異端の紅赤マギ

みどりのたぬき

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第5章:帝国と教会使者編

第216話:余暇

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 ホルスを出発して四日目。俺達は順調に旅を続けていた。
 篤が作成指揮を行った移動要塞型馬車ゴリアテでの旅は今迄の通常の馬車や馬を使った旅から考えれば格段に便利に、そして快適となったと言っていいだろう。
 尻があまり痛くならないベンチを始め、サスペンションの様な物やスタビライザー的な何かを組み込んだ車体はかなりの揺れを低減してくれているし、そもそも馬車内には必要な物はトイレと風呂以外は全て揃ってると言っても良かった。
 野営だろうが何だろうが、調理器具一式に食事場所となるテーブルも直ぐに展開出来るし、器具自体も収納に全て格納されているし、食材や水と言った消耗品も全て格納している。

 まぁ、料理を作れるのが目下ドエインしか居ないんだけどな・・・

 そう、俺達はドエイン以外誰も料理を作れなかった。もしかしたら、何かを焼く、炒める位は出来るかも知れないが、それだけだ。
 それでは料理とは言えないし、きっと誰もそんな物を望んでもいない。
 贅沢な話だが、折角調理器具や食材が有り料理が出来る環境があるのなら誰しもちゃんとした料理が食べたいと思うのは当然と言えば当然だが・・・

 何はともあれ、例え何日も連続して野営となっても特に問題は無かった。
 ただ、そうなると風呂に入れずお湯で身体を拭くなどしか出来ないのが玉に瑕だが、それさえどうにかすれば間違いなく快適と言えるのだろう。
 そして、このゴリアテを使った旅で一番のメリットは―――

「まさかここまで速く移動出来るとは思わなかったなぁ」

「そうですね、馬の休憩が要らないと言うのはかなり大きいですね」

 俺は今、デス1―――では無い、マサムネと共に御者台に座っている。
 ゴリアテの旅となり先ず決めた事は、御者の当番と料理当番だった。
 料理の方は結局、ドエインが全て担当する事になり、代わりにドエインは御者は免除する事となった。
 後は、ユーリーは全てを免除されている。勿論、可愛いからだ。
 そんな訳で俺も当然御者の当番に組み込まれているのだが、馬の操作等は他人からその経験などを抜き取っているので問題は無い。
 ただ、篤に関しては馬の操作などは出来ないので、当番となっても座っているだけだが・・・

「そうなんだよなぁ、イリアの継続回復魔法で馬も疲れ知らずで走り続ける事が出来るのもデカい」

「ですね」

 手網を握っているマサムネとそんな会話を行っているが、現在は四日目の夜だ。
 ゴリアテは一階と二階にあるベンチを展開すると二弾ベッドになる。
 なので、御者さえ起きて馬を操れば、他は寝ながら移動が出来る。
 更に、イリアの継続回復魔法であるリジェ―――げふんげふんッ―――基、心体活性継復魔リジェネーションと言う、継続的に体力や傷を癒す神聖魔法を馬に掛ける事により、黒王は疲れ知らずでどんどんとその走行距離を伸ばすのだ。
 ただし、これは休憩があまり必要と成らないと言うだけで、睡眠や食事の時間は必要となるのでその場合は当然、立ち止まりその時間を取る。
 イリア曰く―――

「私くらいの使い手になれば、一度掛けたら一日は効果が持続するわ!」

 ―――との事だったので、必要最低限の休息にして、黒王達には頑張って貰っている。
 ゴリアテのベッドもかなり揺れ等は低減されている為、急発進、急停止、大きな段差等が無い限りは皆、特に不満も無く眠り続ける事が出来た。

「途中で立ち寄った村は二箇所で食材の補給と、宿屋の風呂に入っただけかぁ」

「アレはラッキーでしたね。まさかあの小さな村の宿に風呂があるとは思いませんでした」

「そうだな、街道には魔物もそれ程出ないし、何だか拍子抜けしてるけど」

「魔物が出ても殆ど素通りですしね」

 帝国の街道には魔物は出る事には出る。サリー曰く、帝国も兵士が大きな街道等は巡回しているらしく定期的に魔物の間引きが行われているとのことだったが、それでも出る時は出る。
 ただ、ゴブリンだのコボルトだのの低位の魔物は此方に気付き近寄って来るが、俺達は無視して走り去っていた。
 大体は追い付けずその内諦めるのだが、中には追い付いて来る奴らや、急に横から現れて強襲してくる手合いも居るので、そう言った場合は対応を行っている。

 盗賊とかバンバン現れてくれれば張り合いがあるってもんだけどなぁ

 等と若干フラグを立ててみるが、あまり期待せずにいようとマサムネと会話を行いながら心の中で思う。

 目的地となる帝国の西魔界は、帝国領の西側に位置し、ホルスからでは通常の馬車移動だと一ヶ月弱掛かる道程だ。
 だが、かなり順調に一日の走行距離もなかなかのものの為、このままいけば二週間も掛からず到着するだろうとサリーは言っていた。

 それから結局何も起きずに朝となり、一度、朝飯を伴った休憩を行う。
 ドエインの作る料理はなかなか美味い。ソニ程では無いにしてもドエインの料理の腕は料理が出来ると言う評価に値するものだった。
 ソニがプロの料理人だとすると、ドエインはさしずめ家庭料理が得意なお母さん的なポジションだ。

「お母さん、おかわり」

「誰がお母さんだッ!!」

 俺がシチューの皿をドエインに差し出すと、文句を言いながらもおかわりをくれる。
 何だかそんなやり取りもポカポカするなぁ等と思いながらも朝食を終えて、次の御者担当にバトンタッチを行い、俺とマサムネは仮眠を取る事にした。

「順調じゃのう」

「そうだな」

 ゴリアテの二階で仮眠の準備をしていると、一緒に二階に上がって来たアリシエーゼがそんな事を言い始めるので、同じ思いなのかと思いながら返事を返す。

「何かこう、盗賊みたいな輩が襲って来たりせんかのう」

「・・・・・・」

 あれ、俺とアリシエーゼって同レベルの思考回路なんだっけか・・・

 若干―――そう、若干ではあるがちょっとその・・・恥ずかしくなってきた。

「のう、そう思わんか?」

「あ、あぁ、そうだな・・・今後に期待しよう」

「??」

 俺の若干ぎこち無い返答にアリシエーゼは怪訝そうな表情をするが、それを無視して俺は仮眠を取る事にした。
 俺が寝る間ずっと、アリシエーゼはつまらないだの、身体を動かしたいだのと小言を言っていたが、俺はそれを子守唄に眠りについた。

 今日は何かイベントが起こります様に・・・
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