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第4章:偽りの聖女編
第195話:機転
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「これで協力してくれなかったらもう絶対信じないんだからッ!!」
イリアは右手に持った者を握り潰しながらそう叫んだ。
するとイリアの握った拳の隙間から眩い光が漏れ出し、直ぐにその光は目を開けていられない程の光量とらなった。
マナストーンかッ!!
明莉が身に付けていたマナストーンがフェイクスに背後から討たれた時に石だけが何処かへ飛んでいってしまっていたが、それをイリアが拾ったのだと分かる。
確かアレって魔力を溜め込んでおけるって言ってたよな!?
イリアはそのマナストーンの内包魔力を使用する事を考えついたのだろう。
その魔力を解放し、魔力発動のキーにしようとしているのだと分かるが、果たして間に合うかと思った。
『お前達はここで消し炭になるが良いッッ!!』
フェイクスの叫びはそのまま起爆トリガーとなり、ボコりと一度身体が膨らむとそこから急激に膨張して行き、そして限界を直ぐに迎える。
クソッ!
俺は近くに居たユーリーとその金魚の糞であるモニカを自分に引き寄せて抱え込む。
「・・・・・・」
「――ゥン、キャッ!」
モニカは何か勘違いした様な声を上げるがユーリーは俺に黙って身を任せている。
だが、俺が庇おうがあまり意味が無いかもしれない。
でも咄嗟に取った行動であったので許して欲しいと思いつつイリアをチラリと覗き見る。
フェイクスの自爆行動とほぼ同時にイリアが明莉のマナストーンを使用魔力の代替として何かを行おうとしていた。
「魔退聖堅護城門!!」
地が揺れ身体が震え、凄まじい爆発音が耳を劈く。まるで目の前で爆弾を投下されたかの様にも思えるが、それと同時にイリアの声が微かに聞こえた。
詠唱破棄での絶対防御魔法!?
これまで二度その魔法の発動を見て来たが、イリアはそのどちらも永い魔法詠唱を行っていて、日に二度が限界と言っていた神聖魔法、最強の防御魔法をこの土壇場でマナストーンに溜め込んだ魔力を使いかつ、詠唱を破棄して発動した事に驚愕しつつ、俺達を包み込む光とフェイクスの自爆による光が交わり目を焼かれそうになりモニカとユーリーを力の限り抱きながら目を瞑った。
特に暑いだの寒いだの感じる事も無く、ただ眩しくて目が開けていられないだけだったが、その耐える時間は暫く続いた。
どれくらいの時間耐えただろうか。決して短くは無い時間だった様に思えるが、その間俺はこの魔界と呼ばれる場所で死んで行った者達を思う。
俺の家族とも呼べる仲間達は勿論、ファイの中隊に所属していた者達も、それ以外の傭兵や騎士達も全員の顔も名前も全て覚えている訳では無いが、俺はその死んで行った者達の無念を決して忘れる事は無いだろう。
だが、今更ながらに皆無念の中で死んで行ったのか疑問にも思っていた。
何も分からず自分が死んだ事すら知る事無く死んで行った者も居るだろうし、誰かを護り、その護っていた者に希望を託して死んで行った者も居るだろう。
勿論、痛みや恐怖、そう言った負の感情が身体も心も満たして死んで行った者達も居るだろうし、死にたく無いと心から思いながらも魔物に身体を喰われ、丸太で貫かれて、未練や無念の想いをこの世に残して行った者も多数いる筈だ。
別にその全ての想いを背負うつもりも、代表の様に振る舞うつもりも毛頭無かったが、こんなにも理不尽な死が有っただろうか、こんなにも無意味な死が有って良いのだろうかと思ってしまったのだ。
それはきっと俺の想いであっただけであり、きっと誰の声も代弁していない。
今ならそんな事も少しだが思えた。きっとフェイクスとイリアが発した光や音、それら全てが想いすら消し去ったのかも知れないなと思った所で、眩しさが無くなっている事に気付いて、そっと目を開けた。
「・・・・・・これって」
目を開けるとそこには既視感のある光景が浮かんでいた。
荒涼とした焼け野原の様になったフロアに、炭化した魔物の死体がそこら中に散乱しており、以前見た何かに暗闇で追い掛けられる夢の様だと思った。
