異端の紅赤マギ

みどりのたぬき

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第5章:帝国と教会使者編

第199話:思惑

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「結局、そのガバリスと言う者は何が目的なんじゃ?」

「全く分からない。ただ、色々と知ってそうだよ、俺達の事も悪魔の事も」

 今、俺とアリシエーゼはホルスの帝国側の街を二人で歩いているのだが、フェイクスを打ち倒し魔界から帰って来た俺はデス1ワンから、帝国側からアクセスがあるかもと知らされた。
 使者を送ると言われたが、俺達を招待するホストはエル教の帝国側のトップであるガバリス大司教であり、ハイスタード帝国と大陸一の信者数を誇る巨大宗教団体の大幹部。それだけでもう面倒臭い事になる事は火を見るより明らかなのだが・・・

「それにしたって良くこの招きを受け入れたものよの」

「・・・まぁ、面倒臭い事になるのは分かってるんだが、気になる事がかなりあるのは確かだし、仮に俺が突っぱねたとしても、それでも何か大きな流れと言うか、そう言うのは無くならないと思うんだよ」

 別に我関せずでも問題は無いと思う。が、それで俺の知らない所で何かが進むのは何だか嫌だし、最終的に結局巻き込まれる可能性もあるので、ならとりあえず状況だけでも把握して備えておきたいと言う思いもあった。

「成程のう・・・」

 そんな話をしながら俺達は帝国側の街を歩いて行くが、今は二人っきりだ。
 魔界から帰って来て三日後に俺達がホルス滞在に利用している宿、大癒館にガバリス大司教の使者がやって来た。
 その際に、翌日、つまり今日だがガバリス大司教が食事を兼ねて話をしたいから、お仲間も是非どうぞと言ってきた訳である。
 が、エル教の元聖女であるイリアを連れて行く事は当然出来ないし、ダグラスも同様であるし、他の者達も連れて行ってもややこしい事になり兼ねない為、俺とアリシエーゼの二人だけで行く事にしたのだ。

「彼奴らは大丈夫なのか・・・?」

「そこなんだよなぁ・・・」

 彼奴らとは当然残して来た仲間達の事なのだが、残して来る事でのデメリットと言うか、懸念はある。
 俺とアリシエーゼが不在な為、何かあった時、つまりは戦闘行為だがそう言った事が起こってしまった場合の戦力的な面が一番気になっていた。
 そもそも、エバンシオ王国、モライアス公国側に居るデス隊に普通にアクセスして来たと聞いた時点で、そいつらは只者では無い。
 教会自体はエバンシオ、モライアスと帝国との戦争には中立の立場で双方どちらかに肩入れする事はしていないのたが、帝国側の教会関係者となるとこのホルスではどちら側だからと公には言われてはいないが反対側のエバンシオ、モライアス側で活動する事は勿論、行き来するのもかなり大変な事の様なのだ。
 そんな状態なので、公式にデス隊にアクセスして来る事がなかなか難しい状況であるのならばそのアクセスは非公式であり、秘密裏に動いていた事に他ならない。
 つまりは帝国側からバレない様にこちら側に侵入して来たと言う事であるし、何よりも俺の秘密忍者部隊であるデス隊に直接アクセス出来る時点でヤバいとしか言い様が無い。

「デス隊は元々、帝国側の間者集団を俺が取り込んだ訳だけど、彼奴ら見てたら分かると思うけど、相当レベルは高いんだよ」

「それは分かるぞ。帝国の暗部は相当練度は高いし、それを育成している帝国は底が知れない訳じゃな」

「あぁ、あんな連中をどれだけ育ててこちら側に送り込んでるかは知らないが、よく王国と公国は持ち堪えてると思うよ」

 そんなレベルが相当あるデス隊に秘密裏に接触出来ると言う事はその接触して来た奴も帝国の間者なのだろうと想像出来るし、そんな奴らがどれくらい潜んでいるのか分からない状態で俺達が離れるのは些かどころか、大いに不安でしかない。

「まぁ、大丈夫じゃろ。あの忍者集団も今日は残っておるのじゃろ?」

 忍者とか言うなし・・・

「・・・あぁ、完全にあっちでサポートに回ってもらってる」

「では、今日はお主と妾で気兼ね無くでーとが出来るのうッ」

「・・・・・・」

 キャッキャッとはしゃぐアリシエーゼを見て俺は小さく溜息を付くが、流石に俺も心配し過ぎかもとは思っている。
 ガバリス大司教は色々とこちらの事情もフェイクスや悪魔の事も知っていそうではある。
 つまりは俺達の戦力的は事もある程度は把握していると思われる。
 それでいてこんな人外二人と敵対関係になる様な事をするだろうか。

 俺達よりも強大な戦力を有してれば或いは・・・

 そこまで考えて俺は頭を振った。流石にそれは考え辛い。
 別に自分の力を過信している訳では無いと思っているが、こと人間と言う枠組みで考えたら俺やアリシエーゼに勝る奴は早々居るものでも無いだろうと思うし、何とかなるだろうとも思う。

「まぁ、約束の時間まではまだあるし、少しこっち側を見て回るか」

「うむッ!」

 俺の言葉にアリシエーゼは心底嬉しそうな表情で笑い、小走りで俺の前を進んで行った。
 それを見て俺も気付かない内に口元を緩めていたが、鼻を一つ鳴らして表情を戻した。

 さて、どうなりますかね
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