異端の紅赤マギ

みどりのたぬき

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第4章:偽りの聖女編

第192話:復讐

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 仲間達の方をもう一度見て、明莉の状態も確認する。
 相変わらず地面に仰向けで倒れている明莉はピクリとも動かない。
 辺りは、巨大な鳥頭フェイクスが暴れたせいであれだけ居た魔物の群れも大分数を減らしていた。
 それでも、数人しかいない俺達にとってはかなりの数となるのだが、今更襲って来る者は皆無だった。

「で、まだ何かあんのか?あるならさっさと出せよ」

 この後に及んでまだ俺達をどうにかする手段などがあるのかと若干腰が引けているフェイクスへと問う。

『お、お前は何なのだ!?私は悪魔だぞッ、それも爵位を与えられ、領地も賜り、他の悪魔共を束ねる悪魔なのだぞッッ』

 そんなの知らねぇし、どうでもいい

「悪魔を束ねる?その割に純粋な悪魔なんてそれ程居ねぇじゃねぇか。目玉が言っていたが、お前のその地獄の領地とやらも辺鄙な所にある様だし、田舎領主風情が偉そうに語ってんじゃねぇよ」

 俺はフェイクスの言葉に鼻を鳴らしながら見下し言う。

『悪魔をこの世に顕現させる為には受肉せずにはいられんッ、例えアークデーモンの様な下級の悪魔であろうとその肉体を用意するにはそれ相応の時間がかかるのだッ!!』

「あっそ、興味ねぇよ。地上に態々お前が出張って来なきゃいけねぇって事は、お前マジで大した事ねぇだろ?普通、こんな現場作業、下にやらせるしな」

 別に煽っている訳では無い。ただ、思った事を口にしているだけだが、話していて気付く。

 俺は何話してんだ?
 さっさと殺そう

 まだ何かゴチャゴチャと言うフェイクスを無視して俺はゆっくりと近付いて行く。

『ま、待てッ、お前、私の受肉した肉体を取り込んだ様だが、つまり今のお前は悪魔―――』

 フェイクスの目の前まで近付くと、慌ててそんな事を言い出すが、俺はそれを聞いて我慢成らずにブチ切れた。

「テメェらと一緒にするんじゃねぇぇえええッッ」

『ゴッ!ブァッ!!??』

 フェイクスの顔面に右拳を叩き込み吹き飛ばす。地面を転がりフェイクスは無様に倒れるが、直ぐに起き上がろうとするので、そのまま追い討ちを掛けようと近付く。

「マジで反吐が出るんだよッ、テメェらみてぇな糞臭ぇ奴らと一緒にするんじゃ―――」

『ィジャァッ!!』

 俺の話途中にフェイクスが突如反撃に出るが、そんなものは予想していたし、例え予想していなくとも余裕を持って回避出来る様なお粗末な奇襲であった。

 屈み込みの姿勢から俺が近付くのを見計らっての右腕の振り上げを俺は半身を引く事により回避して、振り上げによる身体の持ち上がりによりガラ空きとなった右脇腹に半身になり引いた左脚を持ち上げて間髪入れずにミドルキックを叩き込む。

「―――まだッ」

『ぅ、グァッ!!』

 ミドルキックを喰らい一歩、二歩と多々良を踏みフラ付くフェイクスに向かって軽く跳躍して追撃を行った。

「話終わってねぇだろッッ!!!」

『ッッ!!??』

 跳躍してフェイクスの脳天へと右肘を叩き込み、言葉を出せずに藻掻くこの糞を俺は背後に回り込んで前蹴りで前方に吹き飛ばした。
 やろうと思えば一撃で今のフェイクスを殺す事は出来たが、俺は敢えて力を抑えていた。
 今の最後の前蹴りは少し威力を上げた為、フェイクスは激しく前に吹き飛び転がる。

 丁度、俺と仲間達の中間辺りに転がったフェイクスに向かい再び歩きながら、俺は仲間達へと声を掛けた。

「おーい、とりあえず此奴徹底的にボコろうぜー」

 俺のこの状況では明らかに異質な軽いノリに仲間達はお互いの顔を見合わせる。
 今の今まで、イリアに対して殺気立っていたドエインでさえもポカーンとした表情を浮かべているが、俺は構わず続けた。

「誰もやらないなら俺が徹底的に死にたいと懇願するまで―――いや、懇願しても殺し続けちまうけどいいのかー?」

 別に復讐は何も生まない、虚しいだけとか言うつもりなど更々無い。
 俺なら徹底的にやる。例え終えた後に虚しくなろうがどうなろうが知ったこっちゃ無いし、この感情を少しでも吐き出さなければ、俺はもう人として生きて行く事は出来ない。

 俺がフェイクスの元まで近付く頃には、アリシエーゼとドエインが凄まじいまでの形相でフェイクスを睨みながら此方に向かって歩いて来ていた。
 その表情は転移前に腐る程見て来た、人殺しのそれだったが、俺は別にそれを何とも思わない。
 こんな軽いノリだが、俺もきっと同じ眼をしていて、ただフェイクスを殺す事しか考えておらず、徹底的に苦しめて、後悔させ、恐怖させる事しか考えて無いのだから。

「旦那、すまねぇ。護れなかった・・・俺のせいだ」

「・・・謝るなよ、お前のせいじゃない。全部、俺のせいなんだ」

 ドエインがフェイクスを挟んで俺の前に立ちそんな事を言うが、本当にドエインのせいでは無い。
 全て俺が悪い。責任は俺にあり、絶対にその罪をドエインには背負わせてはいけないと思っている。

「・・・いや、俺が―――」

「どっちにしろ此奴には後悔させるだろ」

 地に倒れるフェイクスを挟み、俺とドエインはその汚物の様なものを狂気のみが宿る眼で見下ろしながらやり取りを行う。

「一撃で殺すには惜しい。何日じゃろうと永遠に痛みと苦しみを与え続けてやろうぞ」

 そこにアリシエーゼが加わり言うが、勿論、俺達と同じ眼でフェイクスを見下しながらだ。

『ぁ、グッ・・・お、お前達ッ、このまま只で―――』

「糞虫が喋ってんじゃねぇぇッッ!!!」

 蹲りながらこちらを見上げフェイクスが強がりを口にするが、その直後、突然ドエインがキレる。
 持っていた少し細身のロングソードを目にも止まらぬ速さでその口に突き入れた。

 ―――バキンッッ

 と障壁が展開されてドエインの剣が弾かれ砕かれる。
 自分の攻撃が障壁をものともせず突き破れていたのですっかり忘れていたが、こいつ位になると強力な障壁を無意識に常時展開しているんだったか。

『グヒェッ』

「この野郎ッッ」

 障壁がある限り、自分を傷付ける事が出来ないとそんなもの今の今まで俺の前ではあまり役に立たない事を忘れているのか、フェイクスが下卑な嗤い声を上げる。
 顕現が半分程折れてしまったドエインはそれに対して更に憤慨して、その壊れた剣をもう一度振りかぶる。

「待て」

 俺はその瞬間、フェイクスの障壁展開を無効化する。こいつら悪魔は脳が存在せず、脳内で直接魔力を生成しておらず、障壁も周囲のマナと呼ばれる魔力の源の様な物を使用して展開している様だ。
 今迄ならその脳内での魔力精製をカットしたりしていたのだが、今は別に脳をイメージして能力を展開してはいない。
 ただ単純にその障壁展開を行っているフェイクスにそれを止めさせた。

「いいぞ、殴ってみろ」

 ドエインは俺の言葉に素直に従い、フェイクスの髪の毛を左手で掴み、右拳を顔面に叩き込んだ。

『無駄―――ダッビェ!?』

 今度は障壁が展開されずドエインの拳がフェイクスの顔面にめり込む。

『な、な―――グゲッ!?』

 二度、三度とドエインの拳は面白い様にフェイクスの顔面を捉えるが、そこでやっと俺の能力に考え至ったのだろう。
 四度目のドエインの攻撃は俺を自身の中から一瞬切り離して障壁を再展開した事により弾かれた。

『お前ぇッ!また私にッ―――』

「元気なこった。俺は何度でもやるぜ。お前の心が折れてもう抵抗する事さえ出来なくなるまで何度でもッ」

 そう言ってもう一度、フェイクスの真実を、現実を塗り替える。
 それと同時にフェイクスの顔面に今度は俺が拳をめり込ませる。

『ぁ、ヒュッ―――』

 バチリと抵抗があるが、瞬時にまた書き換える。

「何度もッッ」

 バチリッ

「何度でもッッ」

『ギィ、ぁ・・・』

 一旦、殴るのを止めて俺は体勢を整えドエインに告げる。

「好きなだけやっていいぞ。攻撃のタイミングで俺が何度でも障壁を解除してやる。此奴は、侵入自体はお粗末な防壁しかねぇから俺を防ぐ事出来ないしな」

「あぁ、助かる。でも、大丈夫か?」

 ドエインは俺の顔色を窺いながらそんな事を言うが、俺は辛そうにしていただろうか?
 フェイクスから抵抗がある度、弾かれる度に有り得ない程の頭痛が俺を襲うが、この痛みは俺への罰だ。家族を、明莉を殺してしまった罪に対する罰だ。
 だから甘んじて受け入れるし、こんなものでは俺の罪は赦されない。

「大丈夫だ、一切気にせずやれ」

「・・・あぁ、分かった」

 それからドエインはフェイクスを殴り続けた。
 殴って殴って殴って、蹴って蹴って蹴って、顔だけで無く、身体中ありとあらゆる場所を殴打しドエインの方が肩で息をする様になる。
 別にフェイクスはこの攻撃が効いていない訳では無い。
 身体中に傷が増え、口数は極端に少なくなるが、俺への抵抗は続けていた。

