッ、目の前に教会の―――聖女が居るんですよ!?」
あぁ、そう言う事か・・・
リルカは鬼の様な形相でイリアを指差し必死にラルファを止めようとしていた。
恐らく、この神造遺物とやらはその名に神が付く通り、教会や神聖魔法と深い関わり合いがあるのだろう。
イリアは俺の力で、聖女を聖女たらしめる要因となっている聖書を破棄させ、また糞の様な監視魔法の繋がりも絶たせているが、それはあくまで教会の内部、それも深い位置での事なので一般信者や外部の人間にはイリアが聖女では無くなった事は殆ど知られていない。
俺はする必要は無いと言っているのだが、イリアは普段はフードを被りあまり顔を晒さない様にしていたが、魔界のアタック時や今は特に顔を隠す事はしておらず、教会信者ならばイリアを見れば聖女と分かってしまうのだろう。
イリアは「え、私?」と言ってちょっと焦っているが、リルカはまるで親の仇を見る様にイリアを睨んでいた。
「どうでもいいからさ、話すのか話さないのか、どっちだよ」
俺は大体検討が付いていたが敢えて突き放す様な言い方をしてラルファ達を煽る。
「どうでも良くはありませんッ、貴方はちょっと黙ってて下さい!」
リルカはイリアから俺に向き直り憤る。
それが何だか面白くなって来て、俺が更に煽ろうと口を開くと―――
「待った。そこまでにしてくれ。リルカ、これはこの人にも関係ある話なんだ。分かってくれ」
俺が喋り出すのに待ったを掛け、真面目な口調でリルカに言い聞かせる様にラルファはリルカの肩に手を置いた。
「え、何故こんな奴と関係が・・・」
うん、そうだよ
何で俺が関係してくるんだ・・・
何だか急に嫌な予感がして来たので、俺は早々にこの場から立ち去りたい衝動に駆られた。
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