231 / 335
第6章:迷宮勇者と巨人王編
第231話:進捗報告1
しおりを挟む
「明日は階層毎の魔物の調査を行っていこう」
夕飯を屋敷で皆と済ませてそのままの流れで明日についての話をしていたのだが、二層も特に魔物の強さと言う事では違いが感じられ無かった為に俺はそう切り出した。
「調査って具体的に何をやるのよ?」
「んー、何層くらいから出現する魔物の種族が変わるだとか、同じ魔物でも強さがこの層から変わるだとか、そういう事かな」
買った地図には、迷宮の通路と各所の罠の位置と種類が事細かに載っているのだが、出現する魔物やボスがどう言ったものだったか、その他注意事項などは特に載っていない。
その他の情報は別売りなのかと探してはみたものの、その辺りの情報は特に纏められて売買はされていなかった。
ただ、帝国が公式に発表している情報にはその類のものが含まれると言う事だったが、紙ベースで纏められてはいないし、まだ最新の到達層である十三層は疎か十層より手前の層までしか情報は無いと言う。
多分その辺りの情報は傭兵団毎に独自で運用しているのかもな
そう思って情報を俺の力を使い入手しようと思ったが、俺も含め仲間達には肌で感じて貰った方がいいだろうと止めた。
「なので、明日は多分帰って来ないので食事は作らなくていいです」
奥の方で待機していたイエニエスさんにそう告げると、無言で頭を下げて了承の意を示した。
「じゃあ、食材は一応買い足しておくか」
ドエインがそんな事を言うが、今は結構遅い時間の為店も空いているか、まだ商品が残っているか分からない為、今回は屋敷にあるものを適当にって行こうと言う事になった。
この屋敷で出される食事に使う食材やその他諸々必要となるものは基本的にイエニエスさん達に任せている。
必要な時に使ってくれと、小さい革袋いっぱいに入った金貨を渡したら、目を丸くして驚かれた。
完全に丸投げだが、イエニエスさんはそれを信頼されている証拠と受け取ったのか、お任せ下さいと張り切っていた。
なので、食材も常にストックはある状態なのだ、今の俺達の屋敷には。
っと言うか、ドエインはもう既にコックと言う役割を受け入れたか・・・
何も言わずとも魔界での食事は自分が作ると思っているらしく、自分から率先してその辺りの事を詰めるドエインに生暖かい視線を送りつつ、その他の情報も共有し議論していく。
結局、勇者くん達は当面放っておくとし、次もしバッタリと出会ったら、積極的にコミュニケーションを取っていく方針とした。
だって、勇者くんの持ってる伝説の剣の事とか色々話聞きたいし
そう、アリシエーゼ曰くとてもこの世の物とは思えない類の剣を何故か勇者くんが待っているらしいので、その入手経路だとかそう言った事を俺的には知りたかった。
イリアは「破廉恥な野郎と話すなんてッ」と顔を赤くしながら反論していたが、最初に出会った時の状況を詳細に伝え過ぎたかとちょっぴり後悔した。
後は篤には直接話して、何か欲しい素材あるかも聞くかな
この何日間か篤とは顔を合わせていない。
飯時も常に工房に同志達と篭もりっきりなのだが、イエニエスさん曰く、生きてはいると言う事だったのであまり気にはしていない。
「じゃあ、明日も朝一から潜るから寝坊すんなよ」
そう言って解散した。
片付けは基本的にイエニエスさん達が全てやってくるのだが、毎回自分の使った皿位は自分で片付けようと思い皿を手に取ると、イエニエスさんに強めに叱られてしまうを繰り返している。
なので今日は後ろ髪を引かれつつ立ち上がりそのまま食堂を後にするのだが・・・
何か悪いと思っちまうなぁ
そんな事を心の中で思いながら、篤の工房へと向かった。
「篤、入るぞー」
工房の出入口の扉をノックしながら篤に声を掛けるが、特に返事は返って来ない。
窓からは灯りが漏れているので居るとは思うが、返事が無いのでまた何かに熱中しているのかと俺は扉を開けて中に入った。
扉を開けると目の前に火の落ちた炉が目に付く。
炉の前でまた何かやってるのかと思ったけど・・・
思っていた所に居ない篤達を探す様に工房の他の場所を見ると、奥に大きな作業台があり、そこで篤を含め篤の同志二人も合わせて同じ様な格好で、作業台に突っ伏しているのが分かった。
「お前ら、何やって―――」
文句でも言ってやろうと作業台に近付くと、三人から微かな寝息が聞こえて来た。
「―――まぁ、いいか」
