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第6章:迷宮勇者と巨人王編
第242話:山羊
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俺達は行き止まりとなる通路を引き返し、既に捕捉している人間の一団であろう者達と直ぐに接触した。
テンプレの様にダンジョン内では何でもやりたい放題集団のマンイーター共が現れるイベントが起こるとは思っていないが、何となく此方から姿を表しイニシアチブを取っておきたかった。
まだ距離が少しあるので仲間達と話しながら進むが、途中で俺とアリシエーゼの耳は進行方向、此方に向かって来る集団の方からある意味聞き慣れた音を拾った。
「何か戦闘してませんか?」
俺とアリシエーゼだけその音を拾っているのかと思ったが、モニカもそれを拾っていた。
そう言えばエルフは耳の良い種族だったなと思い出す。
「そうみたいだな」
「どうする、助けるか?」
ダグラスがそう聞いて来るが、この音だけでは戦況がどうなっているのかは判断出来なかった。
特段、悲鳴の様なものが聞こえては来ていないので大丈夫だとは思ったが俺は逡巡する。
「とりあえず戦況が分かる位置まで移動しよう」
俺達は走って戦闘音のする方へと向かった。
そこまで距離がある訳では無いので直ぐに視認出来る位置まで移動して立ち止まり、一先ず戦況を確認する。
帝国兵のパーティだと直ぐに分かった。同じ金属プレートを重要な部位に縫い付けた革鎧を装備し、ある者は両手に槍、ある者は片手に盾ともう片手にロングソードを持って戦っている。
相手取るはオークとゴブリンの混成部隊だが、全て上位種の様だ。
ただ、上位種だからと言って不味い状況では無く、寧ろ帝国兵が押している様に見えた。
槍持ちの三人が一気に突進してゴブリン四匹を押し込み、両サイドからロングソードを持った二人が斬り込む。
剣の一振りで仕留められないのは痛いが、確実にダメージを負わせており、オークは二体居るが、後衛に居るので槍持ち達が上手く立ち回り、進路を塞いでいて前に出さずにいた。
「大丈夫そう―――」
俺が一安心と言おうとしたその瞬間、目の端に黒い何かを捉える。
「後ろじゃッ!!」
突然、アリシエーゼが叫ぶ。その叫びは、帝国兵の後衛の位置で指揮を取る、パーティのリーダーの様な男に向けられた。
帝国兵と俺達は魔物を挟む様な形で位置取っているが、俺達が到着した時には帝国兵側も俺達の存在に気付いてはいた。
なので、アリシエーゼの声は魔物やそれと戦う帝国兵を超え、パーティリーダーにも届く。
ここに来る途中仲間達に話を聞いた限りだと、魔界、その他フィールドでもそうだが他のパーティが戦闘をしている所に出くわした場合、手を出さないのが暗黙の掟との事だった。
もしも救援を請われたのならその限りでは無いが、それが無い限り此方から手を出す事は御法度で、それは素材等が傭兵達にとっては報酬となるので、誰が仕留めた、これは誰の取り分だと後々揉める事を避ける為であり、これを破る傭兵団はその界隈では一切の信頼を無くす。
それくらい傭兵の中では重要視しているルールでもあった。
なので、俺達も今は一切手を出すつもりは無かったのだが、少し気を抜いていたのは否めない。
パーティリーダーの真横に出現したその黒い物体を凝視し、それが何であるかを瞬時に理解した。
暗黒山羊かッ!?