「次は妾じゃ」

 ドエインと変わりアリシエーゼが前に出る。
 此奴の場合、俺のサポートほ必要無い気がするが、一応続ける事にした。

 アリシエーゼは。極度の損傷は避けつつ、フェイクスを殴打していく。

 ドエインは明莉を神格化する様に崇めていた気がする。いくら自分の命を救って貰ったからと言ってもやり過ぎな感はあったのだが、そこに男女の恋愛感情が無かったのかと問われると分からなかった。
 だからか、ドエインは激情に身を任せて自分の身体が限界を迎えるまで只管殴って蹴ってを繰り返していたのだが、アリシエーゼはなんと言うか一挙手一投足に凡百思いを乗せて、丁寧な感じがした。
 ナッズ、アルアレ、パトリック、ソニ。
 俺達等より余程付き合いが永く、本当に家族だったのだろう。
 当初はアリシエーゼの魔法で記憶の改竄をしたりしたのだろうが、そんなものが無かったとしてもきっとこいつらは真の家族であったに違いない。
 アリシエーゼと明莉の関係は良く分からなかったが、明莉が倒れそこに駆け寄るアリシエーゼの、明莉の生を諦めた瞬間のその顔を俺は見た。
 あの顔は絶対に忘れない。
 その想いも全てを乗せつつ、淡々と作業の様に殴り続けるアリシエーゼだが、その動きがピタリと止む。

 何かと思い見てみると、フェイクスが仰向けに倒れながら、両腕をクロスさせブルブルと震えていた。

『ぁ、ぁッ、グッ―――』

 時間にしてどれくらい殴り続けただろうか。ドエインも入れると結構な時間の様にも感じるが、もしかしたらまだそれ程経っていないのかも知れない。
 が、倒れるフェイクスは大分やられている様にだったが、そんなフェイクスの状態を見たアリシエーゼが身体をプルプルと震わせているのに気付いた。

「おい、どうし―――」

「その腕かぁぁッッ、そこ腕で明莉をッッ、その腕が明莉をぉぉおおッッ!!!」

 突然、発狂してアリシエーゼはフェイクスの右腕を掴み、片足を胸部に乗せて力任せに腕を引っ張る。

『ぃッ、ギィッ』

「あああああああああああぁぁぁあッッッ!!!」

 ブチブチブチブチと、程無くしてフェイクスの右腕が引き千切られる。
 突然の事で俺は唖然としてしまい止める事は出来なかったが、それは近くに居たドエインも同じ事だった。

「よくもッ!よくもッ!!よくもッッ!!!」

 そう言ってアリシエーゼは千切った腕を両手で持ち、それを力任せにまた引っ張る。
 更に二分割された腕の一つをフェイクスの口の中に無理矢理詰め込もうとするが、さすがにれは無理があると俺はアリシエーゼを止めようとした。

「な、何やってんだッ!?んなもん口の中に入る訳ッ―――グァッッ!!??」

「煩いッッッ!!!」

 倒れるフェイクスの口に中腰の姿勢で腕を詰め込むと言う暴挙に出ているアリシエーゼの背後から俺は声をかけ肩に手を置くと、突然身体中に衝撃を受けて、それで後ろに吹き飛んでしまった。

「旦那ッ!?」

 が、そこまで身体が損傷する様なものでも無かったので直ぐに立ち上がり、それがアリシエーゼの裏拳だった事を知る。

「死ねっ!死ねッッ!!死んじゃえよッッ!!」

 泣き叫んでいる様なその慟哭を聞き、俺はハッと気付く。

 須藤恵梨香が出て来てね・・・?

 まるでアリシエーゼでは無く、別人の様にフェイクスの口に千切った腕の一部を詰め込むのを見て俺はそう思った。
 だが、何故やどうして等と思っても分からないので、一先ず止めるしかないと再びアリシエーゼに近付く。
 既に半ば無理矢理詰め込んだ腕の一部をアリシエーゼは拳を叩き込んで更に詰め込もうとしている。
 そもそも何でこんな行動に出たのか分からないと思いつつその後何とかドエインと協力してアリシエーゼを押さえ込んで落ち着くのを待った。

 俺が思っている以上にアリシエーゼは明莉に何かを感じていたのだろうか

 落ち着き俯くアリシエーゼを見て俺はそんな事を思うが、一旦それは置いておく事にした。
 フェイクスに近付き、俺は髪の毛を引っ張りあげてその身体を他の仲間達の元へと引き摺っていった。

「どうする、本当にやらないでらいいのか」

 俺の言葉にファイやイリアは俯いた。
 モニカは、心底嫌そうな顔をして呟く。

「こんな奴の顔もう見たく無いです。早く殺っちゃって下さいよ」

 俺もこんな糞みたいな物体はもう見たくは無いのだが、まだだ

 まだ足りない
 ゴミの様に轢き殺された傭兵達は
 生きたまま魔物に喰われて死んで行った奴らは
 身体に穴を開けられ、苦しそうに死んで行った家族は
 身体を串刺しにされて見世物にされて死して尚、尊厳を踏み躙られ、存在を陵辱された奴らは

 彼奴らの無念はこんなものじゃ晴れないッッ

 言っただろうッ
 もう止めてくれ、殺してくれと懇願されようが、殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺し殺して殺してッッッ

 死んでも殺してやるッッ
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