気持ち良さそうに作業台に突っ伏す三人を見て、俺はそう呟いてそのまま起こさずに外に出た。
「あら、丁度中に行こうと思ってたのだけれど」
俺が工房から出た直後に横から声が掛かる。
見るとサリーが此方に向かって来ており、俺は白地に溜息をつく。
「はぁ・・・何か用か?」
「何よ、連れないわね。私もアツシくんの作品には興味があるのよ」
「そうかい。んで、何か用か?」
俺はもう一度サリーへと問う。
そんな俺の態度に表情を変えず、寧ろ面白そうにサリーはクスクスと笑いながら俺を誘惑する様な目付きで見詰め、更に近付いて来た。
「さっき大司教に進捗を報告したわ」
「へぇ、どうやって連絡したんだ―――って言っても教えてくれないか」
「えぇ、それは秘密よ。でも、どうしてもってキミが言うなら、お姉さん教えてあげちゃうかも。他の事も交えながら」
身体をクネらせながらそう言うサリーを白けた目で見詰めながら、俺は「用がそれだけならどっか行け」と邪険に扱うのだが、サリーは本当に面白そうに俺に顔を近付けた。
「もう少し興味を持ったら?私がある事無い事報告しても良いの?」
「いいよ、別に。ガバリス大司教はそれくらい見抜ける真贋は持ってるだろ」
「何よ、あの人の事は高く買ってるのね?」
そう言ってサリーは少し頬を膨らませる。
これは演技・・・これは演技だ・・・
その様子を見て俺は念仏の様に心の中でそう唱えるが、このサリーと言う人物、少しでも心を許しそうになると、まるで蛇の様にその隙間にスルりと入り込んで来るのだ。
「そんなんじゃねぇよ。それで何を報告したって?」
「ふふ、今の所順調と言っておいたわ。何時完了するかは今の所未定とも言っておいた」
「へぇ、そうか」
「あと、オルフェの現状と帝国の本当の目的については分からないとも報告しておいたわよ」
「そしたら何て?」
「帝国の動きについては大司教の方でももう少し探りを入れてみるって」
「おいおい、大丈夫かよ」
ガバリス大司教があまり大きな動きをすると帝国が何か感ずくの可能性もあるし、大司教の命にも関わるかも知れないのだ、もしかしたら。
「その辺りは大司教もちゃんと心得ているわ、心配しないで」
「心配なんてするかよッ」
俺は照れ隠しでそう言って、「もう報告無いなら行くぞ」とその場を後にして屋敷へ戻った。
サリーへまたクスクスと笑いながら、「今晩、お酒付き合って」と誘って来たが勿論、丁重にお断りした。
サリーは信じられるとあの、何でも識っていそうな男は言っていた。
が、俺はまだそうは到底思えなかった。
とりあえず、直ぐに色仕掛けするの止めてくれないかなぁ・・・
夕飯を屋敷で皆と済ませてそのままの流れで明日についての話をしていたのだが、二層も特に魔物の強さと言う事では違いが感じられ無かった為に俺はそう切り出した。
「調査って具体的に何をやるのよ?」
「んー、何層くらいから出現する魔物の種族が変わるだとか、同じ魔物でも強さがこの層から変わるだとか、そういう事かな」
買った地図には、迷宮の通路と各所の罠の位置と種類が事細かに載っているのだが、出現する魔物やボスがどう言ったものだったか、その他注意事項などは特に載っていない。
その他の情報は別売りなのかと探してはみたものの、その辺りの情報は特に纏められて売買はされていなかった。
ただ、帝国が公式に発表している情報にはその類のものが含まれると言う事だったが、紙ベースで纏められてはいないし、まだ最新の到達層である十三層は疎か十層より手前の層までしか情報は無いと言う。
多分その辺りの情報は傭兵団毎に独自で運用しているのかもな
そう思って情報を俺の力を使い入手しようと思ったが、俺も含め仲間達には肌で感じて貰った方がいいだろうと止めた。
「なので、明日は多分帰って来ないので食事は作らなくていいです」
奥の方で待機していたイエニエスさんにそう告げると、無言で頭を下げて了承の意を示した。
「じゃあ、食材は一応買い足しておくか」
ドエインがそんな事を言うが、今は結構遅い時間の為店も空いているか、まだ商品が残っているか分からない為、今回は屋敷にあるものを適当にって行こうと言う事になった。
この屋敷で出される食事に使う食材やその他諸々必要となるものは基本的にイエニエスさん達に任せている。
必要な時に使ってくれと、小さい革袋いっぱいに入った金貨を渡したら、目を丸くして驚かれた。