「・・・・・・タスカッタ」
直ぐにモニカとユーリーから身体を離して解放すると、ユーリーがそう呟く。
そうだなと言ってユーリーの頭に手を置くが、仲間達は全員無事なのかを確認する。
よかった・・・
皆、爆発やそれに伴う爆音、光が漸く治まったのでそれぞれ恐る恐ると周囲を確認していた。
「モニカも無事だな?」
「―――ん、はぃ」
モニカに確認を取るが、何故かモゾモゾと身体をくねらせているので俺は何か怪我でもしたのかと心配になったが―――
「べ、別に何でもありませんよッ、何どさくさに紛れて抱き着いてるんですかッ!スケベ!」
「・・・・・・」
本気で何言ってるんだ此奴と思ってしまったが、それはきっと正常な思考だっただろう。
意味不明なモニカを無視して俺はイリアの元に歩いて行く。
「・・・イリア、助かった」
「・・・成功して良かったわ」
本当に心から安堵しているイリアだが、あの絶対防御魔法は詠唱破棄で扱う事は今までは勿論出来なかった様だし、そう言う類の魔法では無いのだと言った。
だが、土壇場で神の力を借りればと思いあんな事を言ったと言っていたが、そう言えば何か叫んでいたなと思い出す。
「何にせよ、お前の機転が無ければあの自爆を防ぐ手立てが無かった俺達は全滅してたんだ。ありがとう」
「・・・べ、別に私はやれる事をやっただけよ」
少し恥ずかしげにイリアはしていたが、本当に感謝をしている。次いでに豚聖女とか言ってごめんよと心の中で謝っておいた。
「それより・・・ごめんなさい」
「何が??」
「あの子の、その形見にもなるマナストーンを勝手に使っちゃって・・・」
あぁ、そんな事か
「あれで皆が助かったんだぜ、きっと明莉に言ったら当然って顔して何も言わずにくれたと思うぞ」
「・・・そうかな」
きっとそうだ
確かに俺と明莉の思い出の様な物だったが、それと人名を秤にかけるなど明莉は絶対にしない。
「まぁ、気にすんな」
俺は務めて明るい口調でイリアを気遣うが、イリア本人はまだ納得していなさそうだった。
「でも私のあの魔法は生者にしか効果が無いし、遺体も・・・」
そう言ってイリアは近くにある炭化した人だった物を見る。
あの夢の様に祈る様な形はしていないが、倒れているその状態で炭化したのだろう、少しだけ地面が盛り上がっているそれが明莉だったのだろうと直ぐに分かったし、納得した。
「・・・・・・」
俺はその炭化してもう明莉かどうかも分からない物に無言で近付く。
傍まで寄ると俺は片膝を付きその炭化したものにそっと触れた。
「・・・・・・約束守れなくてごめんな」
必ず護るって約束したのに
まだ燻っているその炭化してしまった明莉を触れたまま、ただ後悔の念を抱いていたがこれでは駄目だと思い、イリアを見て言った。
「なぁ、それで良いのかは分からないけど・・・明莉が安らかに天国へと行ける様に祈ってくれないか」
「・・・・・・えぇ、勿論よ」
聖女がそう言ったものを執り行うのかは分からない。エル教の作法に則ってそれを行うのが転移者として正しいのかも分からないが、俺が祈ってもきっと安らかには眠れないだろうなと思った。
イリアは俺の隣に来て両膝を付く。そして両手を組みそれを胸の前まで持って来て静かに目を閉じる。
特に何か念仏の様なものを唱えるでも無くただ静かに祈っており、俺もそれに従いただ目を閉じて願う。
仇を取ってやるだの取っただの、悪魔を根絶やしにするだのそう言った感情ほ一切抱かず、ただただ祈る。
死後、穏やかであれと。
ありがとう、と。
気付けば、生き残った全ての仲間達が近くに来ており、それぞれ目を閉じ祈っていた。
誰一人言葉を口にする事は無く祈り、荒涼としてしまったこのフロアに何処からとも無く一陣の風が吹く。
その風は魔物も仲間達も分け隔て無く、全ての炭化してしまった者達のその炭を少し攫い舞い上げた。
決して花弁が舞う様な綺麗なものでほ無いのだけれど、俺にはとても穏やかなものの様に感じられてならなかった。
イリアは右手に持った者を握り潰しながらそう叫んだ。
するとイリアの握った拳の隙間から眩い光が漏れ出し、直ぐにその光は目を開けていられない程の光量とらなった。
マナストーンかッ!!
明莉が身に付けていたマナストーンがフェイクスに背後から討たれた時に石だけが何処かへ飛んでいってしまっていたが、それをイリアが拾ったのだと分かる。
確かアレって魔力を溜め込んでおけるって言ってたよな!?
イリアはそのマナストーンの内包魔力を使用する事を考えついたのだろう。
その魔力を解放し、魔力発動のキーにしようとしているのだと分かるが、果たして間に合うかと思った。
『お前達はここで消し炭になるが良いッッ!!』
フェイクスの叫びはそのまま起爆トリガーとなり、ボコりと一度身体が膨らむとそこから急激に膨張して行き、そして限界を直ぐに迎える。
クソッ!
俺は近くに居たユーリーとその金魚の糞であるモニカを自分に引き寄せて抱え込む。
「・・・・・・」
「――ゥン、キャッ!」
モニカは何か勘違いした様な声を上げるがユーリーは俺に黙って身を任せている。
だが、俺が庇おうがあまり意味が無いかもしれない。
でも咄嗟に取った行動であったので許して欲しいと思いつつイリアをチラリと覗き見る。
フェイクスの自爆行動とほぼ同時にイリアが明莉のマナストーンを使用魔力の代替として何かを行おうとしていた。
「魔退聖堅護城門!!」
地が揺れ身体が震え、凄まじい爆発音が耳を劈く。まるで目の前で爆弾を投下されたかの様にも思えるが、それと同時にイリアの声が微かに聞こえた。
詠唱破棄での絶対防御魔法!?
これまで二度その魔法の発動を見て来たが、イリアはそのどちらも永い魔法詠唱を行っていて、日に二度が限界と言っていた神聖魔法、最強の防御魔法をこの土壇場でマナストーンに溜め込んだ魔力を使いかつ、詠唱を破棄して発動した事に驚愕しつつ、俺達を包み込む光とフェイクスの自爆による光が交わり目を焼かれそうになりモニカとユーリーを力の限り抱きながら目を瞑った。
特に暑いだの寒いだの感じる事も無く、ただ眩しくて目が開けていられないだけだったが、その耐える時間は暫く続いた。
どれくらいの時間耐えただろうか。決して短くは無い時間だった様に思えるが、その間俺はこの魔界と呼ばれる場所で死んで行った者達を思う。
俺の家族とも呼べる仲間達は勿論、ファイの中隊に所属していた者達も、それ以外の傭兵や騎士達も全員の顔も名前も全て覚えている訳では無いが、俺はその死んで行った者達の無念を決して忘れる事は無いだろう。
だが、今更ながらに皆無念の中で死んで行ったのか疑問にも思っていた。
何も分からず自分が死んだ事すら知る事無く死んで行った者も居るだろうし、誰かを護り、その護っていた者に希望を託して死んで行った者も居るだろう。
勿論、痛みや恐怖、そう言った負の感情が身体も心も満たして死んで行った者達も居るだろうし、死にたく無いと心から思いながらも魔物に身体を喰われ、丸太で貫かれて、未練や無念の想いをこの世に残して行った者も多数いる筈だ。
別にその全ての想いを背負うつもりも、代表の様に振る舞うつもりも毛頭無かったが、こんなにも理不尽な死が有っただろうか、こんなにも無意味な死が有って良いのだろうかと思ってしまったのだ。
それはきっと俺の想いであっただけであり、きっと誰の声も代弁していない。
今ならそんな事も少しだが思えた。きっとフェイクスとイリアが発した光や音、それら全てが想いすら消し去ったのかも知れないなと思った所で、眩しさが無くなっている事に気付いて、そっと目を開けた。
「・・・・・・これって」
目を開けるとそこには既視感のある光景が浮かんでいた。
荒涼とした焼け野原の様になったフロアに、炭化した魔物の死体がそこら中に散乱しており、以前見た何かに暗闇で追い掛けられる夢の様だと思った。
「・・・・・・タスカッタ」
直ぐにモニカとユーリーから身体を離して解放すると、ユーリーがそう呟く。
そうだなと言ってユーリーの頭に手を置くが、仲間達は全員無事なのかを確認する。
よかった・・・
皆、爆発やそれに伴う爆音、光が漸く治まったのでそれぞれ恐る恐ると周囲を確認していた。
「モニカも無事だな?」
「―――ん、はぃ」
モニカに確認を取るが、何故かモゾモゾと身体をくねらせているので俺は何か怪我でもしたのかと心配になったが―――
「べ、別に何でもありませんよッ、何どさくさに紛れて抱き着いてるんですかッ!スケベ!」
「・・・・・・」
本気で何言ってるんだ此奴と思ってしまったが、それはきっと正常な思考だっただろう。
意味不明なモニカを無視して俺はイリアの元に歩いて行く。
「・・・イリア、助かった」
「・・・成功して良かったわ」
本当に心から安堵しているイリアだが、あの絶対防御魔法は詠唱破棄で扱う事は今までは勿論出来なかった様だし、そう言う類の魔法では無いのだと言った。
だが、土壇場で神の力を借りればと思いあんな事を言ったと言っていたが、そう言えば何か叫んでいたなと思い出す。
「何にせよ、お前の機転が無ければあの自爆を防ぐ手立てが無かった俺達は全滅してたんだ。ありがとう」
「・・・べ、別に私はやれる事をやっただけよ」
少し恥ずかしげにイリアはしていたが、本当に感謝をしている。次いでに豚聖女とか言ってごめんよと心の中で謝っておいた。
「それより・・・ごめんなさい」
「何が??」
「あの子の、その形見にもなるマナストーンを勝手に使っちゃって・・・」
あぁ、そんな事か
「あれで皆が助かったんだぜ、きっと明莉に言ったら当然って顔して何も言わずにくれたと思うぞ」
「・・・そうかな」
きっとそうだ
確かに俺と明莉の思い出の様な物だったが、それと人名を秤にかけるなど明莉は絶対にしない。
「まぁ、気にすんな」
俺は務めて明るい口調でイリアを気遣うが、イリア本人はまだ納得していなさそうだった。
「でも私のあの魔法は生者にしか効果が無いし、遺体も・・・」
そう言ってイリアは近くにある炭化した人だった物を見る。
あの夢の様に祈る様な形はしていないが、倒れているその状態で炭化したのだろう、少しだけ地面が盛り上がっているそれが明莉だったのだろうと直ぐに分かったし、納得した。
「・・・・・・」
俺はその炭化してもう明莉かどうかも分からない物に無言で近付く。
傍まで寄ると俺は片膝を付きその炭化したものにそっと触れた。
「・・・・・・約束守れなくてごめんな」
必ず護るって約束したのに
まだ燻っているその炭化してしまった明莉を触れたまま、ただ後悔の念を抱いていたがこれでは駄目だと思い、イリアを見て言った。
「なぁ、それで良いのかは分からないけど・・・明莉が安らかに天国へと行ける様に祈ってくれないか」
「・・・・・・えぇ、勿論よ」
聖女がそう言ったものを執り行うのかは分からない。エル教の作法に則ってそれを行うのが転移者として正しいのかも分からないが、俺が祈ってもきっと安らかには眠れないだろうなと思った。
イリアは俺の隣に来て両膝を付く。そして両手を組みそれを胸の前まで持って来て静かに目を閉じる。
特に何か念仏の様なものを唱えるでも無くただ静かに祈っており、俺もそれに従いただ目を閉じて願う。
仇を取ってやるだの取っただの、悪魔を根絶やしにするだのそう言った感情ほ一切抱かず、ただただ祈る。
死後、穏やかであれと。
ありがとう、と。
気付けば、生き残った全ての仲間達が近くに来ており、それぞれ目を閉じ祈っていた。
誰一人言葉を口にする事は無く祈り、荒涼としてしまったこのフロアに何処からとも無く一陣の風が吹く。
その風は魔物も仲間達も分け隔て無く、全ての炭化してしまった者達のその炭を少し攫い舞い上げた。
決して花弁が舞う様な綺麗なものでほ無いのだけれど、俺にはとても穏やかなものの様に感じられてならなかった。
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