この暗黒山羊はその名の通り、山羊の顔をした魔物なのだが、山羊なのに二足歩行をし、更にその特徴となるのが身体を真黒なマントで覆って所だ。
マントもフードが付いており、そのフードを目深に被るその様は、一見人間の様に見えなくも無いのだが、フードから覗くその顔は山羊そのもので、ユラユラと身体を揺らしながらの動きと相まって、初見ではギョッとしたのを思い出す。
アリシエーゼの叫びに反応したパーティリーダーだが、横に突然出現した暗黒山羊に驚き身体を仰け反らせていた。
クソッ
俺は悪態を付き、駆け出しても間に合わないと、影移動を発動しようとしたが、その時には既にアリシエーゼが俺の横から姿をかき消していた。
暗黒山羊の厄介な所は、今も目の前で起こったその現象なのだが、まるで瞬間移動の様に移動するのだ。
気付いたら近付かれ、手に持つ錆び付いたダガーで一刺し。そんな暗殺者の様な事をしてくる魔物で、俺も話に聞いていなかったら初見はヤバかったと思う。
それに暗黒山羊の話を聞き、接敵した際には目で対象を捉えており、更にはその状態で姿が突然消えたので警戒を最大にしたと言うのもある。
なので突然現れても対応出来たのだが、帝国兵のパーティリーダーは警戒している素振りが見えなかった為、もしかしたら魔物と接敵した際にはこの暗黒山羊の姿は無かったのかも知れない。
単独で動いている奴が勝手に襲って来たか、または最初から姿を消していたか・・・
どちらにせよ、完全に不意を付かれたパーティリーダーだったが、今にも暗黒山羊の凶刃が襲い掛かるその時、影移動で瞬時に暗黒山羊の真後ろに移動したアリシエーゼがそれを阻止する。
「―――ッッ!!」
真後ろからのアリシエーゼの一撃を横っ面に突然叩き込まれた暗黒山羊は意味不明な叫び声を上げて吹き飛ぶ。
「――なッ!?」
「ええから集中せい!!」
突然現れたアリシエーゼにパーティリーダーが何か言おうとするが、アリシエーゼは一喝し戦闘に集中させる。
その後、帝国兵達は危なげなく戦闘を終了させた。
アリシエーゼは戦闘中、パーティリーダーの背後を護る形で終始、周囲を警戒していたが、その後ろ姿を帝国兵達はチラチラと見ていたのだが、どういう心境なのだろうかと考えるが、きっと何だこのクソガキはとかそんな所だろうと俺は考えるのを止めた。
「助かった、有難う」
戦闘終了後、俺達は帝国兵のパーティと合流したのだが、パーティリーダーの男はアリシエーゼを見て真剣な眼差しで感謝を口にした。
「別に妾に感謝せんでも良い。それよりも素材を集めなくて良いのか?」
「あぁ、そうだ、もし良かったらこの魔物達の素材はキミ達が貰ってくれないか?命を助けられたせめてもの礼だ」
リーダーがそう言うと他の帝国兵達も皆頷く。まるで総意だと言わんばかりだが、確かにアリシエーゼが割って入らなければこのリーダーは致命傷を追っていたかも知れない。
それ程完璧な間で完璧な不意打ちだったのだが、あの暗黒山羊の瞬間移動の様なものは姿が消えると気配の様なものも一切消えるのだ。
俺も対峙した時に確認したが、臭いすら消える。
なので姿が消えた後の追跡は困難なのだが、この瞬間移動ほ消えた後、タイムラグの様なものがあり、姿を表すまである程度時間を要する。
姿が消えた直後に別の場所に現れるならその方が逆にタイミング的にはやりやすかったりするのだが、テンポをズラされると言うか非常にやりにくかったのを思い出す。
「そんなもん要らん。気を使わなくて良いぞ」
「いや、しかし、何か礼がしたいのたが」
「じゃからそんなもん要らんと言うとるじゃろ。妾達は先を急ぐでな、こんな問答は無用じゃ」
帝国兵の申し出をアリシエーゼは一切断り、そのまま立ち去ろうとするのだが、帝国兵のリーダーは何とかアリシエーゼを引き留めようとしていた。
何でこんな食い下がるんだ?
少し疑問に思っていると、他の帝国兵から有り得ない言葉が発せられるのを俺の耳は捉えた。
「可憐だ・・・」
「どこかの貴族のご息女だろうか・・・」
・・・・・・
マジかよ・・・
颯爽と現れるピンチを救ったアリシエーゼに帝国兵達は見惚れてしまったのか、ただの食いしん坊のクソガキでしかないアリシエーゼに対して帝国兵達は色めき立っていたのだ。
「せめてお名前をお聞かせ頂けないだろうか?」
そう言って隊長と呼ばれた男はアリシエーゼの前に跪く。その様はまるで求婚をしている様に見えなくも無いのだが、周りの兵士は一層テンションが上がる。
「おぉッ!?隊長ッ、いきなりですか!?」とか「う、羨ましいッ」だとか、耳を疑う様な言葉が連発していて、アリシエーゼを除く俺達はお互い顔を見合わせる。
って言うか、アリシエーゼは幼女とは言わないが、少女みたいなもんだぞ・・・
完全にシラケた俺の気持ちを知ってか知らずか、アリシエーゼは隊長の言葉に鼻を鳴らす。
「ふんッ、妾の名前を知りたいなぞ、もっと強くなってから言うんじゃな!」
えぇッ
めっちゃ強気じゃないっすか!?
そんな超強気なアリシエーゼに対して帝国兵達は目をハートにしている。
魅了魔法か何かを使っているのでは無いかと疑ったが、このままだと埒が明かないと割って入り、俺達は次の階層を目指すからと切り上げさせた。
「十三層の階層主が異様に強いらしい。気を抜くなよ」
と隊長は助言をしてくれたので、それに感謝しつつ俺達はその場を後にした。
それにしても―――
アリシエーゼみたいなガキに色目を使うなんて・・・
何てイカレてる奴らだと思っていると、前を歩くアリシエーゼが可愛いクシャミをした。
「クシュッ、うーむ・・・・・・なんじゃ?」
クシャミをした後突然後ろを振り向き俺に向かってブスリとした顔を向けるアリシエーゼに心底焦った。
「な、何が?俺は何も言ってねぇだろ」
「・・・そうか」
そう言ってまた前を向いて歩き出すアリシエーゼに俺は底知れぬ恐怖が心の中に湧き上がるのを覚えた。
なんだよ、コイツ・・・
テンプレの様にダンジョン内では何でもやりたい放題集団のマンイーター共が現れるイベントが起こるとは思っていないが、何となく此方から姿を表しイニシアチブを取っておきたかった。
まだ距離が少しあるので仲間達と話しながら進むが、途中で俺とアリシエーゼの耳は進行方向、此方に向かって来る集団の方からある意味聞き慣れた音を拾った。
「何か戦闘してませんか?」
俺とアリシエーゼだけその音を拾っているのかと思ったが、モニカもそれを拾っていた。
そう言えばエルフは耳の良い種族だったなと思い出す。
「そうみたいだな」
「どうする、助けるか?」
ダグラスがそう聞いて来るが、この音だけでは戦況がどうなっているのかは判断出来なかった。
特段、悲鳴の様なものが聞こえては来ていないので大丈夫だとは思ったが俺は逡巡する。
「とりあえず戦況が分かる位置まで移動しよう」
俺達は走って戦闘音のする方へと向かった。
そこまで距離がある訳では無いので直ぐに視認出来る位置まで移動して立ち止まり、一先ず戦況を確認する。
帝国兵のパーティだと直ぐに分かった。同じ金属プレートを重要な部位に縫い付けた革鎧を装備し、ある者は両手に槍、ある者は片手に盾ともう片手にロングソードを持って戦っている。
相手取るはオークとゴブリンの混成部隊だが、全て上位種の様だ。
ただ、上位種だからと言って不味い状況では無く、寧ろ帝国兵が押している様に見えた。
槍持ちの三人が一気に突進してゴブリン四匹を押し込み、両サイドからロングソードを持った二人が斬り込む。