完全に丸投げだが、イエニエスさんはそれを信頼されている証拠と受け取ったのか、お任せ下さいと張り切っていた。
なので、食材も常にストックはある状態なのだ、今の俺達の屋敷には。
っと言うか、ドエインはもう既にコックと言う役割を受け入れたか・・・
何も言わずとも魔界での食事は自分が作ると思っているらしく、自分から率先してその辺りの事を詰めるドエインに生暖かい視線を送りつつ、その他の情報も共有し議論していく。
結局、勇者くん達は当面放っておくとし、次もしバッタリと出会ったら、積極的にコミュニケーションを取っていく方針とした。
だって、勇者くんの持ってる伝説の剣の事とか色々話聞きたいし
そう、アリシエーゼ曰くとてもこの世の物とは思えない類の剣を何故か勇者くんが待っているらしいので、その入手経路だとかそう言った事を俺的には知りたかった。
イリアは「破廉恥な野郎と話すなんてッ」と顔を赤くしながら反論していたが、最初に出会った時の状況を詳細に伝え過ぎたかとちょっぴり後悔した。
後は篤には直接話して、何か欲しい素材あるかも聞くかな
この何日間か篤とは顔を合わせていない。
飯時も常に工房に同志達と篭もりっきりなのだが、イエニエスさん曰く、生きてはいると言う事だったのであまり気にはしていない。
「じゃあ、明日も朝一から潜るから寝坊すんなよ」
そう言って解散した。
片付けは基本的にイエニエスさん達が全てやってくるのだが、毎回自分の使った皿位は自分で片付けようと思い皿を手に取ると、イエニエスさんに強めに叱られてしまうを繰り返している。
なので今日は後ろ髪を引かれつつ立ち上がりそのまま食堂を後にするのだが・・・
何か悪いと思っちまうなぁ
そんな事を心の中で思いながら、篤の工房へと向かった。
「篤、入るぞー」
工房の出入口の扉をノックしながら篤に声を掛けるが、特に返事は返って来ない。
窓からは灯りが漏れているので居るとは思うが、返事が無いのでまた何かに熱中しているのかと俺は扉を開けて中に入った。
扉を開けると目の前に火の落ちた炉が目に付く。
炉の前でまた何かやってるのかと思ったけど・・・
思っていた所に居ない篤達を探す様に工房の他の場所を見ると、奥に大きな作業台があり、そこで篤を含め篤の同志二人も合わせて同じ様な格好で、作業台に突っ伏しているのが分かった。
「お前ら、何やって―――」
文句でも言ってやろうと作業台に近付くと、三人から微かな寝息が聞こえて来た。
「―――まぁ、いいか」
気持ち良さそうに作業台に突っ伏す三人を見て、俺はそう呟いてそのまま起こさずに外に出た。
「あら、丁度中に行こうと思ってたのだけれど」
俺が工房から出た直後に横から声が掛かる。
見るとサリーが此方に向かって来ており、俺は白地に溜息をつく。
「はぁ・・・何か用か?」
「何よ、連れないわね。私もアツシくんの作品には興味があるのよ」
「そうかい。んで、何か用か?」
俺はもう一度サリーへと問う。
そんな俺の態度に表情を変えず、寧ろ面白そうにサリーはクスクスと笑いながら俺を誘惑する様な目付きで見詰め、更に近付いて来た。
「さっき大司教に進捗を報告したわ」
「へぇ、どうやって連絡したんだ―――って言っても教えてくれないか」
「えぇ、それは秘密よ。でも、どうしてもってキミが言うなら、お姉さん教えてあげちゃうかも。他の事も交えながら」
身体をクネらせながらそう言うサリーを白けた目で見詰めながら、俺は「用がそれだけならどっか行け」と邪険に扱うのだが、サリーは本当に面白そうに俺に顔を近付けた。
「もう少し興味を持ったら?私がある事無い事報告しても良いの?」
「いいよ、別に。ガバリス大司教はそれくらい見抜ける真贋は持ってるだろ」
「何よ、あの人の事は高く買ってるのね?」
そう言ってサリーは少し頬を膨らませる。
これは演技・・・これは演技だ・・・
その様子を見て俺は念仏の様に心の中でそう唱えるが、このサリーと言う人物、少しでも心を許しそうになると、まるで蛇の様にその隙間にスルりと入り込んで来るのだ。
「そんなんじゃねぇよ。それで何を報告したって?」
「ふふ、今の所順調と言っておいたわ。何時完了するかは今の所未定とも言っておいた」
「へぇ、そうか」
「あと、オルフェの現状と帝国の本当の目的については分からないとも報告しておいたわよ」
「そしたら何て?」
「帝国の動きについては大司教の方でももう少し探りを入れてみるって」
「おいおい、大丈夫かよ」
