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第6章:迷宮勇者と巨人王編
第251話:坊や
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「死んだかと思ったぞ!」
俺の傍に寄って来たアリシエーゼはそんな不吉な事を言うのだが、俺も死ぬと思ったのは内緒だ。
「痛ッ―――」
「どうしたのじゃ?」
全自動なキルモードのせいで身体の節々が痛み、俺が思わず声を上げるとアリシエーゼが心配する。
巨人を睨みつつ、簡単に先程の状況を説明するとアリシエーゼは「うわー、厨二クセェ・・・」とか言いたそうな表情をした。
言うなよ・・・
そんなの分かってんだ・・・
「ま、まぁ、お主に必殺技みたいなものがあったので安心したぞ!」
何故かアリシエーゼは俺を気遣う様な言葉を投げ掛けてくるが、実際問題このキルモードは今の俺とは案外相性が良いかも知れない。
と言うのも、意識出来ない行動を行う事によりこの動きをしたらこっちは反対に力を込める、抜くと言った考慮が能力自体では出来ずに、ただ力任せに反射運動的な行動を取るので、どうしても身体に負担が掛かる。
これを生身と言うか、普通の人間が行えばキルモードを解除した後、反動で身体が動かなく―――筋肉痛ならまだ良いが、下手したら筋断裂や骨折も有り得るのだが―――なってしまう。
が、今の俺はアリシエーゼによりそんな怪我等はものともしない人外・・・そう、人外、の・・・為、キルモード後の身体の損傷は有って無い様なものなのだ。
「お前、マジで必殺技とか言うな。恥ずかしいッ」
「な、何故!?」
そんなやり取りをしていると、巨人がゆったりと此方に近付いて来る。
その動きは緩慢だが、隙があまり無い。
先程のタックルの時も絶対に地球の重力化で体長が十メートルを超えている者の動きでは全く無かった。
そしてそのタックルを思い起こしていると、もう一つ奇妙だった点も思い出す。
あの鎧、光ってたよな・・・
まるで力を溜め込む行為に反応しているかの様に鎧が―――と言うか、鎧全体では無く、鎧の意匠だと思っていた窪みに光の筋が通り、それは光の血管とも呼ぶべきものの様に感じた。
血管って言うには一本一本が太過ぎるか・・・
だが、明らかに何かしらの特殊効果があるであろう事は分かった。
ただ、それが分かったからと言って、何をどう対処すれば良いのかは全く分からないのだが、やはりこの巨人を倒すにはこの甲冑自体をどうにかしなければならないのだろう。
「さて、危なかったがもうそろそろ時間だな」
「・・・そうじゃのう」
俺とアリシエーゼは落ち着きながらそんな会話をする。
巨人のタックルにより立ち位置が入れ替わる形となってしまった為、巨人の視界には遠いがラルファ達が映っているだろう。
だが、約束の五分はもう過ぎる。だったら見付かろうが余りに問題は無いと判断した。
「ラルファが何するのか結局聞いてないんだけどさ、技?魔法?分からないけどそれって遠距離なの?近距離なの?」
「そんなの妾が分かる筈無かろう・・・」
「んだよッ」
「なッ!?そもそもお主が突っ走って、そう言う所を確りと詰めないのが悪いんじゃろ!!」
巨人とラルファ達はかなり距離が離れている。
なのでもし近距離技とかなら近付かなければならないのだが、その辺はどうなっているんだ?と首を傾げる。
近付いて一撃入れるなら、事前にそれは伝えるよな・・・?
特に今の所そう言った合図等は無く、時間を稼ぐのは良いがその後はどうするんだと今になって不安になって来た。
「まぁ、とりあえず最後にもう少し遊んでやるか」
俺はニヤリと笑って巨人を見ながらそう言うと、アリシエーゼもそれに乗ってくる。
「そうじゃのう、こやつの動きにもそろそろ慣れたしの」
確かにこの巨人の速さや力強さは驚異的だ。
あんな巨大な鉈の様な物の振り下ろしを喰らえば一撃で肉塊となってしまうだろうが、結局は当たらなければ良いだけの話なのだ。
ラルファの準備が整ったのかは良く分からない。
が、もし準備が整ったのならそれらしい合図はあるだろうと思い、まだそれが無いのならもう少し時間稼ぎをしても良いかと、俺は一度軽く鼻を鳴らし言った。
「ハッ、当たらなければどうと言う事は無い」
俺の如何にもな台詞にアリシエーゼはまたしてもシラケた視線を向ける。
そんな痛い視線を浴びながらも俺は強気の姿勢を崩さない。
何か文句あるか?とアリシエーゼに逆に問うが、どうやら俺の台詞が何か聞いた事あるだとか、何かを真似しているだとかそう言う事を言いたい訳では無い様だった。
「先程、お主の超絶必殺技である―――その、キ、キル――ぷぷッ、キルモードとか言うのを使わざるを得ない様な状況だった事を忘れたのか」
そんな追い込まれた状況だったのに、当たらなければ等と偉そうに言って恥ずかしく無いのかと言うのだ、この女は。
「う、五月蝿ぇなッ、お前だって慣れて来たって言ってたじゃねぇか!?」
「そんな事より、妾はもう彼奴の動きには慣れたが、お主はどうなんじゃ?」
「俺だってキルモードなんてもう出さねぇよ!そんなん無くても余裕だわッ」
「そうか。そのキ、キル――ぷッ、キル――ふふッ、キルモードはまだまだ改良の余地が有りそうじゃし、土壇場で試すにはちとリスキーじゃろ」
コイツ・・・
先程からキルモードを小馬鹿にする様な態度のアリシエーゼに俺は怒りが込み上げてくる。
ちょっとネーミングが子供っぽいだけじゃないかッ
次笑いやがったら、簀巻きにして海に沈めてやると決意する俺に向かい、アリシエーゼは実際の背は俺よりも格段に小さいのに何故か胸を張り、見下す様な素振りで俺に言った。
「妾の動きに着いて来れない様なら、置いて行くからの、坊や」
・・・・・・
明らかに俺の台詞に被せて来たアリシエーゼに、最大限のシラケた眼差しを向ける。
まぁ、坊やは坊やなりにやってやるさ
俺はもう直ぐ傍まで来ている巨人を下から睨み上げ、本気で相手してやるよと心の中で嗤った。
俺の傍に寄って来たアリシエーゼはそんな不吉な事を言うのだが、俺も死ぬと思ったのは内緒だ。
「痛ッ―――」
「どうしたのじゃ?」
全自動なキルモードのせいで身体の節々が痛み、俺が思わず声を上げるとアリシエーゼが心配する。
巨人を睨みつつ、簡単に先程の状況を説明するとアリシエーゼは「うわー、厨二クセェ・・・」とか言いたそうな表情をした。
言うなよ・・・
そんなの分かってんだ・・・
「ま、まぁ、お主に必殺技みたいなものがあったので安心したぞ!」
何故かアリシエーゼは俺を気遣う様な言葉を投げ掛けてくるが、実際問題このキルモードは今の俺とは案外相性が良いかも知れない。
と言うのも、意識出来ない行動を行う事によりこの動きをしたらこっちは反対に力を込める、抜くと言った考慮が能力自体では出来ずに、ただ力任せに反射運動的な行動を取るので、どうしても身体に負担が掛かる。
これを生身と言うか、普通の人間が行えばキルモードを解除した後、反動で身体が動かなく―――筋肉痛ならまだ良いが、下手したら筋断裂や骨折も有り得るのだが―――なってしまう。
が、今の俺はアリシエーゼによりそんな怪我等はものともしない人外・・・そう、人外、の・・・為、キルモード後の身体の損傷は有って無い様なものなのだ。
「お前、マジで必殺技とか言うな。恥ずかしいッ」
「な、何故!?」
そんなやり取りをしていると、巨人がゆったりと此方に近付いて来る。
その動きは緩慢だが、隙があまり無い。
先程のタックルの時も絶対に地球の重力化で体長が十メートルを超えている者の動きでは全く無かった。
そしてそのタックルを思い起こしていると、もう一つ奇妙だった点も思い出す。
あの鎧、光ってたよな・・・
まるで力を溜め込む行為に反応しているかの様に鎧が―――と言うか、鎧全体では無く、鎧の意匠だと思っていた窪みに光の筋が通り、それは光の血管とも呼ぶべきものの様に感じた。
血管って言うには一本一本が太過ぎるか・・・
だが、明らかに何かしらの特殊効果があるであろう事は分かった。
ただ、それが分かったからと言って、何をどう対処すれば良いのかは全く分からないのだが、やはりこの巨人を倒すにはこの甲冑自体をどうにかしなければならないのだろう。
「さて、危なかったがもうそろそろ時間だな」
「・・・そうじゃのう」
俺とアリシエーゼは落ち着きながらそんな会話をする。
巨人のタックルにより立ち位置が入れ替わる形となってしまった為、巨人の視界には遠いがラルファ達が映っているだろう。
だが、約束の五分はもう過ぎる。だったら見付かろうが余りに問題は無いと判断した。
「ラルファが何するのか結局聞いてないんだけどさ、技?魔法?分からないけどそれって遠距離なの?近距離なの?」
「そんなの妾が分かる筈無かろう・・・」
「んだよッ」
「なッ!?そもそもお主が突っ走って、そう言う所を確りと詰めないのが悪いんじゃろ!!」
巨人とラルファ達はかなり距離が離れている。
なのでもし近距離技とかなら近付かなければならないのだが、その辺はどうなっているんだ?と首を傾げる。
近付いて一撃入れるなら、事前にそれは伝えるよな・・・?
特に今の所そう言った合図等は無く、時間を稼ぐのは良いがその後はどうするんだと今になって不安になって来た。
「まぁ、とりあえず最後にもう少し遊んでやるか」
俺はニヤリと笑って巨人を見ながらそう言うと、アリシエーゼもそれに乗ってくる。
「そうじゃのう、こやつの動きにもそろそろ慣れたしの」
確かにこの巨人の速さや力強さは驚異的だ。
あんな巨大な鉈の様な物の振り下ろしを喰らえば一撃で肉塊となってしまうだろうが、結局は当たらなければ良いだけの話なのだ。
ラルファの準備が整ったのかは良く分からない。
が、もし準備が整ったのならそれらしい合図はあるだろうと思い、まだそれが無いのならもう少し時間稼ぎをしても良いかと、俺は一度軽く鼻を鳴らし言った。
「ハッ、当たらなければどうと言う事は無い」
俺の如何にもな台詞にアリシエーゼはまたしてもシラケた視線を向ける。
そんな痛い視線を浴びながらも俺は強気の姿勢を崩さない。
何か文句あるか?とアリシエーゼに逆に問うが、どうやら俺の台詞が何か聞いた事あるだとか、何かを真似しているだとかそう言う事を言いたい訳では無い様だった。
「先程、お主の超絶必殺技である―――その、キ、キル――ぷぷッ、キルモードとか言うのを使わざるを得ない様な状況だった事を忘れたのか」
そんな追い込まれた状況だったのに、当たらなければ等と偉そうに言って恥ずかしく無いのかと言うのだ、この女は。
「う、五月蝿ぇなッ、お前だって慣れて来たって言ってたじゃねぇか!?」
「そんな事より、妾はもう彼奴の動きには慣れたが、お主はどうなんじゃ?」
「俺だってキルモードなんてもう出さねぇよ!そんなん無くても余裕だわッ」
「そうか。そのキ、キル――ぷッ、キル――ふふッ、キルモードはまだまだ改良の余地が有りそうじゃし、土壇場で試すにはちとリスキーじゃろ」
コイツ・・・
先程からキルモードを小馬鹿にする様な態度のアリシエーゼに俺は怒りが込み上げてくる。
ちょっとネーミングが子供っぽいだけじゃないかッ
次笑いやがったら、簀巻きにして海に沈めてやると決意する俺に向かい、アリシエーゼは実際の背は俺よりも格段に小さいのに何故か胸を張り、見下す様な素振りで俺に言った。
「妾の動きに着いて来れない様なら、置いて行くからの、坊や」
・・・・・・
明らかに俺の台詞に被せて来たアリシエーゼに、最大限のシラケた眼差しを向ける。
まぁ、坊やは坊やなりにやってやるさ
俺はもう直ぐ傍まで来ている巨人を下から睨み上げ、本気で相手してやるよと心の中で嗤った。
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