剣の一振りで仕留められないのは痛いが、確実にダメージを負わせており、オークは二体居るが、後衛に居るので槍持ち達が上手く立ち回り、進路を塞いでいて前に出さずにいた。
「大丈夫そう―――」
俺が一安心と言おうとしたその瞬間、目の端に黒い何かを捉える。
「後ろじゃッ!!」
突然、アリシエーゼが叫ぶ。その叫びは、帝国兵の後衛の位置で指揮を取る、パーティのリーダーの様な男に向けられた。
帝国兵と俺達は魔物を挟む様な形で位置取っているが、俺達が到着した時には帝国兵側も俺達の存在に気付いてはいた。
なので、アリシエーゼの声は魔物やそれと戦う帝国兵を超え、パーティリーダーにも届く。
ここに来る途中仲間達に話を聞いた限りだと、魔界、その他フィールドでもそうだが他のパーティが戦闘をしている所に出くわした場合、手を出さないのが暗黙の掟との事だった。
もしも救援を請われたのならその限りでは無いが、それが無い限り此方から手を出す事は御法度で、それは素材等が傭兵達にとっては報酬となるので、誰が仕留めた、これは誰の取り分だと後々揉める事を避ける為であり、これを破る傭兵団はその界隈では一切の信頼を無くす。
それくらい傭兵の中では重要視しているルールでもあった。
なので、俺達も今は一切手を出すつもりは無かったのだが、少し気を抜いていたのは否めない。
パーティリーダーの真横に出現したその黒い物体を凝視し、それが何であるかを瞬時に理解した。
暗黒山羊かッ!?
この暗黒山羊はその名の通り、山羊の顔をした魔物なのだが、山羊なのに二足歩行をし、更にその特徴となるのが身体を真黒なマントで覆って所だ。
マントもフードが付いており、そのフードを目深に被るその様は、一見人間の様に見えなくも無いのだが、フードから覗くその顔は山羊そのもので、ユラユラと身体を揺らしながらの動きと相まって、初見ではギョッとしたのを思い出す。
アリシエーゼの叫びに反応したパーティリーダーだが、横に突然出現した暗黒山羊に驚き身体を仰け反らせていた。
クソッ
俺は悪態を付き、駆け出しても間に合わないと、影移動を発動しようとしたが、その時には既にアリシエーゼが俺の横から姿をかき消していた。
暗黒山羊の厄介な所は、今も目の前で起こったその現象なのだが、まるで瞬間移動の様に移動するのだ。
気付いたら近付かれ、手に持つ錆び付いたダガーで一刺し。そんな暗殺者の様な事をしてくる魔物で、俺も話に聞いていなかったら初見はヤバかったと思う。
それに暗黒山羊の話を聞き、接敵した際には目で対象を捉えており、更にはその状態で姿が突然消えたので警戒を最大にしたと言うのもある。
なので突然現れても対応出来たのだが、帝国兵のパーティリーダーは警戒している素振りが見えなかった為、もしかしたら魔物と接敵した際にはこの暗黒山羊の姿は無かったのかも知れない。
単独で動いている奴が勝手に襲って来たか、または最初から姿を消していたか・・・
どちらにせよ、完全に不意を付かれたパーティリーダーだったが、今にも暗黒山羊の凶刃が襲い掛かるその時、影移動で瞬時に暗黒山羊の真後ろに移動したアリシエーゼがそれを阻止する。
「―――ッッ!!」
真後ろからのアリシエーゼの一撃を横っ面に突然叩き込まれた暗黒山羊は意味不明な叫び声を上げて吹き飛ぶ。
「――なッ!?」
「ええから集中せい!!」
突然現れたアリシエーゼにパーティリーダーが何か言おうとするが、アリシエーゼは一喝し戦闘に集中させる。
その後、帝国兵達は危なげなく戦闘を終了させた。
アリシエーゼは戦闘中、パーティリーダーの背後を護る形で終始、周囲を警戒していたが、その後ろ姿を帝国兵達はチラチラと見ていたのだが、どういう心境なのだろうかと考えるが、きっと何だこのクソガキはとかそんな所だろうと俺は考えるのを止めた。
「助かった、有難う」
戦闘終了後、俺達は帝国兵のパーティと合流したのだが、パーティリーダーの男はアリシエーゼを見て真剣な眼差しで感謝を口にした。
「別に妾に感謝せんでも良い。それよりも素材を集めなくて良いのか?」
「あぁ、そうだ、もし良かったらこの魔物達の素材はキミ達が貰ってくれないか?命を助けられたせめてもの礼だ」
リーダーがそう言うと他の帝国兵達も皆頷く。まるで総意だと言わんばかりだが、確かにアリシエーゼが割って入らなければこのリーダーは致命傷を追っていたかも知れない。
それ程完璧な間で完璧な不意打ちだったのだが、あの暗黒山羊の瞬間移動の様なものは姿が消えると気配の様なものも一切消えるのだ。
俺も対峙した時に確認したが、臭いすら消える。
なので姿が消えた後の追跡は困難なのだが、この瞬間移動ほ消えた後、タイムラグの様なものがあり、姿を表すまである程度時間を要する。
姿が消えた直後に別の場所に現れるならその方が逆にタイミング的にはやりやすかったりするのだが、テンポをズラされると言うか非常にやりにくかったのを思い出す。
「そんなもん要らん。気を使わなくて良いぞ」
「いや、しかし、何か礼がしたいのたが」
「じゃからそんなもん要らんと言うとるじゃろ。妾達は先を急ぐでな、こんな問答は無用じゃ」
帝国兵の申し出をアリシエーゼは一切断り、そのまま立ち去ろうとするのだが、帝国兵のリーダーは何とかアリシエーゼを引き留めようとしていた。
何でこんな食い下がるんだ?
少し疑問に思っていると、他の帝国兵から有り得ない言葉が発せられるのを俺の耳は捉えた。
「可憐だ・・・」
「どこかの貴族のご息女だろうか・・・」
・・・・・・
マジかよ・・・
颯爽と現れるピンチを救ったアリシエーゼに帝国兵達は見惚れてしまったのか、ただの食いしん坊のクソガキでしかないアリシエーゼに対して帝国兵達は色めき立っていたのだ。
「せめてお名前をお聞かせ頂けないだろうか?」
そう言って隊長と呼ばれた男はアリシエーゼの前に跪く。その様はまるで求婚をしている様に見えなくも無いのだが、周りの兵士は一層テンションが上がる。
「おぉッ!?隊長ッ、いきなりですか!?」とか「う、羨ましいッ」だとか、耳を疑う様な言葉が連発していて、アリシエーゼを除く俺達はお互い顔を見合わせる。
って言うか、アリシエーゼは幼女とは言わないが、少女みたいなもんだぞ・・・
完全にシラケた俺の気持ちを知ってか知らずか、アリシエーゼは隊長の言葉に鼻を鳴らす。
「ふんッ、妾の名前を知りたいなぞ、もっと強くなってから言うんじゃな!」
えぇッ
めっちゃ強気じゃないっすか!?
そんな超強気なアリシエーゼに対して帝国兵達は目をハートにしている。
魅了魔法か何かを使っているのでは無いかと疑ったが、このままだと埒が明かないと割って入り、俺達は次の階層を目指すからと切り上げさせた。
「十三層の階層主が異様に強いらしい。気を抜くなよ」
と隊長は助言をしてくれたので、それに感謝しつつ俺達はその場を後にした。
それにしても―――
アリシエーゼみたいなガキに色目を使うなんて・・・
何てイカレてる奴らだと思っていると、前を歩くアリシエーゼが可愛いクシャミをした。
「クシュッ、うーむ・・・・・・なんじゃ?」
クシャミをした後突然後ろを振り向き俺に向かってブスリとした顔を向けるアリシエーゼに心底焦った。
「な、何が?俺は何も言ってねぇだろ」
「・・・そうか」
そう言ってまた前を向いて歩き出すアリシエーゼに俺は底知れぬ恐怖が心の中に湧き上がるのを覚えた。
なんだよ、コイツ・・・
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