ガバリス大司教があまり大きな動きをすると帝国が何か感ずくの可能性もあるし、大司教の命にも関わるかも知れないのだ、もしかしたら。
「その辺りは大司教もちゃんと心得ているわ、心配しないで」
「心配なんてするかよッ」
俺は照れ隠しでそう言って、「もう報告無いなら行くぞ」とその場を後にして屋敷へ戻った。
サリーへまたクスクスと笑いながら、「今晩、お酒付き合って」と誘って来たが勿論、丁重にお断りした。
サリーは信じられるとあの、何でも識っていそうな男は言っていた。
が、俺はまだそうは到底思えなかった。
とりあえず、直ぐに色仕掛けするの止めてくれないかなぁ・・・
0
お気に入りに追加
50
あなたにおすすめの小説

転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

ペット(老猫)と異世界転生
童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。

俺の召喚獣だけレベルアップする
摂政
ファンタジー
【第10章、始動!!】ダンジョンが現れた、現代社会のお話
主人公の冴島渉は、友人の誘いに乗って、冒険者登録を行った
しかし、彼が神から与えられたのは、一生レベルアップしない召喚獣を用いて戦う【召喚士】という力だった
それでも、渉は召喚獣を使って、見事、ダンジョンのボスを撃破する
そして、彼が得たのは----召喚獣をレベルアップさせる能力だった
この世界で唯一、召喚獣をレベルアップさせられる渉
神から与えられた制約で、人間とパーティーを組めない彼は、誰にも知られることがないまま、どんどん強くなっていく……
※召喚獣や魔物などについて、『おーぷん2ちゃんねる:にゅー速VIP』にて『おーぷん民でまじめにファンタジー世界を作ろう』で作られた世界観……というか、モンスターを一部使用して書きました!!
内容を纏めたwikiもありますので、お暇な時に一読していただければ更に楽しめるかもしれません?
https://www65.atwiki.jp/opfan/pages/1.html

偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて
奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】
※ヒロインがアンハッピーエンドです。
痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。
爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。
執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。
だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。
ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。
広場を埋め尽くす、人。
ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。
この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。
そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。
わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。
国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。
今日は、二人の婚姻の日だったはず。
婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。
王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。
『ごめんなさい』
歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。